大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人には、人の「道筋」がある。

   

学生時代、得意だった科目に『論理学』があります。
一般教養の範囲ですし、
正直、どんなことを学んだのかはっきりは覚えていませんが、

AはBである。BはCである。従ってAはCである。

・・・的な学問だったような記憶がうっすら。

みんなは頭を抱えていましたが、
論理を積み上げていくことは、
私自身、こどもの頃から父に自然に訓練されていたようで、
なにが難しいのかわからないうちに、
1年間が終わりました。

論理思考が得意だったおかげで、
得をしたことも、もちろんあります。

しかし、この「論理思考癖」のおかげなのか、
それとも、単にあんまり頭がよろしくないからなのか、

私は柔軟な発想で、
道筋をショートカットしていくのが、
非常に苦手な人間です。

Aをするには、Bが必要で、
Bを得るには、Cが不可欠で、
Cを習得するには、Dが必須で。。。

一度そうやって、道筋を組み立てると、
もういきなり、
ゼロベースのDに取り組むことからはじめてしまう。

たとえば、

業界の人たちに、シンガーとして、
アーティストとして認められるには、
クオリティの高い宣材としての、
デモ音源が必要で、

デモ音源をつくるには、
カラオケと録音できる環境が不可欠で、

ならば、バイトして、
機材をそろえて、
アレンジと打ち込みとレコーディングを学ばなくちゃ・・・
となる。

今でこそ、DTMが当たり前の時代ですが、
時はアナログ。
同世代で、そこまで手を出している女子は、
私のまわりには、まぁ、いませんでした。

一見、ガッツがあって、すごそうですが、
これ、馬鹿みたいに時間がかかる。
ものすごいエネルギーがいる。
なんかねー。スポ根です。泥臭い。

ここで、ちょっと頭を使えば、
機材を持ってて、
アレンジも得意な人に、
「デモテープつくりたいんです!」
ってお願いすればいっか。

となるし、

なんなら、もっとショートカットして、
いきなりレコード会社のディレクターでも、
事務所のエラい人でも、
誰か有力者と友だちになって、
その人にデモとかつくってもらったら一石二鳥じゃな〜い。

となって、
まぁ、そう簡単にはいかないでしょうが、
これが成功すれば、こんな近道はありません。

片や一所懸命「打ち込み」の勉強をしているうちに、
もう一方はさっさとデビューの準備、
なーんて可能性だって、十分あるわけです。
いや、実際にありましたね。

しかしです。

人には、人の「道筋」というのがある。

自分が正しいと感じることしか、
人は一所懸命やれない以上、
私がそんな「しなやか組」のマネをしてみたところで、
うまくいった可能性はゼロ以下です。

自分の論理。
自分の思考の秩序に従う。
それしかできないし、それが正しいのです。

振り返れば、
寄り道に、寄り道を重ねた人生ですが、

見よう見まねでアレンジと打ち込みに挑戦したことで、
音源を聞いたときに、
たくさんの情報を拾えるようになりました。

その稚拙なアレンジのデモテープがあったおかげで、
たくさんのミュージシャンが、
「しょーがねーな」とばかり、
私の音楽作りを手伝ってくれるようになりました。

たくさんのミュージシャンと制作したおかげで、
業界の人脈が一気に広がりました。

どんな「寄り道」も、
すべて自分にとって意味のある「寄り道」だったと思えます。


アナログの辞書と同じですね。

目的の答えを一発検索で見つけられる電子辞書、
ネットの辞書は、実に効率的で、
時間も労力も圧倒的に短縮してくれますが、

アナログの辞書なら、
ページをパラパラとめくるうちに、
探していた答えとは全然違う、
思いもかけない素晴らしいことばに出会ったりする。

そのことばが、自分の人生を変えたりする。

自分の論理をつらぬくことこそが道を切り開く鍵。

近道はないんですね。
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