大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「知ってる」だけで満足しないっ!

   

好奇心は学習のはじまりです。
「知りたい」という欲求こそが、
人を、勉強や練習や研究に向かわせる。

だから「知りたい」はチャンスなのです!

人に尋ねる、本を読む、ググる。
今の時代、知識を手に入れる方法は豊富にあります。

 

しかし、大事なのはその先です。

知識を得るだけで満足してしまっては、
学んだことになりません。

知識は単なる「ことば」でしかないんです。

「意味を知っている」ことと、
「わかっている」ことは、もう全然違う。

心の底からわかる。
カラダでわかる。
自分との関係性を見出す。

私は、そこから生まれた発見や、
新しい発想こそが、自分の一生の宝となる、
本当の「学び」であると考えています。

例えば「アメリカと日本は土壌も気候も違う」。
これは誰でも知っている「知識」です。

しかし、飛行機でアメリカ大陸の上空を飛ぶと、
明らかに、大地の色が違う。
山々の、草木の色が違う。
あぁ、こういうことか、と腑に落ちる。

土地に降り立てば、土の匂いが違う。
草花を植えてみたら、育ち方が全然違う。
同じ野菜も、味が違う。

空気の肌触りが違う。
土地によっては朝晩の気候の差や、湿度の違いも激しい。
あぁ、だからアメリカ人は革ジャンを着るんだ、
みたいなことが、腑に落ちる・・・。

知識と体験。
そこから生まれる発見と、
見出される自分との関係性。
それこそが「学び」なのです。

ここで言う「体験」は、
物理的な「体験」とは限りません。

例えば、
「ビブラートとは音を揺らすこと」と知る。
「●●さんや××さんはビブラートがうまい」と知る。
これだけでは、単なるうんちくです。

素晴らしい歌手の名演を聞く。
ロングトーンで、どーんと心が動く。
ビブラートの音のゆらぎに、涙が出そうになる。
「あぁ、人の心はビブラートに反応するんだ。」と気付く。

これまで好きだった歌手たちの曲を、
もう一度片っ端から聞いてみると、
自分が好きな歌手は、みなビブラートが素晴らしいんだ!
と発見する。

自分もこんなビブラートをかけようと試みる。
ところが、音を揺らそうとすると、
かえってビブラートはかからない。
ビブラートの奥の深さに出会い、
あらためて、自分が好きな歌手たちの素晴らしさに感動する。

学習って、こんな風に、
うねうねとトルネードのように、
あっちこっちに方向を変えながら、
だんだんとカラダにしみこんでいくもの。

実は、真面目にテキストを学ぶ人ほど、
本当の「学習」が苦手です。

「知識」として頭にはいると、わかったつもりになってしまう。

素直であることは学習の最低条件ですが、
それだけでは不十分なのです。

他人のことばに、
他人の発見した知識に飛びつかない。
そこで満足しない。

どんなに小さなことでも、自ら発見し、
関わりをつくっていこうとする姿勢こそが、
本当の学習です。

時間がかかることを恐れないことです。

時間がかかることを回避しようと、
近道ばかりをたどるのは、無意味なのです。

迷い、悩み、壁にぶつかりながらたどる、
その道のりこそが真の「学び」の過程です。

あぁ、うまくいかないな、と思うときこそが、
学びのチャンスなんですね。

あと一歩。
もう一息。
がんばりましょう!

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

アチチュードが、結果をつくる。

なにから始めたらいいかわからないなら、 憧れの人がやっていることを観察して、マネ …

「でもしかコーラス」と「プレイヤー至上主義」

歌の学校に通っているとき、 ある子のトラ(エクストラ=代役)を頼まれたことがきっ …

ダメな時はダメ。それでいいのだ。

一昨日から、 書いても書いても仕上がらない記事がありまして。 どうやってもアップ …

リスペクトくださいっ!

私の通った女子校には、なんとも不思議な風習がありました。 学校のある駅を降りた瞬 …

「上達」は、いきなりやってくる。

スポーツジムなどでトレーニングを受けると、 「今日より明日、明日より明後日という …

タイムプレッシャーを逆手に取る

「どんなときに名曲が生まれるんですか?」 というインタビューに、 坂本龍一は、「 …

ベストを尽くす。ベストを尊重する。

週末の久っびさのリアルセミナーの準備に追われています。 レジメやプロット、オケや …

まず、自分の出音(でおと)をちゃんとせい。

トレーナーズ・メソッド、リズム編のテキスト制作中にて、 古今東西のドラマーの名演 …

「何言ってやがんでぇ」と吠えてみる。

かれこれ10年近く前のこと。 さる著名な文筆家が主催する食事会に参加させていただ …

「中毒」か?「夢中」か?

先日、アルコールやドラッグ、セックスなどの中毒患者のためのリハビリテーション施設 …