大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

たったひとつの正解を探す~Singer’s Tips #34~

   

キーは、
どんな表現をしたいか、
どんな効果を狙うか、
自分のどんな表情を切り取るかなど、
さまざまな視点から選ぶ、
というお話をしてきました。

自分にキーやスタイルが近い人が
オリジナルを歌っている場合は、
そちらを参考にすればいいわけですが、
難しいのは異性の歌を歌うとき。

女声キーと、男声キーは、
4度から5度違うというのが一般的ですが、
声の低い女性もいれば、
めちゃくちゃハイトーンの男性もいて、
一概に、何度変えればいいとは言えません。

ここでも考えるべきは、
出る、出ないでは、もちろんない。

カバー対象のシンガーが、
どんな思い、どんな狙いで、
そのキーを選んでいるか。
そこなのです。

例えば、ハイトーンの男性ロックシンガーの曲を、
女性がカバーする場合、
そのままのキーで歌えることは多々あります。

しかし、自分が同じキーで歌って、
果たして、ロックという音楽の真骨頂である、
刹那感、ギリギリ感、焦燥感、高揚感が表現できるのか?

突き抜けるような音色や、
弾けるようなスピード感が出せるのか?

例えば、女性のR&Bシンガーの曲を、
そのままオクターブ下で歌ったりする男性もいます。

しかし、それで果たして、
グルーヴィーなサウンドや、
絞り出すような切なさ、
スコーンと抜ける心地よさが表現できるのか?

音楽には、曲には、
自分に求めてくる「正解」がある。

その正解は、
人の数だけあるのだけれど、
自分自身にとって、
ひとつの曲における正解は、たったひとつだけ。

みつかった瞬間「これだ!」とわかる、
たったひとつの正解。

そのたったひとつを探し出すことが、
準備の最終章です。

探しているときは、
あーでもない、こーでもないと、
本当に悩むものですが、
正解にたどり着いた瞬間に、
あぁ、なんで、これに今まで気づかなかったんだろうと思うくらい、
すべてがカチッとはまります。

いつもいつも理想のキーで歌えるとは限らない世界ではありますが、
自分自身のワン&オンリーを知る努力は、
けして自分を裏切ることはありません。

“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 開講!
業界トップクラスのメソッドで、圧倒的な結果を出す。ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。

 - B面Blog, Singer's Tips, The プロフェッショナル, 歌を極める

  関連記事

聞いてるつもり。できてるつもり。がんばってるつもり。

「え?ホントにそんな風に聞こえるの? なんでそんな風に聞こえるかなぁ・・・・」 …

進化し続けられなければ、退化するか、腐敗するかしかない。

「『すべてを伝えます』って言うから、講座を受けたのに、その数年後にアドバンストが …

「違和感」を放置しない。

私たちの脳は毎秒1000万ビット以上の情報を処理できると、 神田昌典さんが書いて …

「ビートを立てる」って難しい。〜Singer’s Tips #11〜

「もっとビート立てて、リズムよく歌って。」 などというディレクションを受けること …

ギターソロが邪魔くさいぃ〜!?

「最近の子はギターソロになると、曲を飛ばすんですよ」 え?なんですか、それ? と …

外しちゃいけないフレーズがあるから「ポップ」なんだ。

10年ほど前のこと。 英語教材のレコーディングで、 外国人のシンガーたちの通訳件 …

譜面台を立てる時のチェックポイント〜プロローグ〜

こちらのブログで繰り返し語っているように、 「ヴォーカリストたるもの、 人前で歌 …

カツゼツッ!!!

普段はほとんど興味のないテレビですが、 さすがに昨今、 ニュースくらいは見ておか …

生(リアル)な音、ください。

溝が浅くなるまで、繰り返し聞いたレコード。 ぼろっぼろになるまで、使い込んだ歌詞 …

ほんっとに「一期一会」

一期一会。 若かりし頃はあまりピンとこないことばでしたが、 年を重ね、世界を巡り …