ちゃんと鳴らす!
ヴォーカルのテクニックのひとつに、
「息混じりに歌う」というのがあります。
基本的な効果は「息混じりに話す」のと同じ。
セクシーさを演出したり、
気だるい感じを出したり、
癒やしの雰囲気を出したり・・・
作品として世に出ているものの中には、
実際には、それほど息混じりに歌っていなくても、
息の音を強調するような処理をすることで、
そうした効果を強調しているものも多々あります。
さて。
昨今人気の、こうした「息混じり」歌手たちへのあこがれか、
機械処理で息の音を思いきり強調した声と、
同じような効果を無意識に狙ってしまうのか、
「息漏れ声」で歌う若者が増えています。
一聴すると、癒やし系。セクシー系。
しかし、この「息漏れ声」、
「息混じりの声」とは、似ているようで全く違います。
通常、呼吸をするときには開いている声門は、
声を出そうとすると閉じ、
息のエネルギーを声のエネルギーに変えます。
1音1音がいい音色で、しっかりと響き、
どの音も均等に「鳴る」ことが楽器の理想と考えるなら、
息のエネルギーが声のエネルギーに変換される率が高いほど、
カラダという楽器は理想的に鳴るわけです。
この「鳴っている状態」を基準に、
ダイナミクスや音色に変化をつけることで、
声という楽器の音楽的表現の可能性が引き出されます。
声門を閉じる強さを自在に調節できれば、
息100%か、声100%か、というような、
「白か黒か」的、杓子定規な表現だけでなく、
白から黒までの限りないグレーのグラデーションを、
息と声の量のバランスを変えることで表現できるのです。
一方で、「息漏れ声」は、「鳴っていない状態」。
楽器としての声のポテンシャルを引き出せていません。
だから、息漏れ声は、
音量があがらない。
抜けない。
通らない。
すぐ枯れる。
不安定である。
・・・などなど、残念なことばかり。
声と一緒に聞こえてくる、「しゃ〜」という息の漏れる音。
人に寄っては、この、「しゃ〜」と、声が同じくらいの音量で聞こえる人もいます。
それでは、鍵盤を叩く「かたかた」という音や、
ギターの弦をこする「きゅきゅきゅ」という音が、
実際の楽音と同じくらいの音量で聞こえてくるのと同じです。
自分という楽器のポテンシャルを引き出せていない。
とても、もったいないのです。
さて、あなたは、
「息混じり」で歌えていますか?
「息漏れ」になっていませんか?
購読はこちらから。
関連記事
-
-
高い声は、がんばらずに出す。~SInger’s Tips #17~
「高い声は、がんばらないと出ない」と、 思っている人がいます。 なぜそうなっちゃ …
-
-
イケてないプレイヤーは弾きすぎる。
イケてないプレイヤーは弾きすぎる。 よく言われることばです。 例えば、 ソロを弾 …
-
-
ストライク率を限りなく100%に近づける
こどもの頃からずっと謎に思っていることのひとつに、 「ボーリングって、なぜゲーム …
-
-
「練習が嫌いなんじゃない。「練習をはじめること」が嫌いなんだ。
以前、プロで活躍していたという元スポーツ選手と話していて、 「今でも、毎朝、ジョ …
-
-
歌える歌ばっかり歌っていたら、いつまで経ってもうまくならない。
「今の自分の実力だったら、どんなの歌うべきですかね?」 これは、「自分に向いてい …
-
-
英語の歌詞って、どうやって覚えるの?
「歌詞を覚える」というのは、ある種の習慣です。 何を当たり前と思うか、という気構 …
-
-
基礎の難しさに気付く~Singer’s Tips #4~
歌を上達したいという人に、 ウォーミングアップやストレッチ、 ヴォイトレなど、基 …
-
-
基本中の基本!「コーラス3原則」
コーラスということばに抱いている印象は、 その人の音楽経験によって違うでしょう。 …
-
-
分解して聞く。分解して練習する。~Singer’s Tips#27~
「片手ずつ練習しなさい。 右手と左手、一緒に弾いていたら、 間違っていることに気 …
-
-
練習場所が欲しい!
最近の高校生は、学校でバンド練習とかするのでしょうか。 高校時代、授業が終わると …