大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「時間を忘れて夢中になる人」だけが、プロフェッショナルとなる

   

「ボクね、コーヒー飲もうと思って口に入れるでしょ。
で、そのまま機材の調整はじめて、1時間くらいして、トイレに立つわけです。
ふと、自分の口の中になんかあることに気づいて、
洗面所にぺーっと出すと、それが1時間前に口に含んだコーヒーだって気づくんですよ」
 

プロフェッショナルといわれる人は、まぁ、夢中になる。
ときに、病的に夢中になる。
 

冒頭は、昨日、とある作曲家&アレンジャーの方が言っていたことばで、
わぁ、ここにも変態がひとり、と思ったのでした。

我が家にも1名、病気系の人がいまして、
たとえば、アレンジでも、作曲でも、TDでも、最近はマスタリングでも、
まぁ、それはそれは、何十時間、何日、何週間も、こだわり倒しています。

同じ曲を再生すること、数百回。
かんべんして〜。。。となりそうになります。

 

こだわるポイントは、人それぞれ全然違うもの。
端から見ていると、「もうええやんっ!」と言いたくなるのですが、

本人にとっては、そのこだわりが、ある程度腑に落ちないと、
「ちゃんと仕事した気がしない」
「フラストレーションがたまる」
ということなのでしょう。
 

かくいう私も、まぁ、人から言わせれば「ど変態」。

声のことを調べだしたら、もう何時間、いや、何日でも本やPCに向かっていますし、
文章を書き始めれば、何千字、何万字でも、ノンストップで書きます。

歌のコピーに至っては、一度始めたら、呼吸や音色まで完璧にモノにするまで、
何時間でも夢中になってしまいます。

以前など、
「社長に、この曲を完コピしてこいって言われました。」
と生徒が持ってきた曲のコピーに夢中になるあまり、
レッスン中だということを完璧に忘れてしまって、
はっと我に返って、赤面したことさえありました。

 

 

歌でも楽器でも作曲でも、どんどん上達する子は、
時間を忘れて練習や制作に夢中になります。

生活と練習との線引きがない。
「一日何時間くらい練習するの?」と聞いても、
「さぁ・・・空いている時間はずっと練習しているんで」という答えが返ってくる。

 

ドラムのような楽器だって、練習しようと思えば、
工夫次第で、いつでもできるはずなんです。

 

先日も、とある育成期間中のアーティストと話していたら、
「今、事務所の仕事で旅が多くて、練習する時間が全然なくて」と言う。
 
師匠にあたる方について歩いているから、移動続きで、気も使いっぱなし。
一日中人に会っています。
 
「じゃ、声出せないね」というと、
「はい。せいぜい空き時間にカラオケに1〜2時間行くくらいしかできないんです」

 

彼は、東京にいれば、暇さえあれば練習している子です。

カラオケ1〜2時間と言えば、大学生なら、立派に
「毎日、ちゃんと練習してますっ!」と胸を張っていう時間。

こういう、日々の意識の違いが、やがて大きな違いとなるのです。

 

 

 

少し前、学生にこんな質問を受けました。

「先生、歌って、一日、何時間くらい練習したらいいんですか?」

 

「そんな疑問が湧く時点で、キミは向いてない。」

・・・と答えたかどうか、忘れましたが、ま、そういうことです。

 

17260545 - sad girl near the piano

 - The プロフェッショナル

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

自分との約束

プロフェッショナルやスペシャリストを志すとき、大切なことはシンプルなことばかり。 …

「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。

昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …

慣れたらあかん!

「習うより慣れろ」ということわざがあります。 意味は、 「人や本から教わるよりも …

「歌の表現力」ってなんだ?

表現力と言うことばを聞いたことがあるでしょうか?   「彼はテクニック …

「これで完璧!」って、なぜ言える?

神は細部に宿る。 通り一遍やるなら、誰でもできる。 ひとつ、ひとつの精度をどこま …

うまいからプロになれるのか?プロになるからうまくなるのか?

うまいからプロになれるのか? プロになるからうまくなるのか? ニワトリとタマゴの …

自分のスタンダードを持つ

「プロフェッショナルは自分のスタンダードを持つべし」が私の持論です。 「スタンダ …

スタジオ・ミュージシャンって何するの?

私のプロフィールには、 「500曲以上のレコーディングに参加した」と書いてありま …

音楽には「顔」がある。「オケと歌」、じゃないんです。

楽器の人たちと話していると、 演奏中、ヴォーカリストとは全然違う視点で ステージ …

ヴォーカリスト必読!マイクとモニターの超絶役に立つお話!!!〜前編〜

昨夜のブログ、そしてメルマガにて、モニターやマイクのお話を書いたところ、 なんと …