大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌詞の理解を深める~Singer’s Tips #12~

      2021/04/26

どんなことばで語られようと、
心ない政治家の原稿丸読みの演説や、
稚拙な役者のセリフというのは、
心動かされないばかりか、
ちっとも頭に入ってこないものです。

理由は明白です。

今、自分が語っていることばの意味が、
語り手の腑に落ちてないから。

ことばには心が乗ります。

上っ面だけで心が乗っていないことば、
語り手が理解できていないことばというのは、
聞き手の心に響かないのです。

歌の歌詞もおなじです。

歌詞を理解するというのは、
単にことばの意味がわかる、ということとは、
決定的に違います。

何年か前に流行った「Let it go~ありのままで~」を、
「どうやらうちの娘は、『蟻(アリ)のまま』と思って歌っているようだ」と、
笑い話のように話す人がいましたが、

では、「ありのままで」ということばを、
腑に落ちるまで解釈して歌っていた人がどれだけいたか?
“Let it go”ならなおさらです。

意味のわからないことばは、単なる音。
それでは伝わりません。

歌詞の意味を理解するのは、
ごく当たり前のこと。

1歩進んで、
自分の中にあるリアルなことばと、
歌詞の世界をどれだけ結びつけられるか。

自分と歌との関係性をどれだけ築けるか。

簡単なことではありません。
正解のない旅ですが、
このことを心に留めるだけでも、
歌の深みは全然違ってくるものなのです。

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Singer's Tips, 歌を極める

  関連記事

歌の才能。

はじめてトレーナーのお仕事をしてから、 かれこれ20年。 下は小学生から、上は7 …

やっぱ、最後はエネルギー。

歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …

声の温度。歌の肌触り。音の匂い。

ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …

手癖でやらない。 慣れでやらない。

ここ数年、 自分というコンテンツを最後の一滴まで、 言語化、文字化、映像化して絞 …

「気づけない」から上手くならないってことに早く気づく。

中学1年の夏休み、 長年の夢だったピアノを、 やっとの思いで買ってもらいました。 …

自分自身を幸せにすることなんて、 本当はめちゃくちゃシンプルなことなんだ。

ロンドンに長期滞在したい、という思いは、 もう何年も前からあります。 最低でも半 …

アイディアは、ポンと降ってくるギフト。

クリエイティブなアイディアって、 頭で考えているうちは絶対に出てこないもの。 作 …

げに不安定な音を奏でる、完全なる楽器?

歌に真剣に取り組むほどに、 人間のカラダという楽器の奏でる音の不安定さに、 気が …

心のブレーキをぶっ壊せ。

初めてシーケンサーを手に入れて、 ひとりで音楽をつくりはじめたのは、 22〜23 …

「適正」って、「恋すること」なんだ。

「私は、ロックが好きなんですけど、 歌の先生に、キミにはそういう音楽は向いてない …