「ウソ」と「おしゃれ」と「身だしなみ」
「俺って正直だから、ごめんね。」と言い訳しながら、
言いたいこと言い放題という人に、時折、出会います。
「正直」であるということは
「デリカシーがない」ということの免罪符にはなりません。
言いたいことをなんでもかんでも歯に衣着せず言い放てば、
自分はすっきりするでしょうが。
言われる方はたまったものではありません。
伝えるべきことなら、
言い方をくふうすべきだし、
言わなくていいことは、言わなくてよろしい。
自由と野放図は違うのです。
さて。
自分自身を少しでもよく見せたいという気持ちは、
多かれ少なかれどんな人にでもあるでしょう。
お化粧をするのも、
スタイルがよく見える服を着るのも、
白髪を染めるのも、
少しでも身長を高く見せたくてヒールやブーツを履くのも、
つけまつげやネイルをするのも、
気になるお年頃の男子なら、帽子やカツラをかぶったりするのも、
ぜ〜んぶ「おしゃれ」。
おしゃれすることで、
自分に自信が持てるなら、
そして、少しでも
人にいい印象を与えられるのなら、
どんどん取り入れたいものです。
しかし、
本来の自分を隠すのは「ウソだ」と忌み嫌ったり、
物笑いの種にしたりする人がいます。
確かに、
自分以外の誰かの写真をサムネイルにつかったり、
無関係な経歴を履歴書に載せたりするのは、
「ウソ」でしょう。
アプリをつかって、
本来の顔や声とは似ても似つかぬものにするのも「ウソ」
しかし、おしゃれは、
クジャクが羽を広げるのと同じ。
見せたい自分を演出する行為です。
人間にとっても、
おしゃれは十分自然な行為だと思うわけです。
もちろん、「おしゃれなんか」と言うのも自由。
しかし、そんな人だって、
爪も髪も切るでしょう。
清潔な服を身につけたり、
お風呂に入ったりもするでしょう。
どれだけそれが、
動物として「不自然」な行為でも、
身だしなみは「ウソ」ではありません。
最低限の身だしなみは、
これまた、人という動物に組み込まれた、
自然な行為のひとつ。
いくら「自然派」と言ったって、
動物のように、
お風呂も入らない、歯も磨かない
体毛も爪も伸び放題という人は、
一般社会では暮らせない。
自由と野放図は違うのです。
人それぞれ、線を引いているポイントが微妙に違うだけ。
音楽だって、
「なんでもいいから音を出していりゃあ楽しい」という野性派、
「とりあえず自分のために、きちんと音楽したい」という身だしなみ派、
「カッコよく演奏して、人に評価されたい」というおしゃれ派・・・いろいろです。
音楽ソフトで音をエディットするのは、
考えようによってはグレーゾーンですが、
今さら、それを「ウソだ」という頭のかたい人もいません。
むしろ、「おしゃれ領域」と考えられることが多いでしょう。
とはいえ、赤の他人の声をあたかも自分が歌ったかのように勝手に流用したり、
他人の曲や詞をまるっといただいちゃって、
「オリジナル」と言い放つのは、やっぱりウソ。
テクノロジーの発達と共に、
この線引きがどんどん曖昧になっている昨今ですが、
最後に線引きをするのは自分自身。
線引きの責任を取るのも自分自身。
いつだって試されるのは「自分の基準」です。
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