大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「育てる」んじゃない。「育つ」んだ。

   

「あいつは俺の弟子だったから。あいつを育てたのは俺だよ。」

有名人や、一流の人たちのことを、
そんな風に吹聴している人に出会うたびに、
なんだか、ちょっと残念な気持ちになります。

人がひとり「育つ」というのは、
そんな簡単なことではないと思えるからです。

「師」という立場に立つ人は、
もしかしたら、その「弟子」に、
技術や知識を教えたり、
礼儀作法やコミュニケーションスキルを教えるかもしれない。
資格を与えたり、ブランドづくりに一役買ったりするかもしれない。
人に紹介したり、チャンスをあげたりするかもしれない。

しかしね。

どう「育つ」かは、本人次第なんです。

どんなに有益な情報や、
素晴らしいコネクションやチャンスも、

与えられた側が、
その価値に気付かず、
放置したり、ないがしろにしたりして、
右から左に流してしまえば、
その人はなんの成長もできません。

多くの場合、
「弟子」となる人は、自分自身の目的を達成するために、
自ら「師」を選びます。

そして、自らが選んだ「師」に、
お金なり、労力なり、気持ちなり、
またはそのすべてを提供することで、
「弟子」と認めてもらうわけです。

親が子を育てることや、
農作物を育てることとは、
前提が違うんですね。

本当に力のある人は、
「師」に与えられたものだけを鵜呑みにするような、
一方通行の学習で満足しません。

与えられたことを、
自分なりに解釈し、かみ砕く。
あらゆる角度から俯瞰し、研究し、
さまざまな知識や情報を収集し、
そこから自分自身の芸風なり、
知識なりを編み上げていく。

つまり、自分で「育つ」んですね。

どんなに知識やスキルを教え込み、
愛情とエネルギーと時間を注いでも、
本人が「学ぶ」ということを選び取って、
能動的に思考し、行動しない限り、
そこにはなにも起こりません。

そんな残念な関係もたくさんありました。

だからね。
私は、勝手に生徒さんや受講生を「弟子」呼ばわりしないし、
「自分が育てた」なんて、まずもって言いません。
そう考えていないからです。

教わる側にも常に、
私がみなさんを「うまくする」ことはできない。
みなさんが、自分で「うまくなる」のだ。
と伝えています。

自らが「学ぶ」態度を持たない人は、
何を教えてもダメですし、
その態度を変えさせることは、
教える側の仕事ではありません。

そういう意味では、
自分自身をとても冷たいと感じることがありますが、
しかし、彼らが求めているのは、
「師」と「弟子」などという人間関係ではなく、
自分自身が一流の人間として成長すること。

私が与えられるものがなくなれば、
みんな去って行くでしょう。

だから私も、毎日勉強し続けます。

そんな緊張間のある人間関係こそが、
学びの場には必要なのです。

教え子たちは、どんどん成長します。
私は、その成長をただ傍らで、
「おぉおお」と、感嘆しながら、
見守っているだけ。

近頃は、教え子たちに、
さまざまなことを教わっては、
「ほほぉ」と感動することも増えてきました。

そんなよき学びの場を提供し続けられるように、
今日も、ひたすら精進です。

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, ヴォイストレーナーという仕事

  関連記事

「課題曲」は、何を基準に選ぶべきか?

学校の授業などの教材として、課題曲を決めなくちゃとなると、 さて、一体全体、何を …

未来を切り開くのは、ひらめき、学び、そして自信。

ひらめきは突然やってきます。 「あ!今、これ、やっといた方がいいわ。」 「おぉお …

言わなくていいこと。言うべきこと。

言わなくてもいいことを、 「これはあなたのためだから」と、 上から言う人がいます …

「音楽はひとりではできない」の本当の意味

サポート・コーラスのお仕事で日本全国をツアーしていた頃。 ツアー先の地方の会館に …

no image
やる気が出ないときは、やっちゃダメ!

「なんか、どうもやる気がでなくって。 これじゃいけないと思うんですけど。。。」 …

地球の裏側まで、掘って掘って掘りまくる。

「チャンスをつかむこと」や「物事が好転すること」をたとえて、 「扉が開く」と言う …

好きであることは自分への責任であり、義務である。

「好きなことをみつけて、それを一所懸命やれよ。 好きなことのない人生はつまんねー …

自分の「スタイル」を持つ

昔のミュージシャンは、ひとつのバンド、1枚のレコードを、 それはそれはこだわり抜 …

「大きい音」を扱うのって、テクニックがいることなんですぞ。

「ラウドな音楽をやっている」と言うと、 デリカシーのない、 雑な演奏をしていると …

「目」にパワーを宿す

「いい顔をしている」。 「目に力がある」。 「面構え(つらがまえ)がいい」。 & …