大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人を感動させる力の秘密は”HOW”じゃなく、”WHY”にある。

   

ピカソやゴッホをお手本に、
「この青は何番をつかって」
「ここの線はくっきり描いて」
などと解釈、解説をすることは、
ある程度、勉強をした人なら、
そう難しいことではないでしょう。

さらに自らも技術を磨けば、
限りなくオリジナルに近い、
線や色を描くことも、
不可能なことではありません。

世の中に出回っている模写や贋作は、
そんな職人たちの、
「技の極致」とも言えるわけです。

 

歌もおなじです。

このシンガーは、ここをこう歌って、
こっちは、こんな声を出して・・・と、
分析、解析する力は、
技術力を高めたいシンガーには必須の力であり、

歌を指導する立場にある人にとって、
それらすべてを言語化したり、
お手本として聞かせられたりできることは、
絶対条件であるとも言えます。

さらに、オリジナルのフレーズをなぞったり、
そっくりの声を出したり…
いわゆる完コピの精度をあげることで、
技術力、表現力が磨かれて、
プロの世界で認められるようになった人も、
洋の東西を問わず、星の数ほどいます。

私自身、そうやって技術を身につけ、
お仕事をいただくようになりました。

しかしね。

アートでも、音楽でも、歌でも、
本っ当に大事なのは、

HOW(どうやるか)じゃなく、
WHY(なぜ、それをしたのか)。

どうやって、その色を出したのか、
その線を描いたのか、じゃない。

どうやって、その声を出したのか、
そのフレーズを歌えたのか、じゃない。

なぜ、その色を選んだのか。
なぜ、そう歌いたかったのか。

これに尽きるんです。

この発想が欠落していると、
一生、本物の絵は描けない。
本物の歌は歌えません。
本物の職人にも、なれないでしょう。

なぜ、その被写体を、
その構図で、その服で、描きたかったのか。
なぜ、その筆と、その色と、その素材を選んだのか。
なぜ、その光を、なぜ、その表現を、選んだのか。

もちろん、アーティストの真意は絶対にわかりません。
たとえ、言語化されている情報が残っていたとしても、
そこに、彼らのパッションを見ることは不可能です。

しかし、それでも、
その「なぜ」に想いを馳せる。
「なぜ」に宿る、
人を感動させる力の秘密に想いを馳せる。

本物の「自分の表現」は、
そこを越えた先にあります。

モノマネ・レベルのことをやっていたんではダメなんです。
かといって、人の表現をなぞることを恐れてもダメ。

自分が自分であるために、最高の表現を選び取れる力を磨く。
そんな、本物の修行を、したいものです。

 

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。
毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。

 

 - B面Blog, The プロフェッショナル, クリエイト, 完コピ

  関連記事

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

「気づけない」から上手くならないってことに早く気づく。

中学1年の夏休み、 長年の夢だったピアノを、 やっとの思いで買ってもらいました。 …

人は「声の高低」でワクワク、感動する。

全っ然、キャラじゃないんで、 あんまり言わないんですが、 こう見えても、 ディズ …

マンツー vs. グループレッスン

「歌のレッスンはマンツーマンじゃなくちゃ」とは、 非常によく言われることです。 …

「準備OK」な自分を育てる

欲しいものがなんだかわからなければ、 どこに向かって手を伸ばせばいいのか、わかり …

「こんな曲やるくらいなら、あたし、バンド辞める」

カバー曲ばかりやっていた学生時代、 すでに社会人バンドでがんばっていた高校時代の …

選ばれるミュージシャンであるための3つの資質

長年、音楽業界で優れたミュージシャンたちと たくさんのお仕事をさせてもらってきて …

知識でも、思考でもない。メソッドは創造するものなんだなぁ。

どんなに知識を詰め込んでも、 あーでもない、こーでもないと考えても、 クリエイテ …

「人前で歌うとき」の理想的な状態

人前で歌うとき、パフォーマンスするときに、 重要だと考えていることは3つあります …

「変わってる」って、なんだよ?

自分は何に、どんなことに、反応する体質なのか。 自分のアンテナは何に反応し、どん …