「とろい」って言うなっ!
「キミは運転、向いてないねー」
この人生、
「向いてない」と言われたことは数々ありますが、
「運転」くらい、
「でしょ〜?」と笑って認められることは、
他にありません。
とはいえ20代の半ばに免許を取って、
生意気にもすぐに新車をゲット。
こう見えても、
一時はどこに行くにも、
マイカーでスマートに(ウソ)移動していたものです。
もちろん、
運転の得意な友人を車に乗せる機会も多々ありました。
そして、しばしば、
「おっそいねー」
「いやー、怖くて力はいるねー。」
などと、素直な感想を口にされてきました。
おっかしいなぁ。
私は、そりゃあもう、スイッスイなんですけどね。
そんなとき、彼らは、
こんな風に口々にアドバイスをくれます。
例えば高速で。
「アクセルだよ。
大丈夫だから。バックミラー見て、
ウィンカー出して。ブレーキじゃない!アクセル!」
例えば、交差点で、
「ねえねえ、見えてる?
バイク来るよ!
寄せて、あ、寄りすぎ!」
例えば一般道で、
「だから、前の前の車が、ブレーキ踏んだら、
ブレーキ踏む準備だよ。
いやいや、急ブレーキじゃないよ。
ちょっとずつ!いやー、それじゃ遅すぎる!!!」
誤解のないように申し上げておきます。
私、もの凄く運転していた時期でも、
日本国内では無事故無違反です。
(カナダ時代に1回だけ・・・これはまたそのうち)
車も、1回だけこすったことがありますが、
基本、ド新品の状態で友人にゆずりました。
だから、言っとくけど「危険運転手」じゃないです。(たぶん)
ただね。「とろい」。
やばいくらい、「とろい」。
だから、男子はイライラするらしい。
「もっと車幅感覚身につけないと」
「怖がってるとかえって危ないよ」
「運転はセンスだからさ」・・・。
こんなことを言われても、
運転がうまくなる気はまったくしません。
だって、何ができてないのかわかんないんだもん。
私は普通に運転しているだけ。
怖くないし、危なくない。事故だってない。
センスってな〜に?
ずいぶん前のことになります。
お義父さんとジェフ夫さんがビールを飲んだかなにかで、
お義父さんの車を、私が運転することになりました。
まぁ、田舎道だし、10分かそこらの短いドライブ。
危険なことはないはずですが、
そこはやっぱり人の車。
しかもお義父さんの車とあっては、私だって緊張します。
おとうさんの家に帰るには、
信号のないところで、
県道を右折して、
県道と並行に走る踏切を越え、農道に入ります。
この県道が意外に交通量があって、
しかもみなさんいい感じで飛ばしてらっしゃる。
まもなく右折、となったところで、
私が緊張したのを悟ったのか、
お義父さんは冷静に、こう言いました。
「はい、少しずつ徐行して、ウィンカー出して。
ゆっくり、少しだけ寄せて。
あの車が行ったら、右折だよ。
はい。今。もうちょっと右にハンドル切ろうか。
そのまま真っ直ぐ。大丈夫。」
お義父さんの冷静な声がすごかった。
私はもう、完璧にお義父さんの誘導のままに走りました。
それもそのはず、
お義父さんは予科練で飛行訓練を受けていたエリートです。
そのまま警察に入って、
白バイでマラソンの先導をしていたような腕前。
もちろん、運転の指導経験もあるそうです。
車庫入れの時が、もう神アドバイスでした。
「真ん中のマークが、
2つ目の煉瓦のところにさしかかったら、
ゆっくりハンドル戻しながらバックして。
あの木が真ん中に来たところで止まって。
左に1回半ハンドルを回してもう一回ゆっくり前進。
・・・はい、よくできました!」
アドバイスしたり、指導したりするときって、
こういう、完璧な、再現性があることばで語りたい。
「センスが」とか「適正が」とか「感覚が」とか、
そういうフワッとしたことばは、
おとなになると、そう簡単に腑に落ちてはくれません。
具体的に、お手本をなぞるように、
練習を繰り返すうちに、
ふと、自分の中に新しい感覚が芽生える。
センスって、そうやって磨いていくものなんですよね。
結局、その後助手席専門要員になって、
全然運転しなくなっちゃいましたが、
いい先生につけば、
これからでも、運転、行けそうな気がしてなりません。
いや、しませんけどね。たぶん。
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