大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「聞こえませーん」

   

会議の時、
「聞こえませーん」と言われることが恐怖で、
必死に声を振り絞って話すと、
あっという間に声が枯れてしまう。

騒がしいこどもたちを相手に、
毎日大きな声を出していたら、
ポリープができてしまった。

そんな深刻な悩みを持つ人たちに会う度に、
学校や会社レベルでの、
「声の教育」が必要なのだと痛感します。

 

スピーチやプレゼンの文化が広まるのが、
欧米に比べて遅かった日本。

ヴォイトレも、いや、発声そのものが、
世界にぐっと遅れを取っています。

「届く声」を出すには、
科学的な知識に基づいたコツを知ることと、
ある程度の訓練、練習が必要不可欠なのです。

ここをすっ飛ばして、
家庭や学校で、
それまでせいぜい、
4〜5人程度の集まりでしか話したことのない人が、
いきなり、数十人の前で、
「はっきりくっきり届く声を出せるのが当たり前」と考えるのは、

普段ジョギングもしてない人を
いきなりフルマラソンに出場させて、
「なんで成績悪いんだ!」と叱るようなものです。

声の科学を理解していない人に限って、
「もっと一所懸命しゃべれ」
「腹から声出せ」
などと、精神論をぶち上げてくるわけですが、

使い方を知らない機械を、
いきなり「気合い」で、
フルポテンシャルで使え、
というのは、もうオカルトの領域です。

声は物理。
発声は自然科学。
このベースを聞く側、話す側の双方が理解すること。

よく響く、いい声を出すこと自体は、
動物と同じく、
人間のカラダに自然に組み込まれていることですが、

不自然に使い続けたカラダをリセットするには、
それなりに知識と時間、そして努力が必要です。

一度徹底的に学べば、自転車に乗るのと同じ、
一生忘れない感覚・・・のはず。

学校教育レベルで、
それが無理なら、会社の研修レベルでは、
是非取り入れていただきたい大切なレッスンです。

 

・・・「声が届かない問題」に関しては、
書きたいことがたくさんあるので、
少しずつ書きますね!


◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, ビジネスヴォイス, 声のはなし

  関連記事

「そうか、映像にもグルーヴがあるんだ。」

広告代理店の映像&音楽プロデューサーの下で、 音楽選曲のお仕事をさせてもらってい …

音楽は化学反応だ!

アマチュア時代から、 数え切れないほどライブをやってきました。 記念イベントのよ …

おかえりっ!「いいね」!

今年のはじめ、専門家の方に勧められるままに、 ブログのSSL化を依頼し、作業が完 …

声の変化と向き合う vol.1〜発声は運動、歌うことはスポーツです〜

「年のせいか、高い声が出なくなっちゃって。。。」 「私、最近声が枯れてきちゃった …

「お腹は凹ますのか?突き出すのか?」問題について語ってみた

「歌うときは、おへその下10~15㎝下を少~しずつ凹ませましょう。 このとき、肋 …

カラダに染みこませたものは裏切らない。

若かりし頃から、使った「歌詞カード」を 大切に取っておく習慣があります。 「ネッ …

「前提はなにか?」を見極める

どんなことにも、原因があります。 大事なのは、「前提はなにか?」を見極めることで …

テンポが速い曲の練習方法~Singer’s Tips #26~

「ゆっくり目の曲はうまく歌えないんです。 テンポの速い曲の方が得意です。」 時々 …

なんで、ずれないんですか?

レコーディングの現場で頻繁につかわれることばに、 「ダビングする」、「ダブる」、 …

風邪でもなんでも 「声を出さなくちゃいけない時」に絶対やること

現在アニメディレクターとして仕事をする姉が、 まだ、ただのアニメオタクだった、中 …