「声」を鳴らせ!「いい声」を鳴らせ!
ギターもダメ。ピアノもダメ。
プロになるには、かろうじて誘われる「ボーカル」をがんばるしかない。
そんな風に、あきらめに近い気持ちで決意したのは、20才くらいのこと。
一緒にバンドをやっていた仲間たちが次々と就職活動で音楽から離れる中、何が何でもプロになりたい一心で、親に借金をしてヴォーカルスクールに入りました。
ところが、いざ、歌の学校に入ってみたら、志を同じくするクラスメイトは、みな、そこそこの実力の持ち主。
サークルでちやほやされて、いい気になっていた私は、一気に地味な存在になりました。
そこで、先生からも、クラスメイトからも一目置かれていたのが1年先輩だった”トネちゃん”。
後にBIG HORNS BEEのツアーに参加し、ソロ曲までもらって歌うことになる女性シンガーです。
ソウルフルかつパワフルな歌いっぷりはもちろん、なによりすごかったのは、その「声」。
一声聴いた瞬間に、「すごい」と周りを唸らせる強烈なインパクトがありました。
ピッチが、グルーブが、アドリブがと、みんな夢中で練習に励んでいたけれど、「声」がなけりゃ、それも、「聞く人を一瞬でノックアウトできる声」がなけりゃ、絶対に頭ひとつ抜けられない。
絶望的な気持ちで、そんな風に思ったものです。
ジャズやソウル、R&Bシンガーたちのような、豊かで立派な声。
あんな声は、黒人シンガーだからこそ出せるんだ。
ただの日本人の、しかも、カラダの小さな自分には無理だ。
そんな風に思い込み、自分の「声」をあきらめてきた私。
しかし、目の前で黒人シンガー張りに歌うトネちゃんはどうでしょう。
身長もカラダも、私より、さらにひとまわり小さい。
しゃべる声だって、か弱い、ごく普通の日本女性の声です。
どうやったら、あんな声を出せるのか。
トネちゃんとみんなは、自分は、一体全体何が違うのか。
そんな風に彼女の歌う姿を見るうちに、彼女は「その小さなカラダぜんぶを全力で鳴らしながら歌っている」ということに気づいたのです。
あそこまで全身を鳴らせている子は、他にいませんでした。
これなら、挑戦できるかもしれない…。
練習曲に選んだのは、映画『The Rose』でベット・ミドラーが歌っていた“When a Man Loves a Woman”。
あの強烈な声にあこがれて、来る日も来る日も、ピアノの前に座り、ただ、ひたすら、
“Whe〜〜n な maぁ〜〜ん”という歌い出しだけを、練習し続けました。
口を大きく開けたり、胸に響かせてみたり。
頭のてっぺんに声を集めたり。
上を向いたり、下を向いたり。
全身に力を込めたり。
反対に脱力したりもしました。
一体どのくらい、そんな練習を続けたのだったか。
ある日、ついに、「お、この感じか!」と思える声にたどり着きます。
そこからワンフレーズ、ワンコーラスと、匍匐前進するかのように、いい感じで歌える音域を広げ、フレーズを増やしていったのでした。
カラダは楽器。
どんな楽器にも「一番鳴る音」がある。私の持論です。
カラダが一番鳴る声。
その「声」を見つけることこそが、一生涯にわたって付き合って行く、「自分のカラダ」という楽器と出会うこと。
あなたという楽器の「一番鳴る音」は、どんな音ですか?
ぜひ、探してみてください。
(その後何度も歌うことになるこの”When a man loves a woman”。実は、後日談があります。
あんまり話したくないこともあるので、近々メルマガで書こうかな。)
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