「才能の超回復」を繰り返して、人は成長するのである。
「超回復」ということばを聞いたことがあるでしょうか?
筋トレで傷ついた筋肉は、
休養と栄養を与えることで、24〜48時間で修復されます。
このとき修復される筋肉はトレーニング前より、
筋肉量が増加すると言われています。
この現象を超回復と呼ぶわけです。
この超回復、筋トレさえすれば誰もが得られるというわけではありません。
「筋トレで筋肉を傷付ける」には、
自分をある程度限界まで追い込まないとダメ。
筋肉痛が起きるくらいの強度のトレーニングをしなければ、
そもそも筋肉が傷ついていないので、超回復も起きません。
軽いトレーニングを楽〜にこなしているだけでは筋肉は成長しないわけです。
さて。
プロになっても伸び続ける人と、伸び悩む人というのがいます。
一般の人が、ひとつの仕事を何年もしていれば、
どんどんノウハウやスキルがついて、
その仕事のプロフェッショナルになっていくように、
ミュージシャンだって、
毎日音楽をやってごはんを食べているわけですから、
当然、年々経験を積んで、
ノウハウやスキルが身について、
それなりに実力が上がっていくのは当たり前のことです。
しかし、ポイントは、
「長年やっていれば、誰でも実力がつく」というところ。
10年経てば10年分、
20年経てば20年分、
キャリアや実力が積み重なっていくのは、みな同じ。
その観点から行けば、
同世代のミュージシャンは、
せ〜ので、全員同じように成長をしていくはず、
と言うことになります。
ところが、実は、5年、10年、20年と
キャリアを積むうちに、明らかに、
それぞれの成長に、どんどん差がついてきます。
最初は目立たなかった人が、気がついたらぐっと実力的に浮上していたり、
反対に、そこそこ顔を売っていたプレイヤーが、
目立たない存在になっていることもあります。
成長は超回復のたまものと考えるなら、伸び悩む原因は2つにひとつ。
トレーニング不足で「そもそも筋肉痛が起きていないか」、それとも、
「必要なだけの休養と栄養が取れていないか」のどちらかです。
では、「そもそも筋肉痛が起きていない」とは、
どんなパターンを言うのでしょう。
最初は必死にならないとできなかった仕事に、次第に慣れてくる。
譜面を読むことも、曲を覚えることも、
スタジオでヘッドフォンをかぶることも、
クリック通りに演奏することも、
モニターの調整も、
パフォーマンスの見せ方も、
ある程度自分の「型」ができあがって、
そこそこのグレードで演奏できるようになると、一安心。
要求されている最低限のお仕事さえすれば、
現場で叱られることもなく、
ちゃんと約束のギャラを支払ってもらえます。
長年、同じ仕事をしていると、誰にでも起きることですが、
「こんなもんでいいか」という意識が、多かれ少なかれ働いて、
身を切られるような苦しさを感じることも、
ほとんどなくなっていきます。
これでは、慣れきったトレーニングを
毎日ルーティンでこなしているのと同じ。
「超回復」は期待できません。
もうひとつは、「必要なだけの休養と栄養が取れていない」、
ワーカホリックパターン。
自分を限界まで追い込んだり、その状態を克服したりすると、
人間の脳はご褒美に脳内快楽物質をくれて、
「いい気分」にしてくれます。
次々と新しいことに挑戦しては、
それを克服していくことで、周囲にも認められる。
自分で自分を誉めたくなることもしばしば。
やがて、その脳内快楽物質に中毒してしまうと、
どんどん自分を追い込むようになります。
手帳が埋まっていないことで、不安や罪悪感を感じ、
ガツガツとむしゃらな行動ばかりが先行するようになります。
中毒症状というのは、
ニコチンだろうが、アルコールだろうが、麻薬だろうが、
たとえ、脳内物質だろうが、同じです。
「やめられなくなる」のです。
しかし、冒頭でも紹介したように、
超回復をするためには、「休養と栄養」が不可欠。
現役スポーツ選手でも、
トレーニング中に出る脳内物質に中毒して、
カラダを壊してしまう人が後を絶たないのと同じ。
休養と栄養(=学習)なしには、成長どころか、
回復すらできないのです。
この「自分を追い込む」と「休養と栄養を取る」をバランスよく
取り入れていくのは、実に難しいもの。
ほとんどの人がどちらかに傾きがちです。
しかし、人間は変化するのが前提ですから、
成長しないものは、後退、衰弱していくだけです。
自分に甘んじず、
しかし時には自分を甘やかして、
どんどん成長していきたいものです。
コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』
購読はこちらから。
関連記事
-
-
『ライブ前に自分に問うべき10のことば』
ライブ直前、自分のブログを読み返していると、 なんだか胃が痛いような気持ちになり …
-
-
人は生涯に、何曲、覚えられるのか?
優れた作曲家、アレンジャー、プレイヤー、 そして、ヴォーカリストの多くが、 びっ …
-
-
ライブの選曲、どうします?
3月2日のMaybe’sライブのリハーサルがはじまりました。 基本2 …
-
-
準備せよ。そして待て。
道が開けないとき。 ツキがやってこないと感じるとき。 過小評価されていると思える …
-
-
「立ち上がり」が悪いから歌がシャキッとしないのだ
音の「立ち上がり」の大切さに気づいていないばかりに、 イマイチ、歌がシャキッとし …
-
-
コツコツ積み重ねる微差が、逆転勝ちを演出する
自分の生まれは選べません。 生まれたときから、才能やルックスや音楽環境に恵まれて …
-
-
人前に立つ前の「MUST DO!」〜ビジュアル・チェック編〜
昨日のブログ、人前に立つ前の「MUST DO!」〜ムービー/チェック編〜の続編で …
-
-
エネルギーのピークは本番に持っていく
「歌う当日って、どんなことを心がけたらいいですか?」 という質問をよく受けます。 …
-
-
「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。
昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …
-
-
ちゃんと鳴らせ。
以前、お世話になった大洋音楽出版の水上喜由さんが、 「スティーブン・スティルスが …
- PREV
- 最後に「正解」を決めるのは誰だ?
- NEXT
- 「500円玉大の打点」を求めて、今日も声出していこうっ。

