大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「500円玉大の打点」を求めて、今日も声出していこうっ。

   

先日、よくご一緒する、某有名ドラマーの楽器の前に座らせてもらう機会がありました。
 

まぁ、以前から、薄々気がついてはいたのですが、
今回、彼のセットをまじまじと見て確信したこと。

 

あのね。
スネアのヘッドがめっちゃキレイなんです。
 

高校時代からスタジオというものに出入りして、
それなりにいろんなドラムセットを見て来ましたが、

そして、プロといわれる方のドラムも、
それなりに拝見してきましたが、

その方のスネアのヘッドのキレイさ、ピカイチです。

 

どうキレイなのかというと、
打点がめちゃくちゃ狭い。

そうですね、500円玉大くらいしか、汚れてない、
すり減っていないのです。

つまり、どういうことかと言うと、
 

どんなに速い曲でも、
どんなに音量の大きな曲でも、
常に、的確に、その500円玉の中をヒットしているということ。
 

だから音色が均一で、動きにも全く無駄がない。
余計なブレが出ないから、音がスコンと抜けてくる。

名人だからこそ、できる技です。

 

ヴォーカリストたちに常日頃、
 
「100回歌っても、100回同じクオリティの声を出せるのがプロ。」
と言っています。
 

もちろん理想論です。
実際にはその確率はもっとずっと低いでしょう。
 

しかし、プロと呼ばれるなら、
限りなくこの確率を100%に近づける努力は続けたい。
 

さっきはいい声出てたのに、
ごはん食べたら急に声が曇っちゃった。
 
昨日はパキンと高音抜けたのに、
今日は全然出ない。。。
 
そんな人に安心して仕事をまかせられません。

 

まして、この確率が低ければ、
自分自身、歌う事自体が不安この上ないでしょう。
 
出るのか出ないのか、出してみないとわからない。
不安定で、行き当たりばったりの声しか出ない。。。
 
そんな不安定さをなくすには、
声の打点を定めて、常に同じクオリティの声を出す練習は不可欠です。

 

 

同じ音を同じクオリティで何度も出す、という地味な練習。
 
自分の声が響くポイントを変えないように、
声が揺れないように、
音色が変わらないように、
ピッチがよれないように、
 
たったひとつの、「500円玉大の打点」を求めて、
何度も声を出してみる。

 

 

そんな地味で、オタッキーな練習を、
飽きず、腐らず、あきらめず続けた人だけが、
名人と呼ばれるようになるのですね。

43842126 - young cheerful girl behind drums on a rehearsal

29日発行(予定)のヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』では、【100回同じクオリティの声を出すコツ】をお届けします。バックナンバーも読めますので、ご興味のある方は登録してくださいね。購読はこちらから。

 

 

 - The プロフェッショナル

  関連記事

説得力のある人は、エネルギー値が高いのだ。

聞く人の心にどかんと飛び込む「説得力あるパフォーマンス」。 はじめてギターを抱え …

ゴールを鮮明に描く。

「がんばっているのに、どうも成果があがらない」、 「なんかうまくいかない」という …

自分自身こそが「最も手強いオーディエンス」だ/『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』

「観客のことは意識しないことにしている。 クリエイトするときはいつもそうだ。 ま …

歌詞カードを丸暗記するより大切なこと。

本番直前になると、こういうブログを書いていることを、心の底から後悔します。 &n …

「なんとなく」や「しかたなく」でキーを決めない。

作曲、作詞、アレンジ、レコーディング・・・ 作品づくりにはさまざまな過程がありま …

「いい音」出したいっ!

いいプレイヤーか否かは、1音聴いただけでわかる。 そんな風に言う人がいます。 そ …

「この辺でちゃんと仕事に就こうかなと思ってるんですけど・・・」

「MISUMIさん、俺、この辺でちゃんと仕事に就こうかなと思ってるんですけど・・ …

レッスンでは、トレーナーの「アーティスト性」は無用どころか、邪魔なんだ。

レッスンの折には、多かれ少なかれ、 生徒たちに、歌を歌って聞かせるシーンというの …

こんな人は、ボーカリストに向いている!?

仕事の向き不向きは、その人の体格や、 持っているスキルだけで決まるものではありま …

一生OKの出ない地獄

「あ〜、今のとこ、ちょっと音取れてないみたいなんで、 もう1回お願いします。」 …