大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ヴォーカリストのための「練習の3つのコツ」

   

プライベートレッスンでも、MTL12でも、そして音大でも、

クライアントやアーティスト、学生たちに、
歌の上達のコツとして、一貫して伝えていることは、3つだけです。

 

あちこちで、繰り返し伝えていることですが、
今日は、こちらで改めて、解説つきでおさらいしておきたいと思います。

 

1.いろんな要素をダンゴにして考えない。

歌の要素には、メロディ、リズム、そして歌詞があります。

ひとつひとつ、バラバラにやってもうまくできないなら、
一緒にやって、うまくできるわけはありません。

間違ったものは、いくつ集めても、やっぱり間違いなのです。

メロディはメロディ、リズムはリズム、歌詞は歌詞。

ひとつずつ、バラバラに練習しましょう。

「そんなものは歌じゃない」「楽しくない」と感じるでしょうか?

こういうマニアックな練習に楽しさが見つけられるようになると、
ぐっと上達するものです。

 

2.ゆっくりやってもできないことは、速くやったらなおさらできない。

フレーズが速くて歌えない。
ラップなどでことばがカミカミになる。
音飛びが難しくて、外れてしまう。。。etc.

そんな風に言う人に限って、
そのままのテンポで、ムキになって、何度も練習しようとします。

ところが、「じゃ、ちょっとゆっくりやってみよう」と、
テンポをがっつり下げて、
アカペラで歌わせてみても、実は、カミカミのシャバラバ。

リズムがところどころ突っ込んだり、
そもそもメロがわかってなかったり、
ことばのカツゼツそのものが悪かったり・・・

 

ゆっくりやってもできないことは、
速くやったらなおさらできないのです。

テンポを下げて、ゆっくり、練習しましょう。

大事なことは一定のテンポで歌えるようになること。
「できないから、ところどころ、テンポがゆっくりになってしまう」のではダメです。

 

一定のテンポで、つかえずに演奏できるテンポが、
今の自分の適性テンポと心得て、
その適性テンポを上げられるように練習すべきです。

 

3.理解できなければ、どんなに練習しても精度はあがらない。

自分が歌おうとしているのは、なんの音なのか。
オケやコードに対して、どんなサウンドなのか。

どんなリズムを歌おうとしているのか。
音のひとつひとつを、どんなハマリ、どんなビートで歌うのか。

音の長さはどうなのか。

グルーヴやダイナミクスはどうなのか。

ことばの意味はどうなのか。
どんな思いで綴られているのか。
頭で考えなくても、それらを的確に感じ取れて、
「わかる」なら、それが最高です。

しかし、

なにがなんだかわかんないけど、とにかく難しい。
なにやってんのかさっぱりわかんない。

そんな、腑に落ちない状態のまま、
やみくもに、とりあえず練習しても、精度はあがりません。

 

理解できるまで解析、分析すること。

遠回りに見えて、実は、それこそが最短の道のりであり、
最高の結果を出せる方法なのです。

 

 

いかがでしょうか?

練習の目的は、

ピッチが・・・とか、
リズムが・・・とか、
カツゼツが・・・とか、

そういう「雑念」から自由になって、

自分の思いやメッセージ、
そして、聞く人も、演奏する人も心地よいサウンドを
思う存分表現できるようになること。

 

 

歌を届ける、その瞬間まで、修行は続くのです。

19501637 - man playing the piano

今夜発行(予定)のヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』では、【アドリブ上達のための完コピのヒント】をお届けします。バックナンバーも読めますので、ご興味のある方は登録してくださいね。購読はこちらから。

 - The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

「ライブ前にやらなくちゃいけないこと」なんて、なんにもない!?

「ライブ前に、絶対しなくちゃいけないことってありますか?」   そんな …

練習の結果が出ない3つの理由

「毎日練習してるんですけどね・・・」 結果の出ない人ほど、 自分がいかに練習に時 …

「なんとなく」や「しかたなく」でキーを決めない。

作曲、作詞、アレンジ、レコーディング・・・ 作品づくりにはさまざまな過程がありま …

自分のスタンダードを持つ

「プロフェッショナルは自分のスタンダードを持つべし」が私の持論です。 「スタンダ …

「500円玉大の打点」を求めて、今日も声出していこうっ。

先日、よくご一緒する、某有名ドラマーの楽器の前に座らせてもらう機会がありました。 …

歌っている自分を直視できない?

歌っているところを動画に撮る。 こんな宿題を出すことが多々あります。 自分を客観 …

「知ってる」だけで「わかった気」にならない。

「知識欲」こそが「学び」の基本。 「知りたい!」という気持ちが湧かなければ、 あ …

「そこまでやる?」がオーラになる。

「そこまでやらなくても・・・」 思わず、そんな風に言いたくなるほど、こだわりの強 …

カバー曲の歌唱にオリジナリティをプラスする3つの方法

「オリジナリティ」と「クセ」は紙一重です。   「オリジナリティあふれ …

「この歌、いいなぁ」には必ず理由がある!

「売れる曲には、必ず理由がある」 あるヒットメーカーが教えてくれたことばです。 …