大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌っている自分を直視できない?

   

歌っているところを動画に撮る。
こんな宿題を出すことが多々あります。

自分を客観視することで、歌っている時には気付けなかったクセや、うまくいかないことの理由に気付くことができるからです。
時には知らなかった自分の魅力に気付けることもあります。

ところがね、「自分の歌っている動画を見る」ということが耐えられない、という人がたっくさんいます。
いや、動画どころか、レッスンで鏡を見ながら歌うのも無理!という人さえいる。

さすがにそれでは、レッスンの効率が上がらないので、「がんばるのよ!」と檄を飛ばすわけですが、それでも、四の五の言う人には、
「ライブやりたいんでしょ?
自分がそんなに見たくないものを、人からお金取って見せるってどうなの?」なんて、厳しいことも言ったりします。

自分を客観的にチェックして、修正、くふうを重ねることで、人は劇的に成長します。

今日レッスンのあった、某会社の社長さんもそう。

先日のレッスンでいい感じに歌が仕上がったので、「録画して送ってください」とお願いしたところ、5本の動画を送ってくれました。
連続で撮られた5本の動画で、どんどん成長していくようすが、手に取るようにわかるのです。

緊張でかっちんこっちん。目線もあちこちに行ってしまった1本目。
目線は合わせられたものの、なかなか声が前に出てこない2本目。
いい声で気持ちを乗せて歌えた3回目は、今度は感情が高ぶりすぎて、声やカラダのコントロールが乱れてしまい…。
4本目でいきなり、すぽんといい声が出て、歌の安定感もフレージングもぐっといい感じに!
5本目はちょっと声が疲れちゃって。でも疲れた分、力が抜けて。。。

こんな風に丁寧に録画して、修正して、くふうを重ねれば、どんどんうまくなることは、間違いありません。

アーティストが有名になって、忙しくなるほどに、どんどん歌もパフォーマンスも磨かれていくのはそのためです。
毎日、毎日、イヤと言うほど、自分の歌、自分のパフォーマンスと向き合います。
さらには、スタッフさんやファンからもいろんなことを言われます。
そのたびに、チェック、修正、改善。

上達の秘訣はこれしかないんです。
どんなことでも、同じですね。


■無料メルマガ『声出していこうっ!』。
ブログから踏み込んでディープなお話や、セミナーや講座、スクールなどの情報もお届けします。ご登録いただいた方全員に、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼント。バックナンバーも読めますのでぜひ。ご購読はこちらから。

 

 

 

 - MISUMIの日記&メッセージ, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, ヴォイストレーナーという仕事

  関連記事

ああ、テクノロジぃい

音楽家ってのは、(いや、ヴォイストレーナーってのもそうか。)ゴールデンウィークと …

英語の歌詞って、どうやって覚えるの?

「歌詞を覚える」というのは、ある種の習慣です。 何を当たり前と思うか、という気構 …

「どう記録するか」より、「どう記憶するか」

スマホの時代になって間もなくのこと。 こちらが、それはもう夢中で、 なかなかいい …

オーディションで、勝ち残る

アーティストやその卵たちのレッスンでは、折に触れ、ここ一番の緊張感に包まれる時期 …

「生徒に誉められよう」という想いで歌わない。

ヴォイストレーナーという仕事をはじめた時から、 常に自分に言いきかせていることは …

知識でも、思考でもない。メソッドは創造するものなんだなぁ。

どんなに知識を詰め込んでも、 あーでもない、こーでもないと考えても、 クリエイテ …

ボイトレだけじゃ歌はうまくならない? 果てしない“歌のトレーニング”を、わかりやすくしたかった。

「歌のトレーニング」イコール「ボイトレ」と思っている人があまりに多く、がっくりす …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …

ことばにするチカラ

「天才は教えるのが下手」と言われます。 だって、普通にできるから、 どうしてそれ …

記憶に残る「デキるやつら」は一体何が違ったのか?

かつて、教えていた音楽学校では、ヴォーカルの授業を 定期的にインスト科の生徒たち …