大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

エネルギーのピークは本番に持っていく

      2017/04/01

「歌う当日って、どんなことを心がけたらいいですか?」
という質問をよく受けます。

 

歌うことは運動ですから、

最低、歌う3時間前に起きなさいとか、

お風呂入ったりストレッチしたりして、血行をよくしなさいとか、

歌う1時間半前くらいまでには食事を終えなさい、
消化にいい物だけを食べなさいとか、

・・・まぁ、アスリートにするような注意をするわけですが、

 

私が最も口を酸っぱくして言っているのは、

「歌いすぎるな」ということ。

 

不安なのか、
それとも、たくさん練習した方がいい結果が出る気がするのか、
とにかく直前までめいっぱいリハーサルをしたがる人が多い。

前日のリハーサルも、あまりお勧めしませんが、

学生の中には、ライブの当日にスタジオ取ってる子たちまでいます。

 

さらにありがちなのは、

会場に入って、本番前のリハーサルで、
本気で声を出してしまうこと。

会場が大きくて気持ちいいし、
モニターから自分の声がよく聞こえるし、
まわりに人がたくさんいて、テンション上がるし、

ちょっといいとこ見せたいという気持ちも手伝って、
本番さながらの勢いで歌ってしまう。。。

 

ノドの強い人ならそれもいいでしょうが、

リハでがっつり歌っちゃってるたいがいの人は、
本番で声が残念なことになりがちです。

 

一番いい声を聞かせなくちゃいけないのは本番。

 

朝から張り切りすぎたり、
リハであんまりパワーをつかっちゃうと、
肝心の本番で集中力がとぎれたり、
疲れてしまったりするものです。

 

もっと言うと、

本番で、ここ一番のオーラを出すためには、
リハーサルで、エネルギーを出しちゃダメなんです。

 

ことばや歌には魂が乗ります。

どんなに体力がある人でも、
精神力の強い人でも、

その日使える「歌のエネルギー」には、
どうやら限りがあるよう。

リハや、本番前に楽屋で盛り上がり過ぎれば、
そのエネルギーレベルはひゅ〜っと落ちてしまう。

 

 

ベテランになるほど、そのことがよくわかっていて、
リハなどでは、力を抜いて、
声の調整やモニター調整をするくらいにとどめているもの。

 

エネルギーのピークは本番に持っていく。
慣れるまでは少々コツがいりますが、
心がけるだけでずいぶん結果が変わってくるはずですよ。

6409951 - man conducting at a rehearsal

コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』
購読はこちらから。

 - Live! Live! Live!, The プロフェッショナル

  関連記事

「自分の名前」と、今一度向き合う。

作詞者は曲のタイトルを。 編集者は、本のタイトルを。 起業家は会社名を。 そして …

「選ばれる基準」

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とは、 日本の最高額紙幣に印刷され …

本気なら、「はい」か「Yes!」か「喜んで」!

よく語られるビジネスの教えのひとつに、 「顧客からの要望への答えは、&#8221 …

「自分基準」を育てる。~Singer’s Tips #3~

「本当に実力がある人」って、 今、自分が何をしているか、 確実に理解しているもの …

いつも初演のつもりで準備して、 初舞台のように、パフォーマンスすること

「いや〜、感動しました!!次も楽しみにしています!」   オーディエン …

「知的財産」に敏感になる

情報には一次情報と二次情報があるといわれています。   一次情報とは、 …

まず、自分の出音(でおと)をちゃんとせい。

トレーナーズ・メソッド、リズム編のテキスト制作中にて、 古今東西のドラマーの名演 …

うまいからプロになれるのか?プロになるからうまくなるのか?

うまいからプロになれるのか? プロになるからうまくなるのか? ニワトリとタマゴの …

「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。

昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …

歌の魅力。〜SInger’s Tips#7〜

「今の声の初々しい魅力はそのままに、 もっと声が抜けるように、パワーをつけてくだ …