「これで完璧!」って、なぜ言える?
神は細部に宿る。
通り一遍やるなら、誰でもできる。
ひとつ、ひとつの精度をどこまで上げて行かれるかが勝負の決め手。
何度も言ってきたことですが、
「精度を上げる」という作業は、
ことばで言うほど簡単ではありません。
人は、自分のやっていることを正しく評価できないからです。
表面が整っただけ、
なんとなくできちゃっただけでも、
「よくやった!」「完璧!」と過大評価して、いい気になる。
もしくは、
「どうせわたしなんか・・・」「こんなのやっぱりダメだ」と、
過小評価するあまりに、
どんどん迷宮に迷い込んで、いじくりすぎて、
結局完成させられずに終わる。
一流と言われる人は、
一体何を持って、これで完成、完パケと、
自信を持って世の中に送り出しているのか。
正しく自分をジャッジして、
正しく自分を追い込んで、
確実に、その仕事の精度を上げ、
世の誰もが「完璧」と認める作品を完成させられるのか。
大事なことは、以下のの3点に尽きます。
1.世の中にあふれている素晴らしい作品の数々に触れること。
目を塞ぎ、耳を閉ざして、感性が磨かれるはずはありません。
審美眼、判断力というものは、
自分の中の情報量に比例して磨かれるもの。
自分は天才だと思い込んで、
自分の中の限られた情報を反芻しているだけでは、
新しいものは生まれません。
音楽家だからといって、
その情報ソースは音楽だけとは限りません。
アート作品にも、映画にも、小説にも、
自然界にだって、
自分自身の感性を磨いてくれる情報があふれています。
2.自分の作品を客観的に見る目、聞く耳を養うこと。
他人の耳で、他人の目で、作品に触れる。
自分は、街で通りがかりに耳にしたこの作品に、
心奪われるだろうか?
奪われるとしたら、何故か?
足も止めないなら、自分の作品に足りないのは何か?
この作品を、お金を払って自分のものにしたいと思えるか?
そんなことを徹底的に考えてみる。
かつて、先輩ミュージシャンが言ったことば。
「この作品がCDになって、CDショップの棚に並ぶときには、
マイケル・ジャクソンと同じ棚に、同じ値段で並ぶんだ。
予算がないとか、時間がないとか、何の言い訳にもならないんだよ。」
3.最後は「腑に落ちる」域まで追い込むこと。
ことばでは説明できない感覚に、「腑に落ちる」があります。
なんか、カチッとはまる。
This is it!
まさに、これ!
という感覚がどこからともなく生まれる。
神様がくれる感覚なのか、
宇宙からのメッセージなのか、
とにもかくにも、「これだ」とわかる感覚が、
あるポイントで、ふと落ちてきます。
画家の横尾忠則さんは、
新しい展覧会のための作品をつくるとき、
「霊界ですでに開いた展覧会を再現する」という表現をしていたとか。
すでに描いた作品を思い出すわけですから、
「これだ!」
となるわけですね。
いかがでしょう?
「完璧」と言い切れる作品を、パフォーマンスを、
ひとつでも多く残せたら、世の中に送り出せたら、
ミュージシャン冥利に尽きますね。
最後に、かつてのバンド仲間が言ったことば。
「作品はね、つくっているときは自分のもの。
一旦世の中に出したら、ファンのものだからね。
とにかく、納得いくまでやるしかないんだよ。」
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