大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌がうまくなる人は、やっぱ「どM」。

   

うまく歌えない時は、誰だって、自分の歌を録音して聞き返すのは苦痛です。
失敗したライブのビデオを見せられるくらいなら、死んだ方がマシと思うし、
自分の歌のプレイバックを聞かされながら、あーでもないこーでもないとこき下ろされるのは、もう、何年やってたって、絶対の絶対にイヤで、そのたびに、本気で歌なんかやめてやると心に固く誓うものです。

そうです。
そんなことは、いくつになったって、どんなキャリアがあったって、なくならないし、そのたびに、ばかやろー、ちくしょう、死んでやる、やめてやると暴れます。
で、そのたびに、また不死鳥のように蘇っては、今に見ていろばかやろーとばかり、こっそり練習したりする。
もうこの繰り返しです。

そんな「自分の歌を聴く」という、がまの油を出すような行為が、だんだん、当たり前になる。
重箱の隅をつつくように、自分の歌を分析しては、もう一回、もう一回と試行錯誤したり、歌い直したりできるようになる。

文章を書くのと同じです。
自分の歌を何度も推敲する。
すると、だんだん、ツボというか、コツというか、そういうのがわかるようになってくる。

何十回も、何百回もそんなことを繰り返していると、あるときふと、「あ。これ、かっこいい」って、自分の歌のいいところを見つけられるようになって。
そのうちに、何回も聞きたくなるくらい、気持ちよく歌える曲が出てきたりして。
気づいたら、まわりの評価が上がっている、という具合です。

とはいえ、そんな幸せはほんの瞬間なのが芸の道。
当然ながら、評価が上がれば、まわりの人の期待値も上がる。
関わってくる人の数が増えるほどに、厳しい人も増える。
で、また、ばかやろー、ちくしょー、死んでやる、の繰り返しです。

果てしない。
けどさ、この果てしなさが、歌の醍醐味です。
みんなちょっと「どM」。
だからうまくなるんですよね。

昔、父が言ってたっけ。
「MISUMIなぁ、人になんか言ってもらえるうちが華だぞ。
なんも言ってもらえなくなったら、お前よりすごいヤツがいなくなったか、これ以上伸びないと思われたかどっちかだぞ。
どっちも怖いぞ」。

幸か不幸か、かなり身近なやつが、相変わらずうるさいので、バカヤロー、ちくしょーは継続しております。
ありがたいと思うように心がける努力はしています。(だいぶ遠い)


■歌がうまくなるコツをリアルに学ぶ。「歌いたい!」を「歌える!」に変える。
MTLシンガーズLab. いよいよ9月スタート!

■無料メルマガ『声出していこうっ!』。
ご登録いただいた方全員に、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼント。バックナンバーも読めますのでぜひ。ご購読はこちらから。

 - The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, プロへの突破口

  関連記事

「できない」と言える「自信」を育てる。

レコーディングのお仕事に 呼んでもらうようになったばかりの駆け出しの頃。 スタジ …

すごいミュージシャンって、ここがすごい。(MTLワークショップ in 東京のご感想)

MTLワークショップ in 東京vol.3の受講生のご感想から。 先日はR&am …

「ライブの時、自分の声が全然聞こえないんですけど・・・」

「MISUMIさ〜ん。ライブの時、自分の声が全然聞こえなくて、 音痴だ、がなって …

バブル期のカラオケ制作現場は、めっちゃすごかった!

「わかってんの? プロのミュージシャンとかいうのは、歌謡曲のカラオケつくったり、 …

サポートミュージシャンを目差す人が取り組むべき、最も大事なトレーニング

一流のアーティストたちと大きなホールをツアーして回る、 いわゆる、サポートミュー …

誰かに「習う」前にやるべきこと、できること。

楽器や歌をはじめたいと思うと、 「とりあえず、スクールや個人の先生を探さなくちゃ …

怖いなら、目をつぶって飛び込め。

人生のターニングポイントとも言うべき、 大きな出逢いや変化には、 ドキドキやワク …

ピッチの悪い歌が致命的な理由

音楽はピッチ(音の高さ)という概念があるから成立するもの。 どんなにリズム感がよ …

音楽には、優劣も卑賤も上下も、な〜んにもない!

ものすごく当たり前のことなんだけど、時々、ちゃんと確認しておきたいこと。 &nb …

ミュージシャンの「ステータス」も数字?

ビジネスの世界で活躍している男性たちを見ていると、 日々、華やかな数字の話ばかり …