大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「で?私、何したらいいんですか?」

   

「初回はカウンセリングをします」と言うと、

いわゆる「体験レッスン」をご希望の方の中には、
メソッドを出し惜しみしていると感じる人もいるようです。

プライベートレッスンは、
基本的には口コミでいらっしゃるアーティストさんか、業界関係者、
またはご紹介者のあるビジネスマンの方に限らせていただいているので、
ある程度予備知識はお持ちのはずなんですが、

まぁ、そんなヴォイストレーナーはあんまりいませんから、
みなさん、やや身構えて、カウンセリングにいらっしゃる。

しかし、実際にカウンセリングをうけ、
私の診断結果やアドバイスなどを聞いていると、
「ああ、そういうことでしたか」と、
身を乗り出して、関心したり、感動したり。

 

奇をてらっているわけでも、
営業戦略でもありません。

私がさまざまな質問をしたり、
カラダの話や、声の話、
人間というものの話をすることで、

語っているご本人が、
自分自身を見つめ直すことができるようになる。

ヴォイトレとは、新しいテクニックや能力を身につけることではなく、
本来できるはずのことを思い出す行為。

自分自身と内側から、外側から、
しっかり向き合うことなしには、
どんなトレーニングも成立しません。

それが私のメソッドの根底に流れているスピリットです。

シンガーやミュージシャンは、
基本的にみなセルフコンシャスなものですから、
私の話に非常に興味深そうに耳を傾け、
「目からウロコが落ちました!」
「めちゃくちゃ納得しました。」などといいながら、
興奮したようすで帰って行きます。

ヴォイトレの8割は話を聞くだけで終わるとお伝えしているくらいですから、
実際、話を聞くだけでも、いきなり発声が楽になったりするものです。

しかし、ビジネスマンの方はちょっと違います。

私の熱弁にふむふむと熱心に耳を傾けていたかと思うと、

「で?私、何をしたらいいんですか?」

「具体的に、どんなトレーニングをするんですか?」

などとおっしゃるわけです。

 

ビジネス系のトレーニングをはじめた当初は、
本当に面食らいました。

意地悪をされているのか?
私のトレーニングはビジネスマンには伝わらないのか?

そんな風に悩んだあげく、
そうか、と思い当たったのは、

ビジネスマンという人たちが、
日頃、いかに、
自分のカラダと向き合う時間を持てないでいるか、という事実。

カラダの細部と繋がるどころか、
筋感覚、神経系、体感、メンタルなどなどを、
解放しないまま、できないまま、

アドレナリン出しまくって、
交感神経優位なまま闘い続け、
走り続けている。

だから、カラダに意識を向けるということを、
自然にやることがとても難しいようなのです。

忙しい人が食べ過ぎたり、
食べなさ過ぎたりするのも、
まさに、このカラダと繋がる力が弱っているからなんですね。

しかし、そんな時こそ、
表面的なトレーニングを追いかけても意味はありません。
さらにアドレナリンを暴走させるのがオチ。

姿勢、呼吸、そして発声という、
ヒトとしてレベルで自然にやれるべきことが、
うまくできない自分に気づくことが大切なんです。

そして、いかにしてそれに気づかせるか、
想像力と知力を働かせるのが私の仕事です。

◆一生ヴォイストレーナーのいらない自分になる。第8期MTL12、10月開講
◆いつでもどこでも何度でも。最長9ヶ月間学べます。全額返金保証のオンライン講座。MTLオンライン12。

 - B面Blog, The プロフェッショナル, ある日のレッスンから

  関連記事

視点を変えれば、感動は無数に生まれる。

1990年代に一世風靡したロックバンド、 オアシスのノエル・ギャラガーが、 どん …

作品づくりは美意識のせめぎ合い

優秀なミュージシャンというのは、 自分がたった今プレイしたテイクが、 どんな出来 …

テクノロジーは「交通手段」のように 付き合う。

歌を志した21〜22才くらいから、 周囲のおとなミュージシャンたちのオススメに素 …

「中上級の壁」を越えるための5つのポイント

今日は午前中から、外資系企業でバリバリと働く才媛かつ、美しき女性シンガーAさん、 …

本番で実力を発揮するための「3大要素」!

本番で結果を出せるか否かは、 【経験値 x 準備 x 集中力】 の値で決まる。 …

うまいからプロになれるのか?プロになるからうまくなるのか?

うまいからプロになれるのか? プロになるからうまくなるのか? ニワトリとタマゴの …

説得力のある人は、エネルギー値が高いのだ。

聞く人の心にどかんと飛び込む「説得力あるパフォーマンス」。 はじめてギターを抱え …

変化するチカラ

今日、しばらく近づけなかった眼科に、 検診に行ってきました。 質問表、検温、受付 …

「自分の音域を知らない」なんて、意味わからないわけです。

プロのヴォーカリストというのに、 「音域はどこからどこまで?」 という質問に答え …

タフであること。 楽天的であること。 そして適度に鈍感であること。

少し前のこと。 とあるアーティストの子が、こんなことを言っていました。 「悪口を …