大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ヴォーカルが絶対上達するスーパートレーニング

      2016/03/15

何年歌ってもなかなか歌が上達しない理由は、

1.ピッチやリズムなど、ちゃんと歌えているかどうか判断できない

2. 「これでよし」という到達ポイントが低い

3. どう歌ったらいいのか、明確なビジョンがない

この3つに集約されます。

 

今日は、「本気だぜ!」というあなたに、
非常にマニアックではありますが、
『ヴォーカルが絶対上達するスーパートレーニング』をお届けします。

 

用意すべきはMTR、またはDAW。

「ひぇ〜、それ、なんですか、MISUMIさぁ〜ん!」

はい。

それ説明し出すと、今日の趣旨と思いっきりそれちゃうので、
ごめんなさい。ググってください。

 

平たく言えば、同じカラオケに何度も歌を録音できる、
しかも、そのすべてが記録されるもの。

って感じでしょうか。

 

そして、

「この歌を歌い込んでやる!」という曲のカラオケ、
そして、もちろんマイクなどなど、録音に必要な機器を用意してください。

 

やることは至ってシンプルです。

 

Step 1.カラオケに歌を録音する

もちろん、満足いくまで、何度も録りましょう。

「たまたまうまく歌えなかっただけ」という言い訳をなくすためです。

 

「よっしゃ、今のテイクが最高だ!」と胸を張って言えるまで歌い込む。

まず、この段階をクリアできる人がいないんですけどね。

 

Step 2.自分のベスト・テイクを検証する

カラオケをミュートして、歌だけオンリーでプレイバックします。
素っ裸です。

その時点で「あちゃ〜」と思ったら(たいがいの人がそうなるわけですが)
Step 1.へ戻ってください。

「イケてる!」と思ったら、検証作業に進みます。

キーボードで、自分の歌のピッチを確認してください。

全面的に低い人。高い人。
特定の音だけがうまく取れていない人。
そこだけを重点的に練習しましょう。

わからないという人は、誰かに協力をあおいでください。
厳しめな人がいいでしょう。

さらに、リズムを検証します。

クリックを鳴らしたり、PCソフトを頼ったり、
やはり、誰かに検証してもらうのも大事です。

突っ込んでないか。モタってないか。
ジャストならいいってもんじゃないですが、
意味のある、突っ込みやモタりであって欲しいと思います。

特にフレーズ頭のモタりや突っ込みは全体のビートに影響しますし、
音の長さが適当なのもいただけません。

正確ならばいいってもんでもなくて、
やっぱりグルーブなわけですが・・・その辺はまた詳しく書きます。

 

イケてないリズムを徹底的に練習したら、また Step 1.へ。

 

ここまでが結構エンドレスに繰り返されるわけです。

 

Step 3.OKが出せるレベルのテイクをいくつか録る

さぁ、基礎的なところがクリアできたら、
いよいよ、本格的に「歌」のグレードを上げる段階に進みます。

「え?これでOKなんじゃないですか?」と思ったら、ゲームオーバー。
ピッチが取れる。リズムが正確に刻める。
なんて、楽器なら当たり前のことなんです。

そもそも、この「当たり前」がクリアできるまでがんばれないのが、
平均的な上達できないヴォーカリスト。

歌の善し悪しは、「当たり前」の先にあるのです。

 

そんな「当たり前」を完全にクリアした上で、

今度は、
いろんな気持ちを込めて、
いろんな距離に向かって、
いろんな表情で、

いくつか歌っていきます。

 

Step 4.すべてのトラックから、ベストテイクを組み立てる

歌詞カードを何枚か用意して、
数トラックのテイクを全部チェックしながら、

「このテイクのこの部分、いいんじゃな〜い?」という
うぬぼれテイクをメモし、チョイスして行きます。

Aメロの歌い出しは、このテイクがクリア。
3行目はこのテイクがぐっとくる。
サビの頭はこのテイクの声が好き。。。。

声は生き物ですから、テイクによって、その表情を大きく変えます。

音色も、歌いまわしも、
表現をいろいろと実験的にトライしたり、
感情の幅を変えたりするだけで、びっくりするほど変化するもの。

そうした、さまざまな自分の声や歌の表情、表現を、
客観的に、徹底的に、分析し、ジャッジするのです。

最初は、誰かよくわかる人に協力してもらうのがいいと思います。

ただし、上達するためにやるのですから、徹底的に、です。

この段階で、この部分だけ、どのトラックもいいテイクがない、
どのトラックも表現しきれていない、
イマイチだ、と思うなら、すべて録り直しましょう。

重箱の隅をつついて穴を開けるようなチェックかもしれません。

でも、この苦しさに勝てる人しか上達しません。

 

Step 5.ベストテイクを完全にカラダにたたき込む

さぁ、ここからです。

 

Step 4でつくりあげた、自分のベストテイクは、

こんな声、こんな歌い回し、こんなグルーブで歌いたい、
という、自分の気持ちを、今の自分の実力で目一杯表現したもの。

このテイクを、つぎはぎなしに、まるっぽ、自分のカラダに入れます。

つまり、スルッと歌っても、
このベストテイクを再現できるように練習するのです。
自分のコピーなのですから。
できないことはなにひとつ、やっていませんから。

単に、精度を上げるだけです。

 

「やったぁ〜〜っ!\(^O^)/
できました!MISUMIさん、自分のテイクを再現できました〜!」

 

はい。おめでとうございます。

ここまで来れたら、もう大丈夫。

勇気を出してStep 3.に戻ります。

 

「へ?」

 

この段階で、やっと、
これまでの「なんとなくメロディと歌詞をなぞっている」から、
「歌」の領域に到達できたわけです。

スタートラインです。

Step 3.からStep 5.をエンドレスに続けるうちに、
歌は自分のものになり、
自分の表現とはどんなものかということに出会え、

ライブでも、レコーディングでも、
無敵な正確さと、自由な表現力を手に入れられるようになるのです!

 

騙されたと思って、本気で取り組んでください。

 

 

8割の人が、読んだだけで「ひぇ〜」って引いちゃうくらい、
オタッキーなトレーニングとは思いますが、成功率100%。

絶対。絶対。うまくなることを私が保証します。

グッドラック(^^)

 

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 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

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