「いつものあれ」でお願いしますっ!
ずいぶん前のこと。
たまたまつけたテレビに、
ホイットニー・ヒューストンが出ていて、
大好きな”Greatest Love Of All”を歌うと言います。
何度となく聞いてきた、あのイントロ。
そして私自身、何度となく歌ってきた、あのメロディ・・・。
しかし、ホイットニーが歌い出した次の瞬間、
あまりのメロディの崩されっぷりに、
ガクッときました。
アドリブ、という範囲ではありません。
まったく別の曲です。
ホイットニーが大好きな人なら、
彼女の歌のうまさや、
アドリブの素晴らしさに感動するのでしょうが、
曲のファンとしては、ただがっくり。
「ポップスを歌う人は、これじゃダメよね」
と、ガッカリついでに思ったものです。
こんなこともありました。
往年のロックスターのライブに行ったときのことです。
アンコールで「ありがとう!」と言いながら、
ステージに登場した彼は、
「それじゃ、聞いてください!」と、
彼の出世作とも言うべき大ヒット曲の名前をコールしたのです。
もちろん、観客は大喜び。
おぉ〜〜と盛り上がりました。
しかしです。
次の瞬間、自分の耳を疑いました。
アレンジが、全然違うんです。
妙に、今風。
ごりごりした曲だったのに、なんか跳ねちゃってる。
いやーん。。。
会場全体のテンションも、明らかに下がりました。
アドリブが前提の音楽や、
既成の曲をどう新鮮に演奏するかが勝負の、
ライブを聞きに行っているわけではありません。
聞きたいのは「いつものあれ」です。
耳にタコができるほど聞いた、あのイントロ。
「きたーっ!」とこぶしがあがる、あのフレーズ。
PVで歌い踊る彼らと一緒に、思わずのけぞる、あのシャウト。
曲がヒットするのって、
単にメロディがいいとか、
歌詞がいいとか、
歌い手が魅力的だとか、
そういうことだけじゃないんですよね。
イントロも、楽器の音色も、
アドリブも、コーラスも、
ぜ〜んぶ、ワンセット。
売れるものって、
そのくらい、たくさんの奇跡の集大成だと思うのです。
そして、お客さんは、
その、奇跡の瞬間を目撃したくて会場に足を運ぶ。
もちろん、同じことばかりやっていては、
飽きられてしまうのでは、
という怖さもあるでしょう。
でも、一流の演奏って、何度聞いても飽きない。
それは、演奏している側が、
いつだって、新鮮な気持ちで演奏しているからなのではないか。
だから、受け取る側も、
最初に聞いた時の感動を、
何度でも感じられるのではないか。
結局、飽きちゃうのは、
聞く側じゃなくって、演奏している側なんですよね。
以前、山下達郎さんがコンサートで
語ったことばに感動してブログを書きました。
「何十年もやってるから、自分が飽きちゃって、
わざとヒット曲1曲もやらないなんて人もいるけど、
一生に一回きりしか自分のコンサートを見ないかも知れない人がたくさんいるのに、
ヒット曲が1曲もないコンサートを、僕はできない」
うーん。何度反芻しても、素晴らしいおことばです。
これこそが、一流のアチチュードです。
1オーディエンスとして音楽を聴く感動を忘れないこと。
それこそが、新鮮な音楽を届け続けるために、
一番必要なことなんじゃないか。
一所懸命やるほどに忘れがちな、大切なことです。
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