発信こそ、最大の防御。「知的財産」を守るということ。
「知的財産権」ということについて、このところ、いろいろな人と話をしています。
日本人はこの辺の認識が甘いというのは、ずいぶん前から言われてきたこと。
さらに、YouTubeやSNSの時代になって、その線引きはますます曖昧になっています。
一昔前は、なにかアイディアが浮かんだら正式な形で、先に発表するのが何よりの防衛策でした。
商業出版、CDなどのリリースをすることが、「第一優先」だったわけです。
カナダのエージェント宅に居候しながら、デビューの道を模索していた頃。
ひとりで作詞作曲アレンジをこなし、数ヶ月かけて10曲ほどのデモをつくりました。
できあがったデモを、「ぜひ、売り込みに使って欲しい」と、マネージメントを買って出てくれていたケイに渡すと、
「このテープのコピーを3部ずつつくって、自分宛にレジスターメールで送って」と言うのです。
レジスターメールは、書留のこと。
自分宛に送るのは、誰かに盗用されたときに、そのデモを作成した日付を証明するため。
日本でも、数限りなくデモをつくってきたけれど、そんなことを言われたのは初めてでした。
「日本は知的財産に対する認識が甘い」…そのことばの意味が、はじめて腑に落ちました。
こんなこともありました。
とある出版セミナーに出席していた時のこと。
本来録音禁止とされていた講義を、受講生のひとりがこっそり録音していました。
それに気づいた主宰者は、烈火のごとく怒り出しました。
「出版しようという人が、他人の知的財産に敬意を払えないなんて。
そんな意識で、出版なんかできるはずがありません!」
その人は即退場となり、後に講座代金を全額返金された上、破門となりました。
ものすごく内容の濃いセミナーでしたから、録音したくなる気持ちはよくわかりました。
しかし、主宰者の、「心血を注いでつくり上げた講座を、迂闊に外へ持ち出されてなるものか」という、その強い決意と覚悟。
そこに“クリエイターというものの在り方”を見て、深く胸を打たれました。
作品でもメソッドでも、知的財産は、厳重に鍵をかけてしまい込んでおくだけでは「持ち腐れ」。
人に見てもらって、はじめて価値が、意味が生まれる。
だからこそ、流用、盗用されないように、できうる限りの防衛策を取る。
商業出版しかり。著作権登録しかり。
価値あるものを守り続けることは、クリエイター自身の責任でもあるわけです。
自分自身の権利を大切にするからこそ、他人の権利にも最大限のリスペクトを払う。
それが、プロフェッショナルというもの。
プロ意識というのは、そういう姿勢から育つもの。
プロの現場で活躍してきた人たちの意見は、見事に一致していました。
Spotify,YouTube,TikTok…
一般の人が手軽に”自分メディア”を持てる時代です。
人の作品やアイディアを、「気に入ったから」というだけで発信する。
その発信を、別の誰かがまた真似して、さらに広める。
ミスコピー、劣化コピー、粗悪品、まがい物…。
世界はそんな”パチモン”であふれ、受け手はどんどん混乱していく。
正式な出典や起源を辿るほど忍耐力のある人は、そもそも、SNSメディアの情報を鵜呑みにしません。
結果、情報弱者を相手に、数字を取ろうとする人がどんどん増えて行くことになります。
「そういう最低限のリテラシーがないのが、一般人の証なんだよね」
そんな風にぼやく人もいます。
でもね。
そんな風に背を向けて、見て見ぬふりを決め込んでいたのでは、
自分が命がけで生み出してきたものの価値や意味がどんどんねじ曲げられていく。
そのスピリッツを失った状態で世の中に広まってしまう。
音楽家の中には、自分の作品をサブスクで販売することを拒否する人が多くいます。
そういう人のオリジナル音源は、YouTubeでも、まず見つかりません。
仮に誰かがこっそりアップしても、ボットに感知されて、すぐに消されてしまいます。
では、ユーザーは、どうするか?
そこで登場したのが、オリジナルに“そっくり”のカバー動画です。
曲名、歌手名で検索すると、真っ先にヒットするのはこれ。
しかも、動画のどこにも “カバー” と明記されていないため、
多くの人はそれがオリジナル音源なのだと勘違いします。
似ても似つかないクオリティだったとしても、です。
本物と偽物の境界線は、こうして曖昧になっていくものなのですね。
なにごとも表裏一体。
インターネットのいい面を利用するなら、悪い面とも向き合わなくてはいけません。
クリエイターには、ただつくるだけでなく、きちんとオリジナルの価値と意味を正しい形で伝える責任がある。
それを怠れば、他人が自分の作品を好き勝手に使っても、文句は言えなくなる。
Real Artist Ships.
(世の中に出してこそ、本物のアーティスト)
ずっと「創ること」ばかりに、集中してきました。
自分なりに、作品を守り、受け継いでいくにはどうしたらいいか、考えてきたつもりでした。
今、世の中の人に「知ってもらうこと」に集中しなければいけない時期が来たのだと、強く感じています。
目の前で起きていることから教えられることは、尽きません。
うかうかしている時間は、1ミリもない。
気合い入れて、行きます!

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