同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す
人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。
そんなことを言うと、
意外そうな顔をする人がたくさんいます。
しかし、人間のカラダは絶えず変化しています。
絶えず、です。
血管や筋繊維の一本一本、
細胞のひとつひとつ、
カラダを流れる血液や、
運ばれる酸素、
そして全身を動かすエネルギー量・・・
すべてが、刻一刻と変化しているわけです。
極論すれば、
一瞬前の自分と今の自分とは、
「べつもの」ということになります。
このことを、人は、
音楽を演奏するとき、
痛いほど知ることになるのです。
例えばギター。
左手の押さえ方、ピッキングの強さ、
スピード、タイミングのすべてを、
機械で計ったように寸分違わず、
完全に同じに弾くというのは不可能なはず。
この不可能を、
「聴感」をたよりに、
限りなく「同じように」弾くことが、
ギターリストたちの腕の見せ所。
この「聴感上、まったく同じ音」を出すために、
耳だけでなく、カラダ中の感覚を研ぎ澄まし、
微調整に微調整を重ねるのですね。
これは、人間のカラダをつかって演奏する楽器なら、
すべて同じです。
しかし、もちろん、なによりも、
この「絶え間なく変化するカラダ」そのものが
楽器であるシンガーたちこそ、
最もシビアな微調整を要求されます。
口の中の、小さな筋肉がほんの数ミリ動いただけでも、
呼吸の量やスピードや圧力がわずかに変化しただけでも、
音色が変わってしまうのが声。
聴感と全身のありとあらゆる部分の筋感覚、
皮膚感覚を頼りに、
常に「安定感のある声」を出すことは、
シンガーのすべてのテクニックの基礎であり、
もっとも難しい究極の課題でもあります。
まずは、
「(聴感上)同じ音を同じ音色、同じ音圧で、
100発100中で出す」を目指す。
自分の音域のすべての音で、
おなじことができる状態を目指す。
そのために、
まずは、自分の現状を的確に知ること。
安定している状態とはどんな状態なのか、
「うまい」と言われるシンガーの歌を、
とことん聞き込むこと。
そして、自分自身が歌う瞬間の、
カラダの変化に気づき、
微調整をかけられるようになること。
あくまでも、理想です。
しかし、追いかけない理想には近づくことすらできません。
今日はどんな音が出るんだろう?
さっきとおんなじ音出てくれるかな?
なんて、不安を抱えながら、
どうしていい演奏ができるでしょう?
安定感のある、信頼できる楽器を持つことなしに、
自由な演奏を楽しむことは、不可能です。
マニアックに聞こえるかもしれませんが、
音楽や歌の楽しさ、表現を最大限引き出すためには、
これしかないのです。
修行は続きます。
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