「育てる」んじゃない。「育つ」んだ。
「あいつは俺の弟子だったから。あいつを育てたのは俺だよ。」
有名人や、一流の人たちのことを、
そんな風に吹聴している人に出会うたびに、
なんだか、ちょっと残念な気持ちになります。
人がひとり「育つ」というのは、
そんな簡単なことではないと思えるからです。
「師」という立場に立つ人は、
もしかしたら、その「弟子」に、
技術や知識を教えたり、
礼儀作法やコミュニケーションスキルを教えるかもしれない。
資格を与えたり、ブランドづくりに一役買ったりするかもしれない。
人に紹介したり、チャンスをあげたりするかもしれない。
しかしね。
どう「育つ」かは、本人次第なんです。
どんなに有益な情報や、
素晴らしいコネクションやチャンスも、
与えられた側が、
その価値に気付かず、
放置したり、ないがしろにしたりして、
右から左に流してしまえば、
その人はなんの成長もできません。
多くの場合、
「弟子」となる人は、自分自身の目的を達成するために、
自ら「師」を選びます。
そして、自らが選んだ「師」に、
お金なり、労力なり、気持ちなり、
またはそのすべてを提供することで、
「弟子」と認めてもらうわけです。
親が子を育てることや、
農作物を育てることとは、
前提が違うんですね。
本当に力のある人は、
「師」に与えられたものだけを鵜呑みにするような、
一方通行の学習で満足しません。
与えられたことを、
自分なりに解釈し、かみ砕く。
あらゆる角度から俯瞰し、研究し、
さまざまな知識や情報を収集し、
そこから自分自身の芸風なり、
知識なりを編み上げていく。
つまり、自分で「育つ」んですね。
どんなに知識やスキルを教え込み、
愛情とエネルギーと時間を注いでも、
本人が「学ぶ」ということを選び取って、
能動的に思考し、行動しない限り、
そこにはなにも起こりません。
そんな残念な関係もたくさんありました。
だからね。
私は、勝手に生徒さんや受講生を「弟子」呼ばわりしないし、
「自分が育てた」なんて、まずもって言いません。
そう考えていないからです。
教わる側にも常に、
私がみなさんを「うまくする」ことはできない。
みなさんが、自分で「うまくなる」のだ。
と伝えています。
自らが「学ぶ」態度を持たない人は、
何を教えてもダメですし、
その態度を変えさせることは、
教える側の仕事ではありません。
そういう意味では、
自分自身をとても冷たいと感じることがありますが、
しかし、彼らが求めているのは、
「師」と「弟子」などという人間関係ではなく、
自分自身が一流の人間として成長すること。
私が与えられるものがなくなれば、
みんな去って行くでしょう。
だから私も、毎日勉強し続けます。
そんな緊張間のある人間関係こそが、
学びの場には必要なのです。
教え子たちは、どんどん成長します。
私は、その成長をただ傍らで、
「おぉおお」と、感嘆しながら、
見守っているだけ。
近頃は、教え子たちに、
さまざまなことを教わっては、
「ほほぉ」と感動することも増えてきました。
そんなよき学びの場を提供し続けられるように、
今日も、ひたすら精進です。
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