たったひとつの正解を探す~Singer’s Tips #34~
キーは、
どんな表現をしたいか、
どんな効果を狙うか、
自分のどんな表情を切り取るかなど、
さまざまな視点から選ぶ、
というお話をしてきました。
自分にキーやスタイルが近い人が
オリジナルを歌っている場合は、
そちらを参考にすればいいわけですが、
難しいのは異性の歌を歌うとき。
女声キーと、男声キーは、
4度から5度違うというのが一般的ですが、
声の低い女性もいれば、
めちゃくちゃハイトーンの男性もいて、
一概に、何度変えればいいとは言えません。
ここでも考えるべきは、
出る、出ないでは、もちろんない。
カバー対象のシンガーが、
どんな思い、どんな狙いで、
そのキーを選んでいるか。
そこなのです。
例えば、ハイトーンの男性ロックシンガーの曲を、
女性がカバーする場合、
そのままのキーで歌えることは多々あります。
しかし、自分が同じキーで歌って、
果たして、ロックという音楽の真骨頂である、
刹那感、ギリギリ感、焦燥感、高揚感が表現できるのか?
突き抜けるような音色や、
弾けるようなスピード感が出せるのか?
例えば、女性のR&Bシンガーの曲を、
そのままオクターブ下で歌ったりする男性もいます。
しかし、それで果たして、
グルーヴィーなサウンドや、
絞り出すような切なさ、
スコーンと抜ける心地よさが表現できるのか?
音楽には、曲には、
自分に求めてくる「正解」がある。
その正解は、
人の数だけあるのだけれど、
自分自身にとって、
ひとつの曲における正解は、たったひとつだけ。
みつかった瞬間「これだ!」とわかる、
たったひとつの正解。
そのたったひとつを探し出すことが、
準備の最終章です。
探しているときは、
あーでもない、こーでもないと、
本当に悩むものですが、
正解にたどり着いた瞬間に、
あぁ、なんで、これに今まで気づかなかったんだろうと思うくらい、
すべてがカチッとはまります。
いつもいつも理想のキーで歌えるとは限らない世界ではありますが、
自分自身のワン&オンリーを知る努力は、
けして自分を裏切ることはありません。
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