自分の「ウリ」を見つけた女は強い
「MISUMIさんって、ジャニスみたいですね。」
若い頃から、そう言われるたびに、首をひねってきました。
ブルーズロックを歌って、言われるならまだしも、
アレサ・フランクリンやチャカ・カーン、
グラディス・ナイトなどなどの、
R&Bやブラコンを歌っているのに、
「ジャニスだぁ〜」と言われる。
これは長いこと、自分にとっての七不思議でしかありませんでした。
ロックの女王みたいだって言ってもらってるんだから、
素直に喜べばいいのでしょうが、
自分ではマネしているつもりもないし、
声が似ているとも思ったこともありません。
少なからず抵抗を感じていた時期もあります。
もちろん、ジャニスの完コピだって、したことはあります。
しかし、チャカやティナやダイアナのコピーに夢中になったほど、
ハマったわけではありません。
ジャニスの曲は、私の完コピした300曲のほんの一部でしかありませんでした。
それでも、伝説のロックの女王のハロー効果は絶大です。
「この人、ジャニスみたいな歌、歌うねん。」と紹介されれば、
私の歌なんか1ミリも聞いたことがない人も「おー」となる。
ジャニスのナンバーを歌えば、
歌い出しただけで、いきなり会場が沸く。
若い頃は「ジャニス好きでしょ?」とか、
「やっぱ、ジャニスですか?」なんて言われるたんびに、
「あ、いえいえ、
私のアイドルはツェッペリンとティナ・ターナーで・・・」
「こどもの頃からブルースを聴いていたんで・・・」
などと、言い訳(?)したり、抵抗したりしたものですが、
あんまり何を歌っても、
どこへ行っても言われるもので、
(実際、海外放浪時代もどれだけ言われたかわかりません。)
いつの頃からか、
「めんどくさいから、これ、使っていこう。」と、
思っちゃうようになりました。
「MISUMIサンって、どんな歌歌うんですか?」
「ロックです。ジャニスみたいって言われます。」
「へぇー。すごいんですねー。」
これで会話は終わりです。
「ジャニス」という名前の持つ、
強烈でわかりやすい印象のおかげで、ずいぶん助けられました。
林真理子さんが昔ご著書の中で、
「自分の『ウリ』を見つけた女は強い」
というようなことを書いていました。
わかりやすいセールスポイント。
アピール・ポイント。
自分のアイコンとなるもの。
それらがくっきりすればするほど、
自分のブランドが立ってくる。
人に興味を持ってもらったり、
思い出してもらったりしやすくなる。
ビジネスマンなら必ず考える、こんなことも、
真っ正面から音楽をやっていると、
なかなか思い至れないものです。
仕事の現場でも、
「どの辺のジャンルを歌っているんですか?」と聞かれ、
少しでも仕事につなげたくて、
「なんでも歌います。
R&Bやロック、ソウル、ジャズっぽいものも。。。」などと、
言っていた頃よりも、
「ロックです。」と自分の特徴を言い切るようになってからの方が、
幅広く、たくさんのご縁をいただけるようになりました。
もちろん、ことばだけではダメです。
「ウリ」をアピールしたいなら、
そのクオリティを高めることが一番です。
自分の「ウリ」を勘違いして、
デフォルメし過ぎれば、痛々しく映ります。
自分がやりたいこと、できること、そして、求められること。
この3つの交わるところに、「ウリ」は見つかるのではないか。
そう信じて、探し続けるしかないのです。
さて。
私の「ジャニス問題」には後日談があります。
何年か前に、
某有名ロックギターリストYさんとセッションをする機会がありました。
メンバーのリクエストもあり、
久々にジャニスの曲を1曲だけ、メニューに入れました。
メンバーも会場も大盛り上がり。
気持ちよく打ち上げで飲んでいた時のことです。
Yさんが、突然、
「MISUMIちゃん。
ボクは、MISUMIちゃんには、もうジャニスは歌って欲しくないな。」
と言うのです。
「ジャニスが好きなのはわかるけど、
自分のルーツをそんな風に出しちゃうのは違うと思うんだよね。」
・・・。
大先輩の温かいアドバイスをありがたく伺いながら、
つくづく、難しいものだなぁと、思った夜でした。
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