無限の可能性の中から選び取る、 たった一つの音。
レコーディングなどで自分の声と向き合うと、
声というものの表現の無限の可能性に、
いささかひるんでしまうことがあります。
人は自由になるほどに、
目の前の可能性や選択肢が広がるほどに、
そこに付随する責任や孤独に耐えられなくなって、
自由から逃げ出したくなる・・・。
著名な社会学者が言ったとか。
優しく歌うべきか。激しく歌うべきか。
感情を乗せるべきか。感情を抑えるべきか。
冷たい音色にするか。温かく歌うのか。
リズムを強調するのか。
メロディーラインを重視するのか。
音色を大事にするのか。
ことばを大事にするのか。
テクニカルに歌うのか。
シンプルに歌うのか・・・etc.etc…
歌そのものが「こう歌って」と語りかけてくるような時もあります。
歌詞がぐっと胸に迫ってきて、
自然に表現を選び取っていることもあります。
曲ができたときから、自分の中で、
こう歌いたいという明確なイメージがあるときもあるし、
なかなか、つかめないときもあります。
もしくは、つかんでいたと思ったものが、
なんだか違って感じられるときもありますし、
イメージどおりに歌えなくて、
情けない想いをするときもあります。
カバー曲などでは、
オリジナルを歌っている歌手の表現を尊重するのか、
あえて、全然違うアプローチをするのか、
という、葛藤もあります。
お仕事などで、ディレクターさんなどから、
「こう歌って」と指示してもらえるときは違います。
誰かの抱いているイメージをなぞることは、
技術力や、表現力こそ試されますが、
生み出す苦しみのようなものはないものです。
さまざまなアプローチを実験的に繰り返すことのできる、
ライブなどとも違う。
一生残るパフォーマンス。
そして、たくさんの人が耳にすることになるパフォーマンス。
その歌の、自分にとってのベストな表現はなんなのか。
レコーディングのシビアさと残酷さ、
孤独が、そこにはあります。
そして、それこそが、レコーディングの面白さであり、
アーティストとしての真価なのです。
自分の歌に、OKを出すときの崖っぷち感は、
もうたまらんものがある。
自分の声という無限の可能性の中から選び取る、
たった一つの音。
それが、プレイバックを聞いたときに、
ふっと腑に落ちる、
ぴたりとハマる、
なんだか、心がうぉ〜うと叫ぶ、
そんな歌が歌えたときのやった感は格別です。
製品になってからも、
何回も聞いてしまう、
聞く度に、うぉ〜うと感じる。。。
だからこそ、シンガーはやめられないのですね。
日々是精進です。
<MTLからのお知らせ>
◆ 9月2日(土)【第5回ダイジェスト版 MTL ヴォイス &ヴォーカル レッスン12】開催決定!
◆ 9月30日(土)【第4期 MTLヴォイス & ヴォーカル レッスン12】開講決定!
◆10月4日【MTL Online Lesson12】が、ついにスタートします!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』購読はこちらから。
関連記事
-
-
本当に大切なことは現場が教えてくれるんだ。
某映画のバンド演奏のシーンの撮影に立ち合ったことがあります。 役回りは、出演者の …
-
-
誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話②
まだセミアマぐらいだった頃、 映像系音楽プロデューサーの アシスタントをしていま …
-
-
プロフィールって、どうしてます?
先日、作家の中谷彰宏さんのプロフィールを見ていたら、 なぜかご著書のことがどこに …
-
-
「このくらいデカい音出さなくちゃいい音出ないだろ?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016年1月、M …
-
-
「真っ白な灰」に、なりますか?
リングの上で真っ白な灰になった、『あしたのジョー』。 命を賭けられるほどのものに …
-
-
「数値」と向き合う。「ヒト」と向き合う。
◆歌の「うまさ」は数値化できる。 専門的な機械を使えば、いや、近年ではそこそこの …
-
-
「作品」は、鮮度の高いうちに世に出す
食べるものに鮮度があるように、 人がクリエイトするものにも鮮度があります。 どれ …
-
-
「今日はノドの調子が悪くて・・・」
誰にだってのどの調子の悪いときというのはあります。 どんなに気をつけていても、あ …
-
-
「キー決め」の3つのポイント~Singer’s Tips #25~
キーを決める時、 「高いところが出ないから下げる」、 「低いところが歌えないから …
-
-
説明不要。ダメ出し無用。
「う〜ん。イマイチだなぁ。。。他にないの?」 アイディアや歌詞、曲デモなどを提出 …

