大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

握手。ハグ。キス。

   

音楽業界の常識と一般の常識とは、
あらゆる面で、大きなずれがあります。

起業して、
ビジネスパーソンたちと付き合うようになって、
そうした常識感覚の違いに、
少なからず苦労しました。

業界では、
「はじめまして」という挨拶の際、
ほとんどの人が、
すっと右手を差し出して握手をします。

バンドマンなどは、何度会っても、
「おはよう」と言いながら握手を交わす。

ライブの前は「よろしく」と握手をするし、
ステージが終われば「おつかれ!」と、
熱く握手を交わします。

相当盛り上がったライブなら、
お互い汗びっちょりだろうがおかまいなく、
肩を抱き合ったり、
ハグをしあったりもします。

特に男子ミュージシャンには、
このタイミングを利用して、
女子たちにハグする人もたくさんいます。

最初はぎこちなかったと思いますが、
慣れると、
これほど心地よいコミュニケーションはありません。

しかし、ビジネスパーソンたちの集まる異業種交流会で、
この癖で、すっと右手を差し出すと、
一瞬気まずい空気が流れることが多々あります。

手を差し出された方は、
どうしていいか、わからないという様子で、
一瞬、居心地の悪そうな顔になる。

そして、その刹那、
「あ、いかん。右手出すとこじゃなかった」と、
思うわけですが、時すでに遅し。
なんか、テンションのかみ合わない握手を交わすことになるのです。

ところ変われば、流儀も変わる。

1990年初頭のこと。

ひょんなことからヤマハ主催の、
バンドコンテストの世界大会に出演するため来日していた、
カナダ人のバンドメンバー、
そしてプロデューサーとなかよくなった私。

海外勢が泊まる千代田区のとあるホテルに、
出入りすることとなりました。

それまでは、
日本在住の英国人の友だちが1〜2人いただけでしたし、
渡航経験も1回きりでしたから、

初対面の挨拶をすると同時に、
いきなり距離を詰めてくる海外ミュージシャンのスタイルに、
さすがに戸惑いました。

カナダの子たちの「初めまして」は、
「ハーイ」と握手して、
その次が右ほっぺにキスです。

それも、どちらかというと
耳の近くくらいの場所。

さすがに、見上げるようなムキムキの、
カーリーヘアーの男子にされたときは、
一瞬ひるみそうになりましたが、

そこは「国際派」と見られたい私の意地です。
ぐっとこらえて、にこやかにキスを受けました。

しかしです。

フランス人のバンドに紹介されたとき、
ひげもじゃの男子と握手をした次の瞬間に、
ぐいっと引き寄せられて、
右と左のほっぺにキスをされた瞬間は、
さすがに総毛立って、
「きゃ〜〜っ!」と声をあげてしまいました。

しかもね、ほぼ唇の横です。
ぎゃ〜〜っ、こいつっ、なに調子こいてんのっ!?
となって、ものすごい嫌な顔で、
ぎゃーぎゃー言っていたら、

キスしてきた男子が、酷く傷ついた顔つきで、
「これはカルチャーなんだよ。これは挨拶なんだよ。」
と必死で言って来て、

まわりの友人たちに、
「日本はそういう文化じゃないんだ。」と、
たしなめられていたっけ。

2年間の海外放浪生活を経て
すっかり「欧米流」が心地よくなってしまった私。

握手、ハグ、そしてキス。

男女の友だち同士でも、
腕を組んで歩いたりするし、
くっついておしゃべりしたりもする。

そんな「密」な人間関係は、
いつになったら戻ってくるのか。。

マスクにフェイスシールドに手袋にアクリル板・・・。

次に友だちとキスしあうときは、
ちょいと命がけな気分になるのでしょうか。

頼むよ。コロナ。

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