大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ほんっとに「一期一会」

   

一期一会。

若かりし頃はあまりピンとこないことばでしたが、
年を重ね、世界を巡り、
さまざまな出会いと別れを繰り返して、
ほんっとに身に染みるようになりました。

「また会える」と思うんですよね。
人生がまだまだ続くと信じている頃は。

訪れて気に入った場所に「また来よう」と思う。
けど、ほとんどがそれっきり。

日本に住む誰かなら、
ちょっと勇気を出せばどこかで再会を果たせるかも知れない。

しかし、海外で出会った人たちに再会するのは、
途絶えることなく連絡を取り合っているか、
よほどの幸運に恵まれるか、
猛烈なエネルギーを使わなければ無理です。

仕事の現場でも同じです。

音楽業界のお仕事は、
「はじめまして」の連続です。

スタジオも、サポートも、セッションも、ライブも、
メンバーも違えばスタッフも違う。
ライブやコンサートなら、
もちろん来てくれるお客さんも違います。

恒例のツアーやイベントが終わって、
「また来年ね」と気楽に別れて、
それっきり会っていない人がどれだけいるか。

人や仕事を大切にするって、
たとえそのときが最後となっても、
悔いを残さないように、

心を尽くして語り、
心を尽くして仕事をする、

それ以外にないのです。

コロナの影響で、
いきなり中止になってしまったイベントや
いきなり打ち切りになってしまった育成のお仕事がありました。

「まだまだこれからよ!みんな、がんばって練習するのよ!」
と、がっつりハッパをかけて、
「じゃ、また再来週ね。」と別れた若者たち。

中には、2年、3年とレッスンを見てきた、
ティーンエイジャーたちもいました。

「お休み」でも「延期」でもなく、
「おしまい」です。

エンタメ業界全体がどれだけ大変な状況かを考えれば、
致し方ないこととはいえ、
スタッフさんたちも、
本当に苦渋の選択だったこと、想像に難くありません。

あのとき私は、
彼らと、彼女たちと、どんな顔で別れたか。

彼女たちひとりひとりに、
私はどんなことばをかけたのだったか。

私が伝えてきたことは、
どんな風に彼らの胸に残るのだろうか。

いつかどこかで再会することがあっても、
それは、すっかり成長した、別の彼たち。彼女たち。

二度と共有できない時間を思うほどに、
一期一会の大切さを心に、
カラダに刻みつけ、
日々精進を重ねようと誓うのです。

みんな、元気でがんばるんだよ〜〜。

 

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