大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

練習の成果は「ある日突然」やってくる

   

はじめて「上のF」が地声で出た瞬間を、
今でも鮮明に覚えています。

学生時代は、せいぜいAかBくらいまでしか出なかった地声。

アレサ・フランクリンの曲の途中に、
地声で「上のF」でシャウト、というのがあって、
それが、もう本当にカッコよくって、
どうしてもそれを出したくて。

でも、練習しても、練習しても、
せいぜい「上のD」がギリギリ、
金切り声のように出るか出ないか。

 

毎日のようにアレサの声に合わせて歌い、

ピアノに向かって発声練習を試み、

リハーサルで、力一杯チャレンジし・・・

 

それでも、裏声になってしまったり、
全く届かないで割れてしまったりと、
かすりもしなかった「上のF」。

 

それがなんと、ライブ本番中、
その曲のパフォーマンス中に、
いきなり、しかも、気持ちよく、
ポ〜〜〜ンと出たのです。

一瞬、自分でもなにが起こったのかわかりませんでした。

「え?」と驚くくらい、
その声はパキ〜ンと抜ける、
小気味いいような高音&シャウトでした。

 

それまで、一度でも出ていた声なら、
「火事場のバカヂカラ説」も通用するでしょうが、
何しろ、かすりもしなかった声。

それがなんと、完璧なクオリティで出た・・・・。

 

何度振り返っても、どうやって出したのか、
どんな力加減で出せたのか、まったく思い出せません。
言えることは、ただ・・・

いつか、なんとしても出したいと思っていた。
ものすごく聞き込んだ。
めっちゃマネ(しようと)した。
何度も何度も練習した。
あの手この手で失敗を繰り返した。

そして、本番、ままよと、
すべてを忘れて、歌に集中した。。。。

 

練習の成果はちょっとずつ上がるとは限りません。

脳は、カラダは、
どんなに練習しても、
ず〜〜っとレベル0のまま、
こちらのやる気と本気を試してきます。

さまざまな神経系と筋肉系のコネクションは、
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、
目的のカラダの動きを引き出そうとあの手この手でがんばります。

 

どんな機械でも、線がたった1本繋がっていないだけで、
目的のスイッチは入りません。

あと数ミリ、線を伸ばすだけ、
あと数ミリ、左に寄せるだけ・・・

あと数ミリですべての回路がONになるかもしれない。

そして、それは、次の瞬間かもしれない。

試行錯誤の積み重ねがなければ、
その「瞬間」は訪れません。

 

試行錯誤の途中であきらめてしまっても、
けして、その「瞬間」に出会えません。

最後の線が繋がる瞬間。

なんの成果も出ていないように見えても、
確実にその瞬間は近づいています。

そう信じて、
ただ、ただ、積み重ねるしかないのです。

 

22853969 - he� got creative soul. handsome young men playing piano and singing

コアでマニアックなネタをお届けする、ヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』
購読はこちらから。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

「できないことをできるように」から「できることをもっと素晴らしく」

先日、ディスカヴァーさんが、メルマガで拙著の紹介をしてくれていました。 「自分も …

ボイストレーナーなんかいらない自分になる。

『ダイジェスト版MTL voice&vocal オープンレッスン12』が …

練習するのは、全てを忘れるため

「テクニックなんかどうでもいいんですよ、歌は。」 ピッチだ、リズムだ、表現力だと …

鍵盤楽器を買おう!

ボーカリストで、楽器をほとんど弾けないという人は多いと思います。 楽器が弾けない …

リズムが悪いと言われたら真っ先にすること。~Singer’s Tips#10~

「リズムが悪い」と言われた時、 真っ先に点検すべきは、 点=ビートを捕らえられて …

高い声は、がんばらずに出す。~SInger’s Tips #17~

「高い声は、がんばらないと出ない」と、 思っている人がいます。 なぜそうなっちゃ …

ゆっくりやってもできないことは、速くやってもダメ

そんなの当たり前でしょ?と言われそうなタイトルですが、 実は、この当たり前を知ら …

音なき音楽をキャッチする

歌や音楽を学びたい、極めたいと思うとき、 ついつい、音楽のことばかりを考え、 ま …

同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す

人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …