「ありのまま」ということばを免罪符にしない。
作品でも、パフォーマンスでも、
作り込むより、パッションが大事とか、
ありのまま、自然のままが一番などと、
よく言われます。
しかしね。
作り込まない方がいい、といわれるのは、
作り込むセンスがないからです。
作り込むことイコール、わかりにくくなったり、
ごちゃごちゃすることではなく、
むしろ逆な場合も多々あります。
作り込むからこそ、削り落とされて、
シンプルに、わかりやすくなることだって、
たくさんあるのです。
ありのまま、自然のままで通用するのは、
自分自身の魅力をありのままに表現できるセンスのある人。
そこに行き着くまでに、長い時間をかけて、
自分自身や、自分の作品と向き合い続けて来た人だけです。
「ありのままにやればいいんだよ」と言われる時点で、
センスがない、ということ。
「考えすぎでしょ?まずは肩の力を抜いてごらん。」
と言われて、
そっか、思いつくままにつくればいいんだなどと、
勘違いしてしまうと、
いたずらに完成度の低い作品やパフォーマンスを
世の中に送り出してしまうことになります。
作為なく、ナチュラルに表現されているものほど、
細部にまで心が行き届いていたり、
徹底的に計算されていたり。
たとえば、歴史に残る素晴らしい写真には、
ありふれた風景の中の、神がかった瞬間が
おさめられていることが多くあります。
偶然か運命か、
その時、その刹那、シャッターを切っていなければ
撮れなかった写真。
でも、その偶然や運命を引き寄せたのは、
カメラを構え続けていたからだし、
その運命の一枚を撮るまでの、
何万枚もの写真があったからだし、
ずっとずっと写真というものと向き合い続けてきたから。
だからね。
何を言われても、人のことばを鵜呑みにしない。
肩の力を抜け、自然にやれ、と言われたときほど、
自分自身と向き合う。自分の作品と向き合う。
美意識を高く持って、
妥協を許さず、とにかく全力を尽くす。
関わる人が多い仕事ほど、
それは、難しいことなのだけれど、
必ず落としどころに出会えるはず。
最後は自分の美意識を、
自分自身を、
信じるしかないんですね。
アンリ・カルティエ=ブレッソン 『瞬間の記憶』
関連記事
-
-
時間には密度があるんだ
今日のレッスンで、 「10000時間の法則」の話をしました。 じっと聞いていた彼 …
-
-
はじめる年齢が若くたって、ダメな人はダメなんです。
「なにかをはじめるのに遅すぎると言うことはない。」 さまざまなところに、そんな言 …
-
-
「真っ白な灰」に、なりますか?
リングの上で真っ白な灰になった、『あしたのジョー』。 命を賭けられるほどのものに …
-
-
限りない偶然に選ばれてきた「特別な自分」
一瞬の選択で人生は大きく変わります。 もしもあの時、あの瞬間にラジ …
-
-
1行のことば
1行。 たった1行のことばが、 人にパワーを与え、 この世で最も幸福な人にする。 …
-
-
情報か?経験か?
生まれて初めて弾いたギターは、 姉が持っていたクラシックギターでした。 中学入学 …
-
-
「夢に向かって邁進する」は美徳でもなんでもない。
学生時代、本の取り次ぎ店にバイトしていました。 バイトは朝の9時から夕方5時まで …
-
-
ウソをつくなら、自分を騙せ!
ウソはダメだとわかっているのに、人は時々ウソをつく。 いや、時々じゃなく、意外に …
-
-
「キー決め」の3つのポイント~Singer’s Tips #25~
キーを決める時、 「高いところが出ないから下げる」、 「低いところが歌えないから …
-
-
スポットライト
大学3年の時、18段変速の自転車を手に入れました。 舗道でも、車道でも、山道でも …
- PREV
- やっぱり私、変態でした。
- NEXT
- お前はまだ、立ち続けているか?
