「聞こえませーん」
会議の時、
「聞こえませーん」と言われることが恐怖で、
必死に声を振り絞って話すと、
あっという間に声が枯れてしまう。
騒がしいこどもたちを相手に、
毎日大きな声を出していたら、
ポリープができてしまった。
そんな深刻な悩みを持つ人たちに会う度に、
学校や会社レベルでの、
「声の教育」が必要なのだと痛感します。
スピーチやプレゼンの文化が広まるのが、
欧米に比べて遅かった日本。
ヴォイトレも、いや、発声そのものが、
世界にぐっと遅れを取っています。
「届く声」を出すには、
科学的な知識に基づいたコツを知ることと、
ある程度の訓練、練習が必要不可欠なのです。
ここをすっ飛ばして、
家庭や学校で、
それまでせいぜい、
4〜5人程度の集まりでしか話したことのない人が、
いきなり、数十人の前で、
「はっきりくっきり届く声を出せるのが当たり前」と考えるのは、
普段ジョギングもしてない人を
いきなりフルマラソンに出場させて、
「なんで成績悪いんだ!」と叱るようなものです。
声の科学を理解していない人に限って、
「もっと一所懸命しゃべれ」
「腹から声出せ」
などと、精神論をぶち上げてくるわけですが、
使い方を知らない機械を、
いきなり「気合い」で、
フルポテンシャルで使え、
というのは、もうオカルトの領域です。
声は物理。
発声は自然科学。
このベースを聞く側、話す側の双方が理解すること。
よく響く、いい声を出すこと自体は、
動物と同じく、
人間のカラダに自然に組み込まれていることですが、
不自然に使い続けたカラダをリセットするには、
それなりに知識と時間、そして努力が必要です。
一度徹底的に学べば、自転車に乗るのと同じ、
一生忘れない感覚・・・のはず。
学校教育レベルで、
それが無理なら、会社の研修レベルでは、
是非取り入れていただきたい大切なレッスンです。
・・・「声が届かない問題」に関しては、
書きたいことがたくさんあるので、
少しずつ書きますね!

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
ノドを痛めるのは「大きな声を出すから」ではなく「出し方が悪いから」
「大きな声=ノドを痛める」と思っている人が、 あまりに多いことに、いつも驚かされ …
-
-
発声の基本のチェックリスト
「役者はセリフを歌え。歌手は歌詞をしゃべれ。」 今日のEbidanに登場したブラ …
-
-
上澄みをすくい取って「わかった気」にならない。~Singer’s Tips#21~
ちょっと昨日のブログの続編的なお話です。 ひとつの曲が生まれて、 受け手の手元に …
-
-
「オケ」じゃなくて、プレイヤーの顔のついた「音」を聞くんですよ。音楽って。
年寄り自慢をするつもりは毛頭ありませんが、 (あたりまえ) 一昔前は歌を歌いたか …
-
-
ライブって、本当にすごいんだ。
人にライブの思い出を語るときは、 ついつい、大きなホールで歌った話や、 テレビの …
-
-
確信だけが、人の心を動かす。
「MISUMIさん、バッチっす!OKです!」 レコーディングのお仕事では、 歌っ …
-
-
ホンモノか?ニセモノか?
「あいつはホンモノだよ」 「なんか、あの子、ウソくさいのよね」 一般の人たちがど …
-
-
「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ!」とかって言いますけどね・・・。
「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ」 ロックギターリストが口をそろえて言 …
-
-
それで、いい声、出せますか?
先日、とある生徒さんのレッスンをしていた時のこと。 ずいぶん小柄な彼女なのに、 …
-
-
同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す
人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …
- PREV
- 大陸横断鉄道の「個室寝台」
- NEXT
- 「ちゃんと鳴らす」ってなんだ?
