集中力ってのは、訓練だ。
「売れてるプロほど、ますます上達する」と言われます。
そもそも売れ始める時点で、普通のプロレベルの人から頭ひとつ出ている人が、売れるほどにメキメキ力をつけ、ますます売れる。
一度このスパイラルに入ると、手のつけようがありません。
では、なぜ売れている人はどんどんうまくなるのか?
忙しければ、それだけ毎日弾いたり、歌ったりするわけですから、うまくなって当然と思うかも知れませんが、理由はそれだけではありません。
集中している時間が長いのです。
現場に入るまでの準備段階から、集中ははじまります。
限られた時間で、あるレベル以上の演奏ができるように準備してから現場に入らなければいけないからです。レベルに達していない演奏をすれば、恥をかくのは自分。最悪はその場でクビになって、二度とお呼びがかからないなんてことも、本当に、普通にあります。
プロフェッショナルに囲まれる現場には独特の緊張感が常にあります。
課せられる高い要求を次々とクリアしなければという、プロ意識もあります。
いやが上にも、最大の集中力を要求され続けるわけです。
長時間演奏するからうまくなるんじゃありません。
長時間集中して演奏するからうまくなるんです。
ダラダラとしたセッションや、ゆるめのハウスバンドのお仕事をどれだけ長くやっても、めざましい成長はありません。
よほど高い意識を保てる人でない限り、長時間やるほどに、その芸は荒れる一方です。
高校時代に通っていた予備校の講師が、「2時間以上勉強するな!」と強い口調で言っていたことを、今でも時折思い出します。
人の集中力は2時間しか保たない。
ダラダラ長い時間やろうと思うから、1時間の密度が下がる。
2時間しかやらないと決めて、集中するんだ。
たしか、そんな話だったと思います。
では、「現場」も「周囲の目」もない状態で、どうやって、集中して演奏する時間をつくるのか。方法は3つ。
1.練習スタジオを予約して、強制的に集中状態をつくり出す。
人はキャッシュな生き物です。お金をかければ、元を取りたいと思うもの。
予約したスタジオに入れば、強制的に集中のスイッチが入ります。
2. 本気の録音をすることで、失敗できないプレッシャーを自分に課す。
「よし、これが本番!」と一発OKが出るまで録音をする、という手があります。
聞いてもらう人がいれば、なおベターです。
1音もミスれないという緊張で、かえってミスが連発するのはよくあること。
緊張でミスる→録り直すという連続が、とんでもなく効くんです。
3. ライブや配信を決めて、火事場の馬鹿力的集中力に火をつける。
誰が何と言っても、本番を繰り返すことが、最大の上達の秘訣です。
まわりを巻き込むほどに、プレッシャーは増し、そのぶん集中力も試されます。
失敗したって全然かまいません。失敗に慣れないことです。
思い描く自分のレベルに達せない自分自身を受け入れないことです。
何度でも、挑戦することです。
集中力っていうのは、天才のものじゃないんだ。訓練だ。(小澤征爾)
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