肉体は変化する
ずいぶん前のことになります。
クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、
友人に誘われ、意気揚々と出かけました。
しばらく熱は薄れていたものの、
高校時代は、ずいぶん聴いていた愛しのクラプトン。
ストラトを低く構えて、
気だるそうに弾く、あの心地よいディトーションサウンドと、
時にやさしく、時に激しく歌い上げるシブい声。
長いこと、新譜とか聴いてないけど、
あの頃のあんな曲、やるかしら?
バンドやってたときの、こんな曲もやるのかしら?
そんな期待に胸を膨らませて、
なんの予備知識もないまま向かった武道館。
しかし、です。
私の大好きだった曲はアンコールで1曲やっただけ。
それ以外は、
椅子に座って、しんみりとアコースティックをやったり、
渋すぎるブルースを、しっとりやったり。。。
うっそぉ。。。
あの曲たち、やるの、やめちゃったの・・・?
もちろん、音楽は素晴らしい。
声だって、ギターだって、曲だって、
クラプトンですから、最高水準です。
うっとりとした雰囲気に包まれる会場で、
私だけが(たぶん)、
あぁ、ぎゅいーんっての、聴きたかったなぁ。。
ちょっぴり残念な気持ちで、
会場を後にしたのでした。
年齢を重ねて、音楽性も、見た目も、
おとなっぽい、シブい方向に、
変化していくアーティストはたくさんいます。
突き抜けるようなハイトーン、
アドレナリン出まくるハイテンションな楽曲たち、
首や腰がちぎれんばかりに踊り狂うオーディエンスの頭の上に、
ダイブしては運ばれていく若者たち。
爆音のステージを楽器を担いで、
縦横無尽に走り回ったり、
ミニスカートで美脚を売り物にしたり、
胸をはだけてキャーキャー言われたり、
あぁ、一体いくつまで、やれるんだろう?と
悩む人たちもいるでしょう。
とっくのとうに開き直って、
お腹が出ても、
髪の毛が淋しくなっても、
かつての鈴虫の鳴くような声が割れ鍋のようになっても、
ずっと変わらぬ衣装を着て、
同じ曲をやって、
たとえ、物珍しげに見られても、
死ぬまで自分を演じて行く覚悟の人たちもいれば、
ダイエットに
エクササイズに
エステにボトックス。
なんなら適宜、お直しもして、
修練に修練を積んで、
さらには、いろんなテクノロジーも駆使して、
「変わらぬ自分」で居続けることが、
自分の美学、という人もいる。
年を重ねれば肉体は変化するのが自然というもの。
肉体だけではありません。
求める音楽が変わっていく。
そこにありたい、環境が変化していく。
脳内物質やホルモンを刺激されまくる、
激しかったり、セクシーだったりする音楽より、
ぐっと心に迫る、
落ち着いた音楽を欲する人もいるかもしれない。
「心はずっとロックだぜ」と、
やんちゃな音楽しか、
好きになれない人もいるかもしれない。
正解はないんですね。
こればっかりはもう、
自分の心に聴くしかないのです。
ただ、もしも、叶うなら、
どんな音楽を、
どんなキーで、
どんな衣装を着て、
どのようにパフォーマンスするか、
いくつになっても、そんなことを、
心のおもむくままに、選び取れる自分でありたい。
そんな自由だけは、いつまでも持ち続けたい。
それには、やっぱり鍛錬しかないんだよなー、と、
遠い空を見上げるこの頃です。
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