声を伝えるのに必要なのは「デリカシー」。「気合い」じゃないんですよ。
音の波形ってみたことありますか?
音は空気の振動。
特殊な装置をつかうと、
その振動の波形を見ることもできます。
大きな音は波の山が高くなり、
反対に小さな音は波の山が低くなります。
高い音は山の幅が狭く、
低い音は山の幅が広くなります。
安定した音は、この「波」がきれいで一定です。
「なーんだか、専門的な話でわかんなーい」(街の声)
そうそう。
わかんなくて大丈夫。
ここで、昔、池や湖に、
小石を投げた時のことを思い出してみましょう。
大きな石をどっぽ〜〜んと投げ込めば、
美しい波が起きるどころか、
ぼっちゃ〜んと水が飛び散ってしまいますよね?
小さい小石をどんなに力強く投げ込んでも、
やっぱり美しい波は起きません。
では、美しい波を起こすにはどうするか?
優しく水面で石から手を放しませんか?
水の力と戦わないんですね。
水と折り合うんです。
すると波は美しい波紋となって、
遠くに伝わっていきます。
さーて。
今日言いたいことは、ここから。
みなさん。
大きな声を出そうとやっきになって、
水面にでっかい石を、
ドッカン、ドッカン投げ込むようなことを
やっちゃってませんか、ってことなんです。
美しき波動を作り出すために、
必要なのはデリカシー。
どんなに大きな声を出すときも、
どんなに高い声を出すときもおんなじです。
必要な呼吸は、2センチのストローに張った、
3ミリのジェリーを
いい感じで振動させられるくらいの、
デリケートで、一定の呼吸です。
ぶお〜っと呼吸を吹きかけるのは、
石をドッカンと投げ込むのと同じなんです。
手の平でおわんの形をつくって、
口元に持っていってください。
そのまま、手の平をそっとあたためるように、
「はぁ〜」っと息を吐きかけてください。
そのときに感じた呼吸と同じくらいの息を吐きながら、
今度は同じように、手の平に向かって、ゆっくり、
「おわ〜ん」と声を響かせます。
手の平で声の振動を受け止めるイメージです。
「おわ〜ん」と共に、
温かい呼吸と、心地よい振動を
同時に感じられたら正解です。
この「おわん」の大きさを、
少しずつ大きくするイメージで、
声を鳴らす練習をしていきます。
「おわ〜ん」で、
息の音が「はぁ〜」っとしたり、
手の平に息が強く当たるのはNGです。
手の平が気持ちよく振動しないのもダメですよ。
小さな波紋が、やがて大きな波になる。
物理って、実に公平で、
美しいものなんですね。
もうちょっと真面目に
物理を勉強すればよかったと、
反省する日々です・・・。
水面に石を投げ込むなんて、
そんな素朴な遊びしたことないって人は、
今夜お風呂でやってみてくださいね。
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