「歌の表現力」ってなんだ?
表現力と言うことばを聞いたことがあるでしょうか?
「彼はテクニックはあるんだけど、表現力が乏しいね。」
「あなたももっと表現力をつけないとダメよ」
などという風に、意外によくつかわれることばですが、
いざ、「表現力ってなんですか?」と聞かれると、
なかなか説明するのが難しいことばの一つでもあります。
簡単に言えば、表現力とは伝える力。
自分が感じていること、考えていることなどを伝える能力のことです。
文章や会話に置き換えて説明するとわかりやすいのですが、
例えばメールで
「腹が立ちました。」
と書かれても、どのくらい腹が立ったのか、どんな風に腹が立ったのか伝わりません。
絵文字やスタンプは、そうした文章の表現力の乏しさを補ってくれる
素晴らしいツールではありますが、
的確に感情の機微までは伝えてくれません。
しかし、
「涙が出るほど腹が立った」
「はらわたが煮えくりかえる思いだった」
「怒りで目の前がくらくらした」
・・・などと書かれれば、怒りの感覚や程度が伝わって来ます。
会話になれば、ことばだけでなく、顔や声の表情という表現ツールが加わります。
「もぉ〜う、ほんっとに、あったま(頭)来て、
ぶん殴ってやろうかって、まぁ〜じ、思っちゃったわよっ!!!!!」
と、臨場感たっぷりで説明されれば、
聞き手も感情移入して、一緒に腹を立てたり、笑ったりしますね?
これが、「表現力」です。
では、歌の表現力って、なんでしょう?
同じメロディ、同じことば。
絵文字に逃げることも、文学的な言い回しに頼ることも、
もちろん、「あったまきたっ!!!!」と、思いきりためたり、
跳ねたりするほどの自由度もない。
そんな制約だらけの「歌」の中で、
自分らしく、思いきり、伝えるための、歌の表現力とはなんなのでしょう?
歌の表現には、
音色、音の長さ、リズムの感じ方、音の立ち上がり、音の切り、
強弱、ことばの置き方、フレージング、アドリブ・・・などなどなど・・・
ありとあらゆる要素があります。
音の長さがコンマ単位で違うだけで、聞き手の受け取る感じ方が変わります。
音の立ち上がり方が、ちょっと変わっただけで、
やさしく聞こえたり、とげとげしく聞こえたり、ユーモラスに聞こえたり。
音というのは実に不思議なものなのです。
大切なのは、「どう表現するか」よりも、「何を表現するか」。
「曲」という箱の中から何を取り出すか。
それが、
曲や歌詞の解釈であり、
自分自身の経歴や経験であり、
曲と自分自身との関係性であり・・・
そんなことを感じ取り、感じきり、思いを巡らすことで、
表現が生まれるのです。
そうした、自分自身の感性が受け取り、
感情や思考が動いた結果、「表現したい」と感じたことを、
過不足なく表現するのがテクニック。
そして、そうした、感性、感情、理解力、思考力、そして、テクニック、
すべてが、歌の表現力と呼ばれるわけです。
どんなにテクニックに優れていても、
表現したいことが希薄であれは、伝わるものはありません。
反対に、どんなに感受性に優れ、表現したいことにあふれていても、
それに見合うテクニックを持たないとしたら、
ただの「叫び」や「マスターベーション」になってしまいます。
常に自分の感性を過不足なく表現できるテクニックを持つこと。
成長し続ける感性と、経験と共に豊富になってゆく感情や思考。
そして、それを追いかけるテクニックを磨くこと。
シンガーの理想です。
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