大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す

   

人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。

そんなことを言うと、
意外そうな顔をする人がたくさんいます。

しかし、人間のカラダは絶えず変化しています。
絶えず、です。

血管や筋繊維の一本一本、
細胞のひとつひとつ、
カラダを流れる血液や、
運ばれる酸素、
そして全身を動かすエネルギー量・・・
すべてが、刻一刻と変化しているわけです。

極論すれば、
一瞬前の自分と今の自分とは、
「べつもの」ということになります。

このことを、人は、
音楽を演奏するとき、
痛いほど知ることになるのです。

例えばギター。

左手の押さえ方、ピッキングの強さ、
スピード、タイミングのすべてを、
機械で計ったように寸分違わず、
完全に同じに弾くというのは不可能なはず。

この不可能を、
「聴感」をたよりに、
限りなく「同じように」弾くことが、
ギターリストたちの腕の見せ所。

この「聴感上、まったく同じ音」を出すために、
耳だけでなく、カラダ中の感覚を研ぎ澄まし、
微調整に微調整を重ねるのですね。

これは、人間のカラダをつかって演奏する楽器なら、
すべて同じです。

しかし、もちろん、なによりも、
この「絶え間なく変化するカラダ」そのものが
楽器であるシンガーたちこそ、
最もシビアな微調整を要求されます。

口の中の、小さな筋肉がほんの数ミリ動いただけでも、
呼吸の量やスピードや圧力がわずかに変化しただけでも、
音色が変わってしまうのが声。

聴感と全身のありとあらゆる部分の筋感覚、
皮膚感覚を頼りに、
常に「安定感のある声」を出すことは、
シンガーのすべてのテクニックの基礎であり、
もっとも難しい究極の課題でもあります。

まずは、

「(聴感上)同じ音を同じ音色、同じ音圧で、
100発100中で出す」を目指す。

自分の音域のすべての音で、
おなじことができる状態を目指す。

そのために、
まずは、自分の現状を的確に知ること。

安定している状態とはどんな状態なのか、
「うまい」と言われるシンガーの歌を、
とことん聞き込むこと。

そして、自分自身が歌う瞬間の、
カラダの変化に気づき、
微調整をかけられるようになること。

あくまでも、理想です。
しかし、追いかけない理想には近づくことすらできません。

今日はどんな音が出るんだろう?
さっきとおんなじ音出てくれるかな?

なんて、不安を抱えながら、
どうしていい演奏ができるでしょう?

安定感のある、信頼できる楽器を持つことなしに、
自由な演奏を楽しむことは、不可能です。

マニアックに聞こえるかもしれませんが、
音楽や歌の楽しさ、表現を最大限引き出すためには、
これしかないのです。

修行は続きます。

 

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
◆ 一から歌を学びたいという方にも、基礎を見直したいというプロの方にも。オンラインのお得なBasic3パック

 - B面Blog, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

究極の正解を探せ!

カバー曲はいい感じで歌えるのに、 オリジナル曲になると精彩を欠く。 こうしたケー …

no image
歌の「点」、ビートを意識する。

ドラムにビートがあるように、歌にもビートがあります。 ビートの意味は、いろいろな …

アイディアは、ポンと降ってくるギフト。

クリエイティブなアイディアって、 頭で考えているうちは絶対に出てこないもの。 作 …

「上達」は、いきなりやってくる。

スポーツジムなどでトレーニングを受けると、 「今日より明日、明日より明後日という …

声の優先順位が低いなら、気にしないのが一番。

「自分の声の印象って、どうなのだろうと気になる」 という人はたくさんいるのに、 …

歌詞の理解を深める~Singer’s Tips #12~

どんなことばで語られようと、 心ない政治家の原稿丸読みの演説や、 稚拙な役者のセ …

ギターの「早弾き」 vs. ボーカルの「高い音」

ボイトレというと、高い音ばかり練習している人がいます。 実際に、スクールなどでも …

人はみんな、違うのだ。だから、おもしろいのだ。

音楽というのはある種のトリガーで、 サウンドやフレーズや声が 感情とか記憶とか、 …

ダメな時はダメ。それでいいのだ。

一昨日から、 書いても書いても仕上がらない記事がありまして。 どうやってもアップ …

歌詞が覚えられない?~Singer’s Tips #22~

「歌詞なんか、よく覚えられるね。」 と言う人がいます。 「そこまで真面目にやる必 …