バンドとカラオケは全然違うっ!
カラオケ育ちの若者たちは、バンド内のコミュニケーションが実に苦手です。
スタジオでリハーサル形式の授業をしているというのに、
最初から最後まで、歌詞カードしか見ていない。
演奏が終わっても、お互いの演奏に関して、
感想や意見を言ったり、注文をつけたりという場面が、
まぁ、ほとんどない。
みんな、自分と歌詞カード。または、自分と楽器とひたすら向き合う。
「なら、カラオケでやったって一緒やろっ!」
という雰囲気なのです。
というか・・・
極論ですが、
一切お互いの音を聞いたり、コミュニケーションを取ったりしないなら、
むしろカラオケ、マイナスワンと演奏する方がいい。
だって、カラオケはミストーンを出さないし、テンポもよれない。
グルーブだって正確だし、
なんたって、毎回確実に、同じ演奏をしてくれます。
実際、いろいろな技術が進歩して、音響的に遜色がなくなってきてから、
カラオケやマイナスワンだけでライブする人たちも出てきているくらいです。
一方で生身の人間は間違える。
勝手にアレンジする。
テンポがよれる。
グルーブが乱れる。
びっくりするくらい下手な人やちゃんと練習してこない子もいる・・・
それでも、なんでも、やっぱり人と演奏するのはなぜか?
それは、人にはエネルギーがあるからです。
観念的な話をしているのではありません。
音は空気の振動。
その振動を生み出しているのは、シンガーやプレイヤーの肉体。
そして、その肉体を動かしているのは、それぞれが持っているエネルギー。
エネルギー不変の法則に基づくならば、
つまり人は、音楽を通じて、
エネルギーを与えたり、受け取ったりしているわけです。
こんなことがありました。
ニューヨーク武者修行時代のある日のこと。
オーディションを受けたライブハウスで気に入られて、
急遽、「来週末のゴールデンタイムにパフォーマンスをやってみない?」
というオファーをもらいました。
あまりに嬉しかったので、後先も考えず、
「もちろん!」と即答したものの、
ニューヨークに住み始めて、ほんの1〜2ヶ月の当時の私には、
ミュージシャンの友達など、ひとりもいない。。
あちこちあたってみたけれど、
曲がオリジナルだったというのもあって、
「カラオケでやるのが一番なんじゃないの?」ということになり、
結局、1ステージ、40min分ものライブを、
たった1人で、カラオケで、やったわけです。
いやぁ〜〜・・・寂しかった。
けしてパフォーマンスがうまく行かなかったわけではありません。
友人がつくってくれたカラオケだって、すばらしい出来でした。
それでも、なんでも、
いつもバンドのみんながくれるエネルギー、
こちらがぐいぐいといけば、さらにぐいぐい押し返してくる、
みんなの、言霊ならぬ音霊がない。
この、エネルギーすっかすかの空間での、
自分自身が自家発電するエネルギーだけでのライブの経験が、
バンドというもののエネルギーの大切さを、しみじみ教えてくれたのでした。
人を動かすのはエネルギーです。
壁をつくらず、
「自分」というものに閉じこもらず、
自分がたくさんのエネルギーを発したいなら、
たくさんのエネルギーを受け取ること。
たくさんのエネルギーを受け取りたいなら、
たくさんのエネルギーを発すること。
それが、音楽のコミュニケーションというものです。
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