大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ライブ直前って、何します?」

      2016/06/17

「ライブの前って何食べますか?」
「お酒飲みますか?」
「やっぱり結構声って出しといた方がいいんですよね?」…etc.etc…

 

ライブ直前に何をしたらいいかという質問を、よく受けます。

 

正直、この答えは10人いたら、10人違う。

誰の説が正しいとか、絶対にこうしなくてはいけない、というのは、
今のところ発見できていません。

 

コンサート直前に何をすべきかという質問を受けて、
私が必ずといっていいほど思い出すのは、

映画『The Rose』で、ベット・ミドラー演じるRoseが、
出番直前に強いお酒をが〜っとあおって、
なにやら叫びながらヘッドバンギングしていたシーン。

心身ともに過労状態で、かつ、アルコールとドラッグ漬けだった彼女が、
アドレナリンを出して、自分を高揚させるための行動と思われますが、

ベット・ミドラーの演技が、あまりにも迫真に迫っていたので、
ひょっとして、ベット自身も似たようなことをしているのではないかと、
ドキドキしたのを覚えています。

 

さて、ライブ前に何をするか?

下記は、これまで出会ったヴォーカリストたちから聞いた、
本番直前にやること、やらないことです。

【食べ物・飲み物編】

○一切お腹にものを入れないで空腹でステージに立つ。
○お腹がすいていると横隔膜がよく動かないから、お腹いっぱい食べる。
○バナナを食べる。
○ノドにいいというから、唐揚げを食べる。

○アルコールを飲むとリラックスできる。
○紅茶にはちみつを入れて飲む。
○ライブといえばポカリです。

 

【声・カラダ編】

○本番直前までひとことも口をきかない。
○リハーサルで、目一杯声を出して立ち上げる。
○リハでは極力声をつかわない。
○本番前に軽くボイトレをする。
○ボイトレをすると声が終わるから、一瞬声を出す程度です。

○リハ前にストレッチをする。
○本番直前、マッサージさんにほぐしてもらう。
○本番前、整体師さんに矯正してもらう。
○本番直前に数回ジャンプする。

○リハと本番の前に軽くお昼寝する。
○寝たら絶対に声が出ないから、疲れていても寝ないように気をつける。

【ジンクス編】

○本番前にこどもの写真を見る。
○お祈りをする。
○お客さんはカボチャだと思う。
○大好きなアーティストの音楽をかける。
○鏡を見つめる。
○一切、人をシャットアウトして集中する。

 

ね?
みんな全然違うでしょ?
 

ちなみに大切な本番の日の私の習慣。
 

若かりし頃は・・・
 
朝ごはんにカレーライス。
(血の巡りがよくなる気がした)
コーヒー。(利尿作用でむくみが取れる気がした)

お風呂で汗をかく。
ストレッチをする。

リハ中はずっとストレッチ。
靴のチェックを兼ねて、軽く踊りながら、リハはがっつり歌って、

朝ごはん以降、一切お腹にものを入れず・・・

一時期なぞ、リハと本番の間にジムに行っていたことさえあります。

そして、本番直前にリポビタンD。

 

さすがにちょっと、こんな若者向けメニューは卒業しまして、

 

現在は・・・
 
リハ前に軽〜くストレッチ、
リハも軽めに歌って、
本番前は基本お赤飯のおにぎり半分。
時々他のものもちょびっと。

飲むのは水。人肌の水。ひたすら水。

そして本番前に少しだけ声を出して・・・

というメニューに落ち着いています。
 

昔も今も変わらないのは、
ステージに出た瞬間には集中の局地にいたいので、
 
可能な限りひとりになる。
鏡と向き合って、自分を高める。
アクセサリーを触って集中する。
自分に、「行くぜ」と言い聞かせる。

というところでしょうか。

 

正解を探すのはライブを重ねる楽しみでもあります。
 
「今日のライブがうまく行ったのは、○○のおかげ」というのを、
繰り返して、自分なりのジンクスをつくる。

 

自分で探すから、その答えが、自分にとって特別なものになるんですね。

 

17744680 - professional make up case with backstage mirror and make up tools and products

 - The プロフェッショナル, カラダとノドのお話

Comment

  1. 澤米 徹 より:

    ストレッチと発声練習を最低20分することにしてます。低い音域の曲を5曲ほど歌って喉を暖めるのが基本だと思うんですけど、何もやってない人が凄く多いです。あれはどういうことなんだろうと不思議です。声がライブ途中で枯れちゃうのが一番怖いです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「すごいミュージシャン」って何だ?

「すごいミュージシャン」というと、 どんな人が思い浮かぶでしょうか? 派手なスー …

「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。

昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …

「一部」は「全部」 

足の薬指を骨折したことがあります。 発熱まではいきませんでしたが、 一日中、なん …

「自然体」を演出する。

「自然体でステージに立っているようすがカッコいい」 などと評されるアーティストが …

「今日はノドの調子が悪くて・・・」

誰にだってのどの調子の悪いときというのはあります。 どんなに気をつけていても、あ …

「ダメ出し」こそが、プロの技を試される仕事なのだ

他人にダメ出しをする人には、 自分のためにダメ出しをする人と、 相手のためにダメ …

ヴォイストレーナーという仕事

自分にできないことは教えられない。 いろいろな考え方があるでしょうが、 私は、歌 …

『ハードスケジュールなときこそ確認したい声のためにできること』

月末から鹿児島でした。 4泊5日の日程で、 ワークショップ、リハーサル5時間、ボ …

「お客さんに甘やかされたらあかんよ」

「MISUMIちゃん、 こういうお客さんに甘やかされたらあかんよ」 京都でバンド …

キー設定にこだわり抜く

「キー、D♭でお願いします」 そんなことを言って、いい顔をしてくれるのは打楽器と …