大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

コミュニケーションは、あきらめたら負け。

   

日々、ティーンエイジャーから還暦越えまで、さまざまな世代の、さまざまな境遇の人たちのレッスンをしている中で、常に最優先に取り組む、最重要課題は、それぞれとの共通言語を見つけることです。

同世代でも、音楽的バックボーンや育ってきた環境が違えば、意志の疎通は難しいものですし、30代40代でも、幅広い音楽経験がある人やコミュ力の高い人なら、注釈無用でスムースにレッスンが進行したりします。

難しいのは10代〜20代の、いわゆるデジタルネイティブ世代。
特にボカロやゲーム、アニソン系の音楽に傾倒していて、バンドやパフォーマンス経験も一切ない、というような若者たちのレッスンでは、「共通の理解」という落としどころを見つけるのに苦労することしばしばです。

「たとえば●●みたいな」とこっちとしては思いっきり若者に寄せたつもりのアーティストの名前を出しても、「あ、お名前しか知りません」となる。
彼らの口から出てくるアーティストの名前は、よほど王道の人でない限り、聞いたこともない不思議な名前のオンパレード。
楽器をいじったこともなければ、誰かが目の前で演奏しているのを見たこともない人がほとんどだから、「ほら、ドラムってさぁ…」とか「ベースの音はさぁ」っていう説明も通じない。

それでも、自分で打ち込みをやっているとか、誰かとコラボで音源をつくっているような人は、「リズムの縦が」とか、「メロディの流れが」という話が通じるのだけど、YouTubeで音源を聞き、カラオケで歌い、スマホで配信..と、デジタルの世界だけで完結している人とのコミュニケーションは困難を極め、いつも頭を抱えます。

だからといって、音楽をいい加減にやっている気持ちは彼らにはありません。
顔を出さずに活動しているVチューバーだって、「歌ってみた」でフォロワーをどんどん増やしている人だって、めちゃくちゃ努力してがんばってる。
単に表現するツールが違うだけ。

こんな時に、すべきことは、もう徹底的なヒアリングです。
レッスン中でも、わからないことはどんどん聞きます。
こちらの言うことばが通じてないと感じるときは、どこがわかりにくいのか、どんなところが難しいのかを徹底して掘ります。
それでも接点を見つけられなければ、さまざまな例を一緒に聞いたり、実際に違いを歌って聞かせたり。
さらに、相手が理解できたかどうか、彼らのことばで説明してもらいます。
「こんな感じですか?」という例を、彼らの音楽の中から見つけてもらいます。

腑に落ちてないな、と感じるときは、さまざまな角度から、相手が納得するまでどこまでも説明します。

彼らにはしつこくて迷惑かもしれないけど、コミュニケーションって、あきらめたら負けだと思うんですよ。
絶対に腑に落ちるポイントはある。
最後は、「やっぱり違うんだね」という理解でもよいから、徹底的に腑に落ちるまで追い込む。

レッスンが終わって、彼らを送り出し、玄関のドアを閉めるとき、いつも自分の胸に手を当てます。
腑に落ちたかな?
今日は彼らに何かを伝えられたかな?

ほんっっと果てしない毎日です。

 


■歌がうまくなるコツをリアルに学ぶ。「歌いたい!」を「歌える!」に変える。
MTLシンガーズLab. いよいよ9月スタート!

■無料メルマガ『声出していこうっ!』。
ご登録いただいた方全員に、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼント。バックナンバーも読めますのでぜひ。ご購読はこちらから。

 

 - Life, 今日のレッスンから

  関連記事

夏の価値を高める「8月いっぴっ!」の習慣

こどもの頃から、 月初めの日記には、 今月やったるで!なことを書き並べ、 最後に …

「目立ってなんぼ」はさっさと卒業する

テレビは基本洋画一辺倒で、時折ニュースをつけるくらいです。 ワイドショーもドラマ …

「妄想」は所詮「妄想」です。

小学校1年の終わりに急性腎炎で、2ヶ月ほど入院し、 (今となっては理由は定かでは …

成長する人。

成長する人は、心の素直な人が多い。 なんでも無反省に、 他人の言うことを聞けばい …

起きて見る夢 vs. 寝て見る夢

常日頃、道に迷う若者たちに問いかけていること。 「ぜんぶ可能だったら、なにがした …

憧れを現実に変える力

中学に入学して、 生まれて初めて部活動というものをはじめた時、 同じ部活の高校生 …

「数字」に価値を見出す

先日たまたまYoutuberのヒカキンさんが、 「Youtuberって、要は、他 …

握手。ハグ。キス。

音楽業界の常識と一般の常識とは、 あらゆる面で、大きなずれがあります。 起業して …

50分の2の法則

「世の中の“おもしろいヤツ”、“デキるヤツ”の存在確率は50分の2である。」 高 …

鈍才は総合力で勝負なのだ

【生まれてこの方、真面目に練習なんかしたことがない」という天才がいます。 こども …