慣れたらあかん!
2015/12/20
「習うより慣れろ」ということわざがあります。
意味は、
「人や本から教わるよりも、自分が練習や経験を重ねたほうが、
よく覚えられるということ。 」(故事ことわざ事典より)
確かに、人に一から十まで教えてもらうより、
自分で実際にやってみて、トライ&エラーを繰り返しながら学ぶ方が、
よほど、情報量が多く、確実に自分のものになります。
しかし、今日お話する、「慣れ」は、少し意味合いが違います。
前者は、辞書に寄れば、
「経験を重ねて、そのことがうまくできるようになる。習熟する。」という意味。
「習熟する」のは当然、必要かつ、大切なことですが、
しかし、もうひとつの「慣れる」の意味、
「その状態に長く置かれたり、たびたびそれを経験したりして、違和感がなくなる。
通常のこととして受け入れられるようになる。」は、パフォーマーには禁物です。
パフォーマンスの世界は、非日常。
人の心を揺り動かし、感動や興奮を届ける人が、
パフォーマンスそのものに「慣れて」しまってはいけないのです。
人前に立つ機会が少ない方たちには、
パフォーマンスすることが「日常」になってしまうことは、
想像しがたいかもしれません。
しかし、恐ろしい事に、長年、何度も人前に立っているうちに、
それが当たり前になってしまう。
たとえば、ヒット曲を出した歌手は、
コンサートでも、イベントでも、テレビでも、
どこへ行っても、毎日のように、何度も何度も同じ曲を歌い続けます。
お芝居の世界は、一日2回公演、1ヶ月のロングラン、
などと言うのも、ざらですし、
LIVE中心に生計を立てているライブ・ミュージシャンなどは、
日本全国を巡業しながら、同じようなレパートリーを、演奏し続けます。
同じ内容でなくとも、同じような現場に立ち続けることも、
「慣れ」につながります。
スタジオ・ミュージシャンの仕事もそうですし、
広義では、セミナー講師、講演家、学校の教師、などなども同じでしょう。
もしかしたら、こうして文章を書くことにも共通して言えるかも知れません。
慣れてしまう、日常化してしまうことには、パッションはありません。
情熱も、感動も、新鮮な発見もない。
そこにいてくれる人たちへの感謝も、
自分がその場にいられることへの感謝もない。
ただ、仕事をこなすだけの送り手から、
受け手が受け取れるものは極めて少ないでしょう。
慣れれば、どこか、「こんなもんでいいか」という気持ちが働きます。
集中力もあまり必要としなくなるので、精度が落ちたことにも気づかなくなります。
鮮度が落ちて、パフォーマンスそのもののオーラが消えます。
それでいて、「手を抜いているわけではない」という、
自意識があるため、工夫や、努力もしなくなります。
やがて、人が離れ、自分の評判が少しずつ落ちていく。
その状態に慣れきった自分は、今さら自分を変化させられなくなっている・・・
そんな恐ろしいことさえ、起こりえます。
パフォーマーは、例え同じことをしていても、
いつも鮮度を保つための努力をしなくてはいけない。
自分の中で精度や鮮度が下がったら、
勇気を出して、根底から、自分自身のあり方を見つめ直し、
行動を変えて行かなくてはいけない。
「慣れでやってないか?」
「今日も、人に新鮮な感動を届けられたか?」
「集中力や、精度は下がっていないか?」
日常化していく日々の中で、自分に問い続けたい言葉です。
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