「限界ギリギリの定番曲」をいきなり歌う。
練習はルーティンからはじめる、というのは、
どんなスポーツでもおなじではないでしょうか。
カラダのコンディションは、
毎日、いや、一瞬一瞬違うので、
自分の状態を把握するためにも、
微差に加えるためにも、
ルーティンワークは必要不可欠。
歌の練習でもおなじです。
ただね、このルーティンワーク、
あーあーあーあーあ(ドレミレド−)と、
定番中の定番をやるのもいいんですが、
それだと、中上級以上のレベルの人には、
バロメーターとして、いかにも弱い。
ウォーミングアップ目的ならともかく、
真剣な練習に使うには、
物足りないし、第一退屈です。
そこで、声の立ち上がりが不安で、
やっぱり定番のボイトレをやりたい、という人以外は、
いきなりバキッと、曲を歌っちゃうというのが、オススメです。
誰にでも、これを歌うと自分の声の調子がわかるというくらい、
毎回必ず歌う曲というのがあるでしょう。
そんな曲たちをプレイリストにいれておく。
そして、いきなり歌い出す。
あ、もちろん、
ノドの弱い方や、立ち上がりの悪い方は、
いきなり、乱暴に歌っちゃダメですよ。
でもね、例えば、起き抜けに歌うと、
朝のコンディションのひどさというのが、
もう、手に取るようにわかる。
音域が狭い、
呼吸が浅い、
ピッチが当たらない、
ガラガラしている、
音量が出ない、などなど。
で、だんだんと歌っているうちに、
霧が晴れるように、
そんな不具合がひとつひとつ、
解消されていきます。
ウォーミングアップ段階では、
1曲にこだわっても精度があがるわけもないんで、
ずるーっと10曲くらい歌って、
コンディションの変化を見ます。
午後など、すでに声が立ち上がっている状態なら、
いきなりバキッと、
自分の限界ギリギリぐらいの技術を要求される歌を選んで歌う。
自分の最高音、最低音が出てくるような曲、
難解なアドリブが出てくる曲、
声のいろんな表現が出てくる曲、
思いきりダイナミクスが広い曲・・・。
そんな限界ギリギリの、ハードルの高い曲を、
練習の定番として必ず歌う。
これ、めちゃくちゃよいバロメーターになります。
できたはずのことができなかったり、
出たはずの音が出なかったり、
なんか、イケてない歌になったり、
あれ〜?
おっかしいなぁ。
こんなはずじゃないよなぁ。
・・・なんてことが出てきたら、
フォームが乱れている証拠。
そこを集中的に練習したり、
基本を思い出して、ゆっくり歌ってみたりすることで、
ふっと、よかったときの状態が戻ってきたりするものです。
反対に、何年も歌い続けることで、
苦手だったことが、
突然、何の苦もなくできるようになることもあります。
ちゃんとつきあってあげれば、
カラダはちゃんと応えてくれるもの。
不調をいちいち年のせいにするのは、
もうちょっと後にしようと思います。
ちなみに、私の定番練習曲は、
チャカのアルバム”What Cha Gonna Do For Me?”
Heartのアルバム”Bad Animals”。
いきなり上のGとかAとか出てきますから、
朝っぱらから歌うとエラいことになりますが、
バキッ歌えた時は、
今日はもう練習いいか、って気分にさせてくれます。
あなたの定番練習曲はなんですか?
◆さらにディープに学べるメルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。 https://bit.ly/3ilnz46
関連記事
-
選ばれるミュージシャンであるための3つの資質
長年、音楽業界で優れたミュージシャンたちと たくさんのお仕事をさせてもらってきて …
-
人間がカラダをつかってやることの基礎って、すべて同じなんだ。
うん十年ぶりにスキーというものに出かけてきました。 ぶっちゃけ、学生時代に友だち …
-
「歌がうまい」って、なんなのよっ!?
歌なんか、習うもんじゃない。 ウンザリするほど聞いたことばです。 正直、私もずっ …
-
「バンド、やりたいんですけど・・・」
「バンドやりたいんですけど・・・」 学生から、そんな相談を、よく受けました。 え …
-
「正しく気づけない」から上達しないのだ
「神は細部に宿る」と言われます。 細部の大切さは誰もがわかっているはずなのに、 …
-
「他者基準」で自分をジャッジしない。
才能あふれる若者たちを教える機会に恵まれています。 レッスンのたびにワクワクした …
-
プロフェッショナルの歌は、「リズム」が違う!
プロフェッショナルと、一般の人の歌の、何が違うと言われたら、筆頭にあげるのは、間 …
-
鍵盤楽器を買おう!
ボーカリストで、楽器をほとんど弾けないという人は多いと思います。 楽器が弾けない …
-
成長する人。
成長する人は、心の素直な人が多い。 なんでも無反省に、 他人の言うことを聞けばい …
-
ゆっくりやってもできないことは、速くやってもダメ
そんなの当たり前でしょ?と言われそうなタイトルですが、 実は、この当たり前を知ら …
- PREV
- あぁ、あこがれの「ビッチ感」
- NEXT
- 音楽を仕事にできる人