デモをつくれ!
「音楽の世界で認められたいなら、
とにもかくにもデモをつくれ」と、
音楽学校でも、音大でも、
口が酸っぱくなるほど言い続けてきました。
理由はシンプルで、私自身のキャリアの節目には、
常に”デモ”があったからです。
“ライブ”も、もちろん大事ですが、
ライブが、ライブハウスに足を運んでもらわなければ見てもらえないのに対し、
デモなら、その気になれば、いつでもどこでも、聞いてもらえます。
「はじめまして!私、歌、やってるんです!」
と自己紹介しても、
「じゃ、ちょっとそこで歌ってみて」となりません。
一方、名刺代わりにデモを渡せば、
興味さえ持ってもらえれば、
家に持って帰って聞いてくれる可能性は充分あります。
今の時代なら、
カセットテープやら、CD-Rやらを必死に渡さなくても、
ネット上にアップもできますから、
聞いてもらえるチャンスはぐっと広がるでしょう。
そんなことを熱く語ると、必ず出るのが、
「どんなデモをつくったらいいんですか?」という質問。
答えは簡単です。
いいデモ。以上です。
どれだけデモをつくって、
どれだけ人に配っても、
ネット上にどれだけデモをアップしても、
クオリティの低いデモ、
人の興味を引き付ける魅力のないデモ、
エネルギー量の低いデモでは、
人の心は動かせません。
「それって、具体的にどんなデモでしょう?」
・・・これが、その次にくる質問。
理想は、
自分の歌の魅力を余すところなく伝えられる、
聞く人が誰かにしゃべりたくなる、
聞いた人に、また聞きたい、この人と会ってみたいと思わせるデモ。
自分のレパートリーを見直して、
評判のよかった曲、
自分が大好きな曲、
これだ!と思える曲を、選んで、
今の自分にできる最高のデモをつくること。
しかしね・・・。
それ、いきなりわかりますか?
デモを一回もまともにつくったことがない人が、
自分はどんなデモをつくればいいのかなんて、
わかるはずないし、
その1回だけで最高のものを作り上げようなんて、
手抜き過ぎです。
まずつくる。
だいたい、やります!がんばります!
と、盛り上がる子に限って、
なんだかんだと理由をつけて、
先延ばしにして、時間を無駄にします。
まずつくるんです。
自分の頭で考えて、
今可能な、最高のものをつくります。
録音にお金をかける必要はありません。
アレンジャーもプレイヤーもいりません。
つかうのは、頭。そして根性。
それだけです。
ちなみに、私が最初につくったデモは、
大学時代に友だちに聞かせたオリジナル曲の曲デモでした。
へたくそなピアノに出来損ないの曲。
散歩しながら書いた散文詩のような歌詞に、
適当に鼻歌のような歌を入れて・・・
みんなに「わぁ、いい曲」と言ってもらえると信じていました。
もちろん、結果はさんざんです。
私のデモを聞きながら、
バンドメンバーの顔がどんどん曇りました。
あげく、キーボードの女の子が、
曲を聴き終わるなり、
「あたし、こんな曲、やりたくない」と言い出す始末。
あぁ、これじゃ、全然伝わんないんだな、と、学ぶわけです。
次につくったのは、
もうちょっとちゃんとアレンジして、
(注・たいしたアレンジではない)
もうちょっとちゃんと練習して、
カセットテープにガチャ録りした音源でした。
歌詞は書けなかったので、英語っぽい歌詞をつけて、
とにかく歌だけは、いい感じで歌えるまで練習しました。
そうするとね、聞いてくれる人たちの反応が全然違う。
お、面白い曲だね、
歌、いいね、となるわけです。
で、
「このままのアレンジじゃ、ちょっとなんだから、
俺がアレンジしてみようか?」という人や、
「これ、テキトー英語なの?
こういうテキトー英語で俺の曲歌ってみてくれない?」
という人たちが登場します。
ここから、また、新たな学びがあり、
次のデモへのヒントが生まれるわけです。
まずやれ。
話はそれからだ。
今日の学びは、シンプルであります。

◆“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 〆切間近。
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