声の温度。歌の肌触り。音の匂い。
ボタンひとつで音色を自在に変えられる、
いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場したとき、
ミュージシャンの反応は真っ二つに分かれました。
「すごいもん出てきたね。音楽が変わるよ」派と、
「所詮電気的につくれる音なんて、知れてるよ」派。
あれから40年くらい経ったでしょうか。
音楽の世界におけるデジタルの発展はとどまるところを知りません。
楽器ができない人でも、
立派なオケがつくれるようになり、
ドラムもベースも管楽器も、
ぜんぶキーボードで済んじゃう、
という恐ろしいことが起きました。
「歌だけは機械に取って代わられることはないから。」
などと、高をくくっていたら、
いやいや、とんでもない。
なんでも思い通りに、
思い通りの声で歌ってくれる機械までできて、
気がついたら、
「三次元の人間の歌っている歌は無理なんで」
なんて、新人類さえ現れました。
mp3、Youtube、ニコ動・・・
このまま、リアルな音楽は廃れてしまうのか・・・
しかし。
コロナ自粛で、人との付き合いを遮断したことで、
多くの人が、人間のカラダから発される
「生の波動」の大切さを再確認しました。
0と1では絶対の絶対に表現できない、
「生」の体験。
人間の歌う歌には、ある種の「肌触り」があるということ。
人の声には、それぞれの「温度」があるのだということ。
そして、音には独特の「匂い」が染みついているのだということ。
「生」が持つエネルギーこそが、
私たちに「音楽」という特別な体験をくれる。
抑圧されるほどに欲求が高まるのが人間というものです。
「生」を吸収するフィルターを研ぎ澄まして、
音を感じる毛穴という毛穴をばっちり広げて、
今しばし。
「抑圧」を力に変えるのです。
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