「大きい音」を扱うのって、テクニックがいることなんですぞ。
「ラウドな音楽をやっている」と言うと、
デリカシーのない、
雑な演奏をしていると感じる人が多いようですが、
(ま、そういう「ラウド」もいっぱいありますが)
実は、「大きい音」を扱うことは、
意外なくらい、神経をつかう、
そして、テクニックを要することなのです。
少し前、ライブのリハ中に、
ちょっとおちゃらけて、
「音のでかいギターリスト」の代名詞のように言われる、
ジェフ夫さんのギターを弾いてみたことがあります。
いや、
「弾いてみようとしたことがあります。」が正しい。
そしたら、あろうことか、
ボリューム上げて、
コードを一発弾いたとたんに、
マーシャルが全力でハウりまして・・・。
ポキィイイイイイ、グゥイイイイイイ〜〜〜、バキ〜〜〜〜
全く音楽にならないんです。
「キミ、一体、どんなん弾いてるの・・・?」
と思いましたが、
しかし、ジェフ夫さんが弾くと、
バキッと、いつものジェフ・ベックの音。
へーー。
「大きい音のギター弾くのって、難しいのね。。。」と、
シロウトくさ〜い、感動を覚えたものです。
こんなこともありました。
某爆音バンド時代。
リハ中に、バンマスが、
いつもお手伝いしてくれるファンの男の子に、
「(私の相方の代わりに)歌ってもいいぞ」と言ったことがあります。
相方の大ファンだった彼は、
それはもう有頂天になってステージの上に上がってきました。
そして、顔を真っ赤にして、必死に歌いはじめました。
しかしです。
彼の声は、バンドの爆音にかき消されて、
全く、聞こえてこないのです。
全くです。
一緒に歌っていた私の声はバキーンとモニターから返ってきます。
スタッフが意地悪しているのじゃないかと思ったくらいですが、
彼のマイクは、もちろん、いつも相方が歌うように、
きちんとセッティングされていました。
彼自体、そんなに、声が小さい子ではありませんでした。
それなのに、です。
自分たちのバンドの音量のでかさを再確認して、
呆れた瞬間でもありましたが、
なによりも「大きい声」で歌うって、
難しいことなんだなぁと、他人ごとのように思ったものです。
音量の大きなバンドで歌っている人の中には、
やたらピッチの低い人もたくさんいます。
バンドの爆音に負けないように、
一所懸命がなっているうちに、
声帯様が分厚くなって、
自由な動きを阻害されてしまう。
だからピッチがあたらなくなるのです。
さらに、強い息を吐き続けるから、
声帯様を痛めてしまう。
声がガラガラになってしまう。
悪いことに、
「ロックの人は、みんなそうやって声を枯らしているんだ」
という間違った認識があったりして、
そのまま、声帯様を痛めてしまいます。
そこに、タバコやアルコールという、
古い時代の「ロックの美学」が絡んでくるから、
たまったものではありません。
声がガラガラ、スッカスカになって、
高い声どころか、まともに「楽音」が鳴らせなくなった状態を、
「ロックっぽい」とか、「ジャニスジョップリンみたい」
と、勘違いしちゃうひともたくさんいます。
大きい声量を扱うには、
正しい知識とテクニックが必要なのです。
声帯様と正しくつきあい、
トレーニングを怠らなければ、
どんなに声量をあげても、
ピッチはきちんとあたりますし、
何時間歌っても、声が枯れることはありません。
高い声だって、どんどん出ます。
「大きい音の音楽」も、なかなか深いんですのよ。
◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
分解して聞く。分解して練習する。~Singer’s Tips#27~
「片手ずつ練習しなさい。 右手と左手、一緒に弾いていたら、 間違っていることに気 …
-
-
「なんか好きじゃない曲」を歌わなくちゃいけない時のヒント
バンドをやってると、 「なんか好きじゃないな」という曲を 歌わなくちゃいけない時 …
-
-
精度の高い”フォルティッシモ”を持て!
ダイナミクス、すなわち音量の強弱のコントロールが 音楽表現の大切な要素であるとい …
-
-
カムバックを狙え!
足を骨折したことがあるでしょうか? ギブスにすっぽりと守られて、 まったく動かせ …
-
-
なんだ、カラオケって、楽しいじゃんっ!
あたくし、今さら言うのもなんですが、 実は、カラオケが大の苦手でした。 これ、ミ …
-
-
テンポが速い曲の練習方法~Singer’s Tips #26~
「ゆっくり目の曲はうまく歌えないんです。 テンポの速い曲の方が得意です。」 時々 …
-
-
「知ってる」だけで「わかった気」にならない。
「知識欲」こそが「学び」の基本。 「知りたい!」という気持ちが湧かなければ、 あ …
-
-
ボイトレの一番大切なレッスンは3時間で終わる。
ボイトレの一番大切なレッスンは3時間もあれば終了してしまう、 超シンプルなもの。 …
-
-
理解できない相手がクソなのか、させられない自分がダメなのか。
誰にも歌を認めてもらえず、 今日辞めようか、 明日ちゃんとした就職先を探そうかと …
-
-
スタジオ配信ライブ初体験。/「生まれて初めて」を恐れない!
誰にだって、何にだって、 「生まれて初めて」はあります。 まして、テクノロジー …