大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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年齢を公表するか、否か問題

   

むか〜し、
一緒にツアーを回っていたダンサーの子とおしゃべりするうちに、実は彼女と私が同じ高校の出身だったと判明したことがあります。
2才年下というから、「私の後輩の●●ちゃん知ってる?」「担任は誰?」とあれこれ聞いていたら、Kちゃん、いきなり、「だから、あたし、いやだって言ったのよぉ〜!」と叫び出しました。

なんでも、デビューをひかえて、他のメンバーと年齢を合わせるため、事務所に無理矢理3つ年下ということにされたとか。
そんなわけで、私にはずっと敬語で、年下らしく振る舞っていたわけです。
蓋を開けてみたら、実は私より年上・・・。そら、びっくりしましたとも。
「いつか絶対こういうことになると思ってたんですよ」と申し訳なさそうに言っていた彼女の顔が今でも忘れられません。

たいしたことじゃないのに、1才2才がオオゴトになるのが日本という社会。
年功序列文化の名残か。敬語の存在があるからか。
日本人ってのは、とりあえず年齢にシビアです。

あれ?MISUMIさんって、いくつだっけ?

はい。今日はそのお話です。

あれは、1993年のこと。(つまり、大昔)
カナダで私をブレイクさせようと言うエージェント宅に住み込んで、曲を書いたり、ライブに出たり、彼らがブッキングしているバンドをあれこれ見て歩いたりという生活をしていました。
どこへ行っても、めちゃくちゃ若く見られ、そのたびに「いやいや」と自分の年齢を告げ、また「すごい!若い!」と驚かれしていたある日、エージェントに、こう言われました。
「MISUMI、もう自分の年齢を言うのはやめなさい。
アーティストってのはミステリアスな方がいい。
見た目より年が行ってるっていうのは、なんにもプラスに働かないわよ」。

確かに、一理あると納得した私。
以来、人に年齢を告げるのをぷつりとやめました。

それから10年。
うるゴメ時代に、たまたまバースデイとライブが重なって、なんだか私のバースディライブみたいになったことがあって。
「これを機に、そろそろカミングアウトしようかな」と言ったところ、バンマス以下、全員に、「それだけはやめろ」と羽交い締めにされるくらいの勢いで反対されました。

「おれらは夢を売る商売なんだから、そんなことをわざわざ言う必要ないだろ」!

かくして、またしても、年齢を封印されたあたし。
かくいう男子ーズは、やれ芸歴何十年だ、還暦だと派手に年齢を公表してて、あぁ、これもジェンダーってやつかしらと思ったこともしばしばです。

しかしね。
年齢を言わないでいると、だんだん言うのが億劫になってきます。
うっかり告げると、どん引きされるのもめんどくさければ、
「なるほど」とスルーされるとシャクにさわったりして、そんな自分も、ますますめんどくさい。

そんなんで、ここ10年以上は、私のお葬式に来てくれた人たちが、位牌に書かれた「享年●●才」というのを見て、「えええええ!」と狼狽するのを人魂になってほくそ笑むのが夢だと豪語してきました。

それがさ、最近ね、いろんな人に、口々にこんなことを言われるんです。

「MISUMIさん、そのお年で、そんな風にエネルギッシュに活動してるのって、すごいインパクトあるから、そろそろ年齢公表しちゃった方がいいですよ。」
「そのギャルさと幸せそうな感じが、年を取るのを怖がってる人たちに夢を与えます!」
・・・などなど。

知らないうちに、どうやら、夢を与える方向性が、違ってきている。

え〜〜。
どうなの?そうなの?どっちなの?

いや、あたしはどっちでもいいんだけど。
今さら、●●才になりました、とかって言うのも頭悪そうに見えるし、めんどうくさい。
そもそも、ほとんどの人は交友関係とかから、うすうす知ってるわけで。
いやいや、だいたいにおいて、いちいち●●才って黒丸にしてる時点でイタいじゃん。。。

あんまりめんどうくさいので、最近は、「84才です。」って上にサバ読むのがマイブームで・・・

どうしよっかなぁ・・・。

 - Life, MISUMIの日記&メッセージ

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