その時間を「練習」と感じるか、感じないか。問題はそこです。
「毎日、何時間勉強してる?」
「なにやってるの?問題集?」
試験前になると、
成績優秀な子を相手に、
こんな質問をしている子がいたものです。
人が何をしているのか気になる人がする質問は、
おとなになっても変わりません。
「毎日何時間仕事してるの?」
「いくらくらい稼いでるの?」
「仕事って、なにやってるの?」
ところが、本当に優秀な人は、
たいがいこんな風に答えます。
「いやー、そんなにやってないよ。」
「まだまだ、たいしたことないよ。」
「何って、なんだろう・・・。」
こう言われると、
「あー、できるヤツに限って、
なんにもやってないとか、
たいしたことないとか言うんだよな。」
と感じてしまうもの。
しかし、です。
問題は何を「勉強」と思い、何を「仕事」と思うか。
どのレベルを「できる」とみなし、
何を「努力」と感じるか。
この基準を変えていかないと、
いつまで経っても、
あの人はあんなに何時間もがんばっているから、
あんなにいい点とれるんだ。
自分には無理だ。
で、終わってしまいます。
例えば、
勉強が好きな人は、
学校の行き帰りの電車の中で、
自然に参考書や問題集を広げます。
ちょっとわからない言葉が出てくると、
何気なく、辞書を引いて、
それをメモします。
辞書サーフィンをして、
新しいことばに出会うと、またメモです。
興味のあるトピックがあれば、
図書館に出向いたり、
本屋さんに出かけたりもします。
テレビを見ていても、
「ふと、そういえばこの間やった時事問題に、
この話題が出ていたな。」
と気づいて、新しい情報を手に入れます。
洋画を見ていても、
耳にした知らない単語の意味をチェックしたり、
歴史物のドラマを見て、登場人物の名前をググったり、
気になる食べ物の原材料を調べたり、
産地や原産国の情報をチェックしたりします。
勉強のためにやっているのではありません。
楽しいからです。興味があるからです。
だから、このすべての時間は、
彼らの「勉強」の時間にカウントされていないわけです。
時計とにらめっこしながら、
「よし!今日も2時間参考書読んだ!」と思う人とは、
差がつくのは当たり前ですね。
歌や楽器の練習も同じです。
練習音源を流して発声練習をする。
歌詞カードを片手に、曲を何回か練習する。
歌詞を覚える。
この時間を「練習」と感じるか、感じないか。
「がんばっている」と感じるか、
「いやー楽しい」と感じるか。
本当に歌に夢中になっている人は、
起きた瞬間、思わず声を出して、
ノドの状態をチェックしてしまう。
歌うためにはカラダよね、と、
エクササイズをしたり、
カラダにいい食べ物をチョイスしてしまう。
歯磨きをしながら、鼻歌を歌ってしまう。
思わず発声練習をしちゃう時さえあります。
朝シャンしながら、
覚えた歌詞の確認をする。
通勤通学の移動時間に、
音源を聞いて、細かい音をチェックしたり、
自分が歌った歌の録音を細かく分析してみたりする。
仕事のすき間時間に、
トイレや屋上で、
スマホで音楽を聴きながら鼻歌を歌ったりする。
友人が飲みに行ったり、
遊びに行ったりするのを断って、
楽器屋やCDショップに出かけたりする。
YoutubeやiTunesで次々とお気に入りのシンガーを見つけては、
歌の研究に没頭する。。。
自室に閉じこもって、さぁ、歌おうと思う時間、
またはひとりでカラオケ屋さんやスタジオにいる時間が、
彼らが実際にカウントする「練習時間」となるのでしょうが、
本当に大切なのは、目に見えない、
カウントされない、「日常」なのです。
好きなことしか上達しない。
好きなことでしか、他の人に勝てない。
「日常」が人をつくるのです。
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