大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ありのまま」ということばを免罪符にしない。

   

作品でも、パフォーマンスでも、
作り込むより、パッションが大事とか、
ありのまま、自然のままが一番などと、
よく言われます。

しかしね。
作り込まない方がいい、といわれるのは、
作り込むセンスがないからです。

作り込むことイコール、わかりにくくなったり、
ごちゃごちゃすることではなく、
むしろ逆な場合も多々あります。
作り込むからこそ、削り落とされて、
シンプルに、わかりやすくなることだって、
たくさんあるのです。

ありのまま、自然のままで通用するのは、
自分自身の魅力をありのままに表現できるセンスのある人。
そこに行き着くまでに、長い時間をかけて、
自分自身や、自分の作品と向き合い続けて来た人だけです。

「ありのままにやればいいんだよ」と言われる時点で、
センスがない、ということ。

「考えすぎでしょ?まずは肩の力を抜いてごらん。」
と言われて、
そっか、思いつくままにつくればいいんだなどと、
勘違いしてしまうと、
いたずらに完成度の低い作品やパフォーマンスを
世の中に送り出してしまうことになります。

作為なく、ナチュラルに表現されているものほど、
細部にまで心が行き届いていたり、
徹底的に計算されていたり。

たとえば、歴史に残る素晴らしい写真には、
ありふれた風景の中の、神がかった瞬間が
おさめられていることが多くあります。

偶然か運命か、
その時、その刹那、シャッターを切っていなければ
撮れなかった写真。

でも、その偶然や運命を引き寄せたのは、
カメラを構え続けていたからだし、
その運命の一枚を撮るまでの、
何万枚もの写真があったからだし、
ずっとずっと写真というものと向き合い続けてきたから。

だからね。
何を言われても、人のことばを鵜呑みにしない。
肩の力を抜け、自然にやれ、と言われたときほど、
自分自身と向き合う。自分の作品と向き合う。

美意識を高く持って、
妥協を許さず、とにかく全力を尽くす。

関わる人が多い仕事ほど、
それは、難しいことなのだけれど、
必ず落としどころに出会えるはず。

最後は自分の美意識を、
自分自身を、
信じるしかないんですね。

アンリ・カルティエ=ブレッソン 『瞬間の記憶』

 - B面Blog, Life, クリエイト , ,

  関連記事

はじめること 続けること やめること

なにかを始める時は直感に従うことにしています。 電気的な啓示、というか、 ビビビ …

“Be present.” (今、この瞬間を味わって)

昨夜、往年のセクスィー男優リチャード・ギア主演の、 『嘘はフィクサーのはじまり』 …

「練習が嫌いなんじゃない。「練習をはじめること」が嫌いなんだ。

以前、プロで活躍していたという元スポーツ選手と話していて、 「今でも、毎朝、ジョ …

音楽ソフトが使いたい!でも、PCが苦手?

最近昔話ばっかりで恐縮です。 生まれてはじめて、 自分でオリジナル曲を録音した時 …

ワクワクに飛び込め!〜 人生を動かすのは、説明できない「衝動」 〜

なにやってるんだろう?そもそも、なんでこんなこと、はじめちゃったんだろう?どうし …

恋するように、バンドする。

棚卸し週間にて、 これまでにやってきたバンドを ひとつひとつ思い出してみました。 …

「自分基準」を育てる。~Singer’s Tips #3~

「本当に実力がある人」って、 今、自分が何をしているか、 確実に理解しているもの …

あたりまえ過ぎて、今さら言えない10のこと

あまりにも、あたりまえのことすぎて、 最早、口にすることさえはばかられるようなこ …

ケツがむずむずするような曲、 書かなきゃ売れないよ。

PC内の断捨離&オーガナイズも佳境。 昨日、タイトルは見えるけど、 「デ …

自分自身のマスターは、 どんなときだって、自分なんだ。

3月は「終わりの季節」。 学生時代に別れを告げ、 社会に出て行くことに不安を感じ …