変化することは人間らしさ、自分らしさの一部
すべては、時と共に変化します。
変化しないものは、死んでいるもの。
後は腐敗するか、朽ち果てるかだけなのです。
何百年もの間、その美しさを保たれている絵画や建造物も、
経年変化で黒ずんだり、色あせたりという劣化が避けられないため、
定期的に補修や修復がされています。
つまり、私たちは、何百年前とまったく同じものを見ているわけではない。
少しずつ変化したものを目にしていることになるわけです。
余談ですが、絵画などの修復作業は、
ときに大失敗事件につながることもあるようです。
関係のない私などは思わず、「うそぉ」と笑ってしまいますが、
すべて大切な文化遺産、
当事者や思い入れのある人たちにとっては、笑い事ではすまされません。
時の流れに逆らって、
なにかを全く同じ状態に保つということは、不可能なのです。
人間も、もちろん変化します。
顔かたち。
声。
カラダの機能。
思考。
価値観。
人間関係。
気づけないような微細な変化から、
180度変わってしまうような、大きな変化まで。
その変化を、劣化と呼ぶ人もいます。
顔かたちの変化なら、
お手入れしたり、お直ししたり、上から塗り込んだり、
貼ったり、染めたり、かぶったりする。
声やカラダの機能の変化なら、
ヴォイストレーニングや、
お医者さんやスポーツジムや鍼灸やマッサージに通う。
マイナーチェンジをしていくことによって、
最良だった時代を保存しようと試みているという意味において、
絵画の修復と同じですね。
しかし、「あきらかに以前の方が良い状態だった」と判断できる、
見かけやカラダの機能と違い、
自身の思考や価値観の変化に、
抵抗したり、逆らったりする人はあまりいません。
思考や価値観は、突然変異的に変化するわけではないからです。
心の中に、火種のようにくすぶっていた不満や、不安、
なんか違う、なんかおもしろくない、というような漠とした想いが、
目の前に現れた新しい出会いが引き金になって、
いきなりどかんと吹き出し、具体化する。
それが、いきなりの、
「会社やめちゃった」だったり、
「あなた、離婚してください」だったり、
「カレー屋はじめるわ!」だったり、
「海外で暮らしま〜す」だったり、
「あんたたちなんか、もうウンザリっ!」だったり、
するわけです。
本人にとっては、長い長い間かけて、
自分の中でちょっとずつ育ってきた変化。
ちゃんとすべての変化に伏線がある。
しかし、周囲のひとにとっては、青天の霹靂です。
思わず、「修復しよう」「補修しよう」と試みたりします。
自分の変化には寛容な私たちも、
実は、周囲の変化には、なかなかに不寛容だからです。
変化することは人間らしさ、自分らしさの一部。
とはいえ、いきなり、これまで向き合ってきた自分の歴史をぶち壊して、
全取っ替え、とは行かないのが人生。
長年大事に修復してきたダヴィンチの絵が、
突然気に入らなくなったからといって、
切り刻んで、新しい絵を描こうとするようなものです。
大切なのは変化とどう向き合うか。
どう付き合うか。
そのときに、どんな行動をとるか。
どんなコミュニケーションをとって、周囲と折り合いをつけていくか。
変化には努力はつきものなのです。
いかがでしょう?
「いや、自分は変わってないから」、と言うあなた。
長年、全く変化していないと感じるなら、
むしろ、そんな自分を、疑ってみた方がいいかもしれませんね。
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