「長期記憶のゴールデンタイム」にあなたは何を記憶しますか?
「受験生といえば、まずは『でる単』」。
『でる単』、すなわち、『試験に出る英単語』は、
当時の受験英単語集の定番でした。
その本に出てくる単語をすべて覚えれば、
とりあえず大学受験用の英単語はすべてカバーされる、と言われていて、
今思えば笑えるくらい、猫も杓子もでる単、でる単、でした。
大学受験に向けての数ヶ月〜数年。
熱心な受験生たちはこの本を、それはもう舐めるように暗記したものです。
さて。
すごいのは、
正直私は、「熱心な受験生」とは言いがたい、
なんちゃって受験生ではありましたが、
それでも、なんでも、この時に、詰め込み式に頭に入れた英単語は、
今でも自分のメインの語彙として、
英語を話すときにすらすらと登場すること。
17〜18才の長期記憶力というのは、
実にものすごいのだなと、うん十年も経って思い知るのです。
『でる単』だけではありません。
洋楽が大好きだった私は、楽器の練習をしていないときは、
常に歌詞カードを片手に、レコードをかけ、一緒に歌っていました。
まだまだ、「レコード」1枚2500円の時代です。
手に入れたレコードは、それはもう、何度も何度も、
徹底的に聞き込みました。
貸しレコード屋や、図書館の貸しレコード・コーナーもよく利用して、
借りたレコードは「カセットテープ」に録音し、
歌詞カードをコピーして、それが手垢で真っ黒になるまで、
音に合わせて歌ったものです。
そんな風に、
聴覚、視覚、そして発声のための運動能力のすべてを総動員して、
ひとつのことを繰り返したわけですから、
もちろん、歌詞だって、『でる単』以上にくっきり暗記しました。
そうやって、10代〜20代にかけて記憶した歌詞に登場する英熟語や、
気の利いたフレーズ、イメージのモチーフは、
何十年経っても、鮮明に、蘇り、
会話するときはもちろん、
アドリブをするときも、
作詞の仕事をするときも、
順列組み合わせこそ違え、
自分のメインボキャブラリーとして、
変わらず、自身を支えてくれます。
もちろん、年齢を重ねても、
がんばれば、ある程度の記憶力を保つことは可能ですし、
新しい知識を学んだり、
暗記したりすることもできるでしょう。
しかし、20代半ばまでの、
「生涯使える記憶の長期格納庫」に格納された記憶ほど、
影響力やインパクトのある記憶にはなりません。
そのゴールデンタイムに、どこまで、
「生涯使える記憶の長期格納庫」を満杯にできるかどうかが、
自分自身の、一生のボキャブラリーを
左右すると言っても過言ではないでしょう。
あなたの「長期格納庫」には、何が入っていますか?
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