大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「心」じゃなくって、「耳」で聞くのだよ。

   

こんなことを書くと、また誤解されそうですが・・・

音楽ファンや愛好家はともかく、
送り手を目指す人は、

「なんかカッコいい」や、
「なんとなく好き」を
「なんか」や「なんとなく」のまま放置していてはダメなんです。

自分も、その「なんか」をつくり出したい。
「なんとなく」を醸し出したい。

でも、その「なんか」を「なんとなく」真似すると、
単なる「なんちゃって」に陥ります。

いや、9割が、「なんちゃって」になっちゃってて、
その「なんちゃって」で満足しちゃう。

で、いつまでも、「なーんか」な演奏で終わっちゃう。

 

ものすごく極論になりますが。

演奏のよさやカッコよさは、9割が数値化できると考えています。

例えば、「なんかグルーヴがカッコいい」も、
セント単位で見た場合、
クリックに対して、どの位置に、
ビートが来ているかで、
グルーヴィーと感じる、そうでもない、がある。

「ニュアンスがなんとなく気持ちいい」なら、
ピッチが1音の中でどんな感じでゆれているとか、
声の周波数帯がどの辺が出ているとか、
息と声のブレンド具合が何パーセントくらいかとか・・・

ことばの発音でも、
子音の長さはどのくらいかとか、
母音の周波数はどうかとか。

いや。

そんな風に、いい歌や音楽を分析する人はいません。
というか、その数字が明確になったところで、
選ぶのは人間の感性、センスですから、
数字が整えばいいということではもちろんない。

ここで言いたいのは、

だから、マインド論や雰囲気論だけで、
プレイしていたのでは、
いつまでたっても「なんちゃって」から、
脱することはできないのではないか、ということです。

そのくらい、「微差」がものを言う。

「なんとなく」「なんか」を、明確に表現できるかどうか。

自分自身の「なんとなく」「なんか」を
かもし出せるかどうか。

 

ただ、「心をこめて」「雰囲気出して」「熱くなって」
歌っているだけでは、
ダメなんだよなぁ、ということです。

時には、

「心」ではなくて、「耳」で聞く。
冷静に音楽と向き合う。
徹底的に分析する。
こだわる。

それこそが、送り手のあり方ではないか。

感情を揺さぶる音楽は、
その先に生まれるのです。

◆6日間であたなの声と歌を劇的に変える【MTL ヴォイス&ヴォーカル レッスン12】第9期のお申込み受付中。
◆ワンランク上を目指すシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”

 - B面Blog, The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

人前に立つ前の「MUST DO!」〜ビジュアル・チェック編〜

昨日のブログ、人前に立つ前の「MUST DO!」〜ムービー/チェック編〜の続編で …

【MTL 配信Live 2020終了いたしました!】

ご試聴いただいたみなさん、ありがとうございました! MPCのみなさんの渾身のパフ …

『やらなきゃいけないとわかっていても、 なかなか続けられないことを、続けるヒント』

「練習時間、なかなか取れないんですよね〜」 「こういうのって、どこで練習したらい …

ほんっとに「一期一会」

一期一会。 若かりし頃はあまりピンとこないことばでしたが、 年を重ね、世界を巡り …

「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」

「声くださ〜い」   音楽の現場に長くいるので、 この「声ください」と …

『「頭の中が真っ白になる時」チェックリスト』

人前に立ってパフォーマンスをしたり、話をしたりする人で、 「頭の中真っ白現象」を …

リズムをカラダで感じるための初歩練習~Singer’s Tips#28~

音楽にあわせて足踏みをする。 手を叩く。 小さなこどもが音楽教室に入って、 一番 …

鏡を見ない!?

何年か前、女優の黒木瞳さんが、 その美しさの秘訣を聞かれて、 家では鏡を見ない、 …

「で?私、何したらいいんですか?」

「初回はカウンセリングをします」と言うと、 いわゆる「体験レッスン」をご希望の方 …

「落としどころ」か?「限界突破」か?

完璧主義というほどではないですが、私はなにかと採点が辛いようで、 生徒やクライア …