「ちゃんと鳴らす」ってなんだ?
こどもの頃、
メトロノームを力まかせに揺り動かして、
振り子のスピードを速くさせようと試みました。
振り子を乱暴にぶぅーんとやると、
一瞬、スピードは激しくなりますが、
やがて、あるべきテンポに戻ってしまいます。
理由は単純です。
それが「物理」だからです。
それでもしつこく、
振り子を激しく揺らし続けてれば、
やがて振り子を支えるバネの部分が歪んでしまって、
こっぴどく叱られます。(やったのか?)
そういうものです。
またあるときは、
お祭りで買った小太鼓を、
ボンツク ボンボンツクツクと
調子よく叩いていました。
大きな音を立てたくて、激しく叩く。
叩いても、叩いても、
たいして大きい音になりません。
理由は簡単です。
そう、それが物理だからです。
それならと、
食器棚からスプーンを持ち出して、
どっかんどっかん叩けばどうでしょう?
音は一瞬大きくなりますが、
あっという間に、
太鼓の皮はべっこべこになって、
すぐに破けてしまいます。(やったな?)
そういうものです。
さて、ここで、
ちょっと想像力を働かせて、
物理の実験をやってみましょ。
2センチくらいのストローで、
ジェリーを吸い込みます。
ドゥルンと入って来ちゃうと思いますが、
まぁ、なるべく3ミリくらいの厚みになるように、
上手にそっと吸ってください。
ストローの内側に3ミリの厚みのジェリーの膜が張られたら、
ストローに細〜いペン先のようなナイフを挿入して、
その膜が真っ二つになるように、
シュッと切り込みを入れます。
さて。
このジェリーの膜が、
ストローの中でプルプルプルといい感じに揺れ動くように、
息を吹き込んでみましょ。
どのくらい吹き込みますか?
冒頭に登場した、
乱暴なこどもなら、
ぶっ!と思いっきり息を吹き込んで、
一瞬で吹き矢のごとく、
ジェリーを吹き飛ばしてしまうでしょう。
(あぁ、やりそう)
そして、隣で上手にジェリーのプルプルを楽しんでいるあなたは、
その子の方を向いて言うのです。
「そんなに強く吹いちゃダメに決まってるじゃない」
そう。
そんなこと、当たり前です。
それが「物理」というものです。
「声」を物理現象と考える人が、
実に少ないことに、いつも驚きます。
筋肉論、根性論、精神論、
スピリチュアル系まで、
さまざまな形で語られる「声」。
しかし、ね。 声は物理です。
ストローに張られたジェリーこそ、声帯様のお姿。
どんなに身体が大きな人でも、
ストローのサイズが
4センチ、5センチなんて人は、まずいません。
ジェリーの厚みが1センチなんて人も、
まして、ジェリーじゃなくて樹脂や、
なんなら、私がよく例えて言われるように
「鉄のノド」なんて人も、
いないんです。
体長1.5〜2センチ。
厚みは2〜3ミリ。
その振動部分はジェリーのようにデリケート。
こんな慎ましやかなお姿の声帯様が、
自動車のクラクション並みの音量と、
ギターと同じだけの音域で歌うことを可能にしてくれます。
すべて物理なんです。
ストローを無理やりねじ曲げたり、
ブーブーと乱暴に息を吐きかけたり、
そんなことやってるのに、
「いい声が出ない」
なんて文句を言ったりすることは、
さっさとやめてください。
「声を届ける」は、
ここをクールに理解することからはじまります。
声帯様ワールドへようこそ^_^
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