人を感動させる力の秘密は”HOW”じゃなく、”WHY”にある。
ピカソやゴッホをお手本に、
「この青は何番をつかって」
「ここの線はくっきり描いて」
などと解釈、解説をすることは、
ある程度、勉強をした人なら、
そう難しいことではないでしょう。
さらに自らも技術を磨けば、
限りなくオリジナルに近い、
線や色を描くことも、
不可能なことではありません。
世の中に出回っている模写や贋作は、
そんな職人たちの、
「技の極致」とも言えるわけです。
歌もおなじです。
このシンガーは、ここをこう歌って、
こっちは、こんな声を出して・・・と、
分析、解析する力は、
技術力を高めたいシンガーには必須の力であり、
歌を指導する立場にある人にとって、
それらすべてを言語化したり、
お手本として聞かせられたりできることは、
絶対条件であるとも言えます。
さらに、オリジナルのフレーズをなぞったり、
そっくりの声を出したり…
いわゆる完コピの精度をあげることで、
技術力、表現力が磨かれて、
プロの世界で認められるようになった人も、
洋の東西を問わず、星の数ほどいます。
私自身、そうやって技術を身につけ、
お仕事をいただくようになりました。
しかしね。
アートでも、音楽でも、歌でも、
本っ当に大事なのは、
HOW(どうやるか)じゃなく、
WHY(なぜ、それをしたのか)。
どうやって、その色を出したのか、
その線を描いたのか、じゃない。
どうやって、その声を出したのか、
そのフレーズを歌えたのか、じゃない。
なぜ、その色を選んだのか。
なぜ、そう歌いたかったのか。
これに尽きるんです。
この発想が欠落していると、
一生、本物の絵は描けない。
本物の歌は歌えません。
本物の職人にも、なれないでしょう。
なぜ、その被写体を、
その構図で、その服で、描きたかったのか。
なぜ、その筆と、その色と、その素材を選んだのか。
なぜ、その光を、なぜ、その表現を、選んだのか。
もちろん、アーティストの真意は絶対にわかりません。
たとえ、言語化されている情報が残っていたとしても、
そこに、彼らのパッションを見ることは不可能です。
しかし、それでも、
その「なぜ」に想いを馳せる。
「なぜ」に宿る、
人を感動させる力の秘密に想いを馳せる。
本物の「自分の表現」は、
そこを越えた先にあります。
モノマネ・レベルのことをやっていたんではダメなんです。
かといって、人の表現をなぞることを恐れてもダメ。
自分が自分であるために、最高の表現を選び取れる力を磨く。
そんな、本物の修行を、したいものです。
◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。
毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
◆無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
「できる人」が集まる環境に身を置く
音楽のセンスや、ことばのセンスを磨いたり、 きらりと光る知性を身につけたり、 楽 …
-
「選ばれる基準」
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とは、 日本の最高額紙幣に印刷され …
-
「バンド、やりたいんですけど・・・」
「バンドやりたいんですけど・・・」 学生から、そんな相談を、よく受けました。 え …
-
人の心を動かすのは「エネルギー」。
アート鑑賞が好きで、 折に触れ美術館を訪れます。 国内外で、かれこれ30年以上ア …
-
失敗も含めて「ライブ」なんだ。
どんなに、どんなにがんばって準備をしても、 ライブやコンサートには、失敗やアクシ …
-
カラダと仲直りする。
“30 Days of yoga”というYoutubeの …
-
そんなこと、 何年やってても、絶対にうまくなりません。
プレイヤー目指して、 日夜がんばっていたにもかかわらず、 てんで上達しなかった自 …
-
「今日はノドの調子が悪くて・・・」
誰にだってのどの調子の悪いときというのはあります。 どんなに気をつけていても、あ …
-
歌には”仕掛け”と”意図”がある!
昨今、カラオケのおかげか、 はたまたYouTubeやアプリのおかげか、 巷に歌の …
-
「できないこと」ではなく、 「今できること」に意識を向ける
うまく行かないときに、 うまく行かないところにばかりフォーカスすると、 本来でき …