「で?私、何したらいいんですか?」
「初回はカウンセリングをします」と言うと、
いわゆる「体験レッスン」をご希望の方の中には、
メソッドを出し惜しみしていると感じる人もいるようです。
プライベートレッスンは、
基本的には口コミでいらっしゃるアーティストさんか、業界関係者、
またはご紹介者のあるビジネスマンの方に限らせていただいているので、
ある程度予備知識はお持ちのはずなんですが、
まぁ、そんなヴォイストレーナーはあんまりいませんから、
みなさん、やや身構えて、カウンセリングにいらっしゃる。
しかし、実際にカウンセリングをうけ、
私の診断結果やアドバイスなどを聞いていると、
「ああ、そういうことでしたか」と、
身を乗り出して、関心したり、感動したり。
奇をてらっているわけでも、
営業戦略でもありません。
私がさまざまな質問をしたり、
カラダの話や、声の話、
人間というものの話をすることで、
語っているご本人が、
自分自身を見つめ直すことができるようになる。
ヴォイトレとは、新しいテクニックや能力を身につけることではなく、
本来できるはずのことを思い出す行為。
自分自身と内側から、外側から、
しっかり向き合うことなしには、
どんなトレーニングも成立しません。
それが私のメソッドの根底に流れているスピリットです。
シンガーやミュージシャンは、
基本的にみなセルフコンシャスなものですから、
私の話に非常に興味深そうに耳を傾け、
「目からウロコが落ちました!」
「めちゃくちゃ納得しました。」などといいながら、
興奮したようすで帰って行きます。
ヴォイトレの8割は話を聞くだけで終わるとお伝えしているくらいですから、
実際、話を聞くだけでも、いきなり発声が楽になったりするものです。
しかし、ビジネスマンの方はちょっと違います。
私の熱弁にふむふむと熱心に耳を傾けていたかと思うと、
「で?私、何をしたらいいんですか?」
「具体的に、どんなトレーニングをするんですか?」
などとおっしゃるわけです。
ビジネス系のトレーニングをはじめた当初は、
本当に面食らいました。
意地悪をされているのか?
私のトレーニングはビジネスマンには伝わらないのか?
そんな風に悩んだあげく、
そうか、と思い当たったのは、
ビジネスマンという人たちが、
日頃、いかに、
自分のカラダと向き合う時間を持てないでいるか、という事実。
カラダの細部と繋がるどころか、
筋感覚、神経系、体感、メンタルなどなどを、
解放しないまま、できないまま、
アドレナリン出しまくって、
交感神経優位なまま闘い続け、
走り続けている。
だから、カラダに意識を向けるということを、
自然にやることがとても難しいようなのです。
忙しい人が食べ過ぎたり、
食べなさ過ぎたりするのも、
まさに、このカラダと繋がる力が弱っているからなんですね。
しかし、そんな時こそ、
表面的なトレーニングを追いかけても意味はありません。
さらにアドレナリンを暴走させるのがオチ。
姿勢、呼吸、そして発声という、
ヒトとしてレベルで自然にやれるべきことが、
うまくできない自分に気づくことが大切なんです。
そして、いかにしてそれに気づかせるか、
想像力と知力を働かせるのが私の仕事です。
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