大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ビートを立てる」って難しい。〜Singer’s Tips #11〜

   

「もっとビート立てて、リズムよく歌って。」
などというディレクションを受けることは、
プロアマ問わず、よくあること。

ビートというのは音楽の「点」。
その「点」をいかにシャープに、
パキッと演奏できるか、歌えるかは、
楽器の種類に関わらず、
ロック、R&B、Popsなどの音楽において、
演奏全体のクオリティを大きく左右する重要なポイントです。

ところがこの、
「ビートを立てる」が実に難しい。

1音1音にアクセントをつけて弾こうとする人が多いのですが、
いたずらに音量を上げると、
かえって、肝心の「点」がハッキリしなくなったりします。

楽器でもおなじですが、
ビートを立てるということと、
1音1音を強く演奏するということは、
まったく別のことなのです。

ビートを立てるには、
1音1音がクリアである必要があります。
ギターならピッキング。
ピアノならタッチ。
歌の場合は、ことばの発音です。

日本語というのは、
子音と母音がワンセットになった言語ですから、
子音を立てようとアクセントをつけると、
むしろ母音が大きくなって、
かえって、ことばもビートもぼんやりしがち。

大事なことは、子音に時間をかけて、
音の周波数を強調すること。

時間をかけるといっても、
リズムがもたったり、
突っ込んだりするほどの長さではありません。

例えば、0.02秒長めに発音するだけで、
子音は急激にくっきり聞こえると言われています。

0.02秒なんて、実際に意識して伸ばせる長さではありません。
「ちょっと長めに発音する」という意識を持つだけです。

母音の場合は、
声帯様が開くタイミングをちょっと遅らせて、
ぽんっとはじくように歌うイメージです。

母音のスタッカートや、
子音だけのスタッカートの練習をすると、
ぐっとクリアになっていきますよ。

こういうちょっとした知識が
歌のセンスを磨いてくれるものなんです。

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Singer's Tips, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, 歌を極める

  関連記事

批評家目線を捨てる

「Aさんって、うまいんですか?」 生徒の口からは、いわゆる本格派といわれる歌手で …

「声が低けりゃ威厳を感じるのか問題」を考える。

ヴォーカリストの悩みで一番多いのは、 「高い声が出ない」。 一方で、ビジネスパー …

肉体は変化する

ずいぶん前のことになります。 クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、 友 …

何がやりたいかわかんない人に教えるのが一番ムツカシイ。

たいがいの無理難題は受けて立つタイプですが、 レッスンを担当することになって、な …

「君たちには問題意識というものが足りない!」

「君たちには問題意識というものが足りない!」 大学4年の時、ゼミの担当教授が、 …

「なんか、できちゃうかもしれない」妄想

ロックダウンを機にスタートした英語のレッスンも8週目。 今日も、”S …

感情に翻弄されない クールに傾きすぎない

ずいぶん昔、サラ・ヴォーン(だったと思う)の来日公演を かぶりつきの席で見て、 …

「いつものあれ」でお願いしますっ!

ずいぶん前のこと。 たまたまつけたテレビに、 ホイットニー・ヒューストンが出てい …

あぁ、あこがれの「ビッチ感」

人にこう見られたい、というイメージと、 実際の自分自身が人に与えるイメージに開き …

「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。

昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …