キーは、歌えりゃいいってもんじゃないんですよ。
カバー曲を歌うとき、
無条件にオリジナルのキーで歌っている人は多いはず。
私自身、学生時代のヴォイストレーニングの先生に、
「無理なく歌えるなら、
オリジナルのキーで歌うのが一番」と教わりました。
だから、オリジナルどおりのキーで歌える人の評価があがったり、
歌えないことがコンプレックスになったり、するわけです。
「オリジナルのキーで歌うのが一番」と言われるのは、
そのキーで演奏することで、
ベストなサウンドになるようにアレンジされているから。
さらには、プレイヤーたちも
オリジナルキーで演奏されているものをカバーするわけですから、
元々のキーで演奏する方が、
ボイシング的にも自然な、いい音がするから。
それは、わかる。
「シャープ系のキーがフラット系になると、
なんかサウンドが暗くなるんだよね−」
という人たちもいます。
それも、わかる。
しかし、ここで、そもそも論をお伝えすると、
そもそも、オリジナルレコーディングは、
シンガーのキーにあわせてアレンジされているはず。
なんなら曲自体、
シンガーの声や音域にあうように、つくられている。
ロックなど、ギターリフからできている曲ならば、
シンガーが、そのリフに、
自分が気持ちいいと思うメロと歌詞とを、
テキトーに乗せている場合だってあります。
だからね。
オリジナルキーで歌えないのは、
実力が足りないからだ、とか、
練習不足だろう、的なことを言うのは、
本当にやめて欲しい。
よく、バンドのメンバーに、
「こんな曲もオリジナルの高さで歌えないなんて、
練習不足だ」と言われるという若者に出会いますが、
そんなことを言うなら、
「シンガーのキーにあわせて演奏できないキミたちこそ、
練習不足だ」と言ってあげたい。
いやいやいやいや。
音域を広げる努力をしなくていい、とは言っていません。
自分自身がもっと高い声、低い声で歌いたいなら、
ちゃんと努力をした方がいい。
どんな音域でも、
カッコよく、気持ちよく歌えるような、
不断の努力を否定するものでは、全くありません。
しかし、どんな楽器にも、
ベストな音が出る高さ、というのがあります。
単に「その音が出る」というのと、
「その音を出すと、いい音がする」というのとは、
全く違うことです。
私自身、男性ヴォーカルの曲でも、
基本、キーを選ばず歌うことができますが、
キーには、常にこだわりを持っていて、
その曲の肝になるフレーズを最高にカッコよく歌うためには、
どのキーがいいのか、
何度も試行錯誤して、時間をかけて決めます。
セッションやちょっとしたライブでは、
それほどキーにこだわらない場合も多々ありますが、
決め所、特に、レコーディングでは絶対に譲りません。
私がキーにこだわるがゆえに、
結局選曲から外された曲もありました。
気持ちよくないキーで歌うぐらいなら、
歌わない方がマシです。
プレイヤーのみなさんにも、
もうちょっとそういうデリケートさ、
理解していただけると幸いなんでございます。
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